報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の退院」

2021-09-13 14:54:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月27日09:30.天候:晴 東京都千代田区神田和泉町 三井記念病院→京成バス“ぐるーりめぐりん”車内]

 翌日になり、私達は再び斉藤絵恋さんの病院に向かうことになった。
 平日なので斉藤社長は仕事だ。
 一応、今後の治療についてや退院の手続きについては保護者として会社を抜け出して来るが、その後は会社に戻らなくてはならない。
 しかし当然ながら、会社に娘を連れて行くことはできない。
 そこで退院してから、埼玉の家まで護衛して欲しいという依頼が来たのだ。
 車については、まだお抱え運転手がコロナ療養中で使えないとのこと。

 愛原:「社長、お疲れさまです」
 斉藤秀樹:「愛原さん、突然の依頼申し訳ありません」
 愛原:「いえ、社長の為なら何でもお役に立ちますよ」
 秀樹:「頼もしい御言葉です。報酬は後でお支払いしますので、よろしくお願いします」
 愛原:「菊川のマンションではなく、大宮の御実家なんですね」
 秀樹:「さすがにトラウマとなりますので、あのマンションは引き払うことにします。幸い旧友は他にもマンションを持っているので、その中から適当な物件を見繕うことになります。その間は家に置いておこうかと思います」
 愛原:「それが賢明ですね」
 秀樹:「それでは私は退院の手続きに行って参りますので……」
 愛原:「あ、はい。私達はここで待っています」

 私達はロビーで待っており、斉藤社長が1人で病室に向かった。
 面会は原則禁止だが、入退院の手続きの際や、主治医や病院側が特に必要と判断した時に限っては認めることがある。
 今回は前者だろう。
 それからしばらくして、キャリーバッグを持った斉藤絵恋さんがやってきた。

 絵恋:「リサさぁん!会いたかったぁーっ!!」

 ダイレクト飛び込みハグ!

 リサ:「サイトー、分かった分かったから」

 さすがのリサも、このダイレクトハグについては閉口する。

 高橋:「ったく、びーびー泣きやがって」
 愛原:「そりゃ、窓を開けたら惨殺死体が上から落ちて来るシーン、ガチで見ちゃったらねぇ……。俺達でさえ、それなりのホラーだろ?ましてや、バイオハザード慣れしていない絵恋さんにとってはドギツイと思うよ?」
 高橋:「まあ、それはそうっスけど……」
 秀樹:「リサさんに会いたくて、どうしようもなかったらしいです。それでは、あとはよろしくお願いします」
 愛原:「あ、はい。お任せください」

 私達は斉藤社長と別れた。

 愛原:「それじゃ、行こうか」

 病院の外に出ると、斉藤社長の車が出て行くところだった。
 セダンタイプに私達4人は乗れないよな。
 因みに、絵恋さんはしっかりとリサの手を握っていた。

 高橋:「先生、どうやって行きますか?」
 愛原:「まずはバスで上野駅まで行こう」
 高橋:「バスがあるんですか」
 愛原:「コミュニティバスだけどね、あるよ」

 病院の敷地外に出ると、すぐにバス停はあった。
 バスを待っている間、絵恋さんはしきりに、『死体が追って来る夢を見た』『リサが現れてそれを倒してくれた』という話をしていた。
 もちろんリサの力を持ってすれば、ゾンビの1匹や2匹、軽く屠れるだろう。
 何しろ、ゾンビの1匹や2匹、軽く殴り飛ばせるほどのタイラントを従わせるほどなのだ。
 しばらくして、『上野方面』と書かれたバスがやってきた。

 

 オリジナルの塗装がされてはいるが、車種的にはどこでも見られる中型バスである。
 コミュニティバスというと小型バスで運行されるイメージがあるが、この路線は利用客が多いのだろう。
 実際、お年寄りなどの通院に使われることが多く、降り口の中扉からはそれらしい乗客達がぞろぞろ降りて行った。
 こういう時、ノンステップバスだと楽で良い。
 東京都区部ということもあり、バスは前乗り運賃先払い。
 ICカードが使えるので便利である。

〔発車致します。お掴まりください〕

 私達は座席には座らず、折り畳み椅子の横の手すりや吊り革に掴まった。

 絵恋:「リサさん、危ないからリサさんに掴まってていい?」
 リサ:「ん」

 リサは手すりを指さした。

 絵恋:「はぁーい……」(´・ω・`)

〔次は東京法務局台東出張所前、東京法務局台東出張所前でございます。東京都警備業協会へおいでの方は、新御徒町駅前が御便利です。次は、東京法務局台東出張所前でございます〕

 高橋:「先生、ずっとバスと電車で移動されるおつもりですか?」
 愛原:「俺の計画では、大宮駅からタクシーなんだよ。ほら、言っちゃあ何だけど、絵恋さんの家の辺りって、路線バスが不便だからね」
 高橋:「あー、本数少ないですもんね」
 愛原:「ぶっちゃけ、斉藤社長からもらったタクシーチケットが1枚しか無いから、そういう所で使わないと」
 絵恋:「えっ、そうなんですか?だったら、父に言えばまたもらえますよ?」
 愛原:「いやあ、でも何だか厚かましそうで……」
 絵恋:「だったら、私に言ってくだされば、私から父に言いましたわ」
 リサ:「サイトー、今度はそうして」
 絵恋:「分かったわ。リサさんの頼みですもの。リムジンだって用意するわ」
 高橋:「おー、分かってるじゃねぇか。そうだぞ。先生はそれくらい偉大な御方だ」
 愛原:「いやいやいや、そんなのいいよ!」
 高橋:「何しろ、VIP相手にリムジンを呼ぶと見せかけて、リムジンバス呼んだアホ主人公が他にいたらしいからな」

 “ユタと愉快な仲間たち”シリーズより、“大魔道師の弟子”における一幕。

 愛原:「フツーにタクシーでいいよ。俺なんか下級国民の1人なんだから」

 身分相応という言葉がある。
 池袋の暴走老人事故だって、上級国民なら上級国民らしく、タクシーやハイヤーに乗っていれば良かったのだ。

 リサ:「先生、そのタクシーチケットって上限額とか決まってるの?」
 愛原:「いや、そんなことは書いてないな」
 リサ:「だったらそのタクシーチケットでタクシーに乗って、そのままサイトーの家に行くというのは?」
 高橋:「その手があったか!」
 愛原:「バカ。いくら掛かると思ってんだ。他人の金だと思って……」
 リサ:「父は気にしないと思いますけど、私もその案には反対です」
 高橋:「なにっ!?」
 リサ:「だってぇ、車で一気に帰るより、リサさんとだったら、電車やバスでゆっくり帰る方がいいに決まってるじゃない

 絵恋さんはそう言って、リサと腕を組んだ。

 高橋:「先生、こいつもう少し入院してた方が良かったんじゃないスか?」
 絵恋:「何でよ!?
 愛原:「まあまあ……」
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“私立探偵 愛原学” 「善場の話」

2021-09-13 11:12:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日16:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 リサ:「……ごめんなさい。私は早く友達を作りたかったの……」

 事務所の応接室で善場主任に説教を食らうリサ。

 善場:「そう言って特異菌パラダイスにした新型BOWエブリンの例とかあるんだからね。エブリンには何の悪気も無かったと言われてるけど、あの大惨事よ。あなたもそうならないように。エブリンの末路……あなたも聞いてるでしょ?」
 リサ:「はい……」

 無邪気な子供は、時として大人より残酷だ。
 残酷な大人でさえ、利権や利害、建前や打算が挟めば子供よりも純情になるというのに。
 エブリンは少女型BOWであったが為に、大人より残酷な無邪気な子供の性格が全面的に出てしまったのだろう。
 まだ10歳程度の少女の姿をしていたエブリンは、残酷な無邪気を沢山持っていたそうだが、それよりは大人に近い15歳のリサはどうなのだろう?

 善場:「最悪は殺処分よ?そしたらあなた、もう2度とここでは暮らせなくなるのよ?」
 リサ:「それは嫌……」
 善場:「それなら2度とウィルスをばら撒くことはしないように。分かった?」
 リサ:「はい……」

 ようやく説教から解放されたリサは、応接室から出て来た。

 愛原:「よお。済んだか?」
 リサ:「うん……」
 愛原:「よし。あとはもう心配しなくていい。今日は運が悪かったと思って諦めろ。明日に期待すればいい」
 リサ:「明日の楽しみなんて……」
 愛原:「斉藤社長から聞いてるだろ?明日には絵恋さんが退院する。その迎えでもやればいい。親友と会えば、少しは気が晴れるだろう」
 リサ:「うん、そうだね……」

 その時、応接室のドアが開けられた。

 善場:「愛原所長、ちょっとよろしいですか?」
 愛原:「あ、はい」

 私は呼び出しに応じ、応接室の中に入った。

 愛原:「リサのことは……」
 善場:「あとは検査機関に持ち帰り、リサのウィルスの状態について詳しく調べるだけです」
 愛原:「学校のことはどうします?」
 善場:「幸いながら、リサがウィルスを植え付けたのは女子生徒だけのようです。子宮頸がんワクチンの接種と称して、TウィルスやGウィルスのワクチン接種を行うことを考えています」
 愛原:「いいんですか、それ?」

 因みに子宮頸がんというと、まるで癌の一種のように思えてしまうが、実際は性病の1つである。
 しかも、男性側から感染させられるものなので、海外では男性も件のワクチンを打つことが一般的だという。

 善場:「『ゾンビや化け物に変貌を遂げるウィルスに感染したので、そのワクチン接種です』と素直に言えば、パニックになること請け合いですので」
 愛原:「全員が元霧生市民なら大丈夫だと思いますけどね。そういうわけにもいかないか……」
 善場:「そういうことです。私共が把握している中、東京中央学園に通う元霧生市民は数人のみです」
 愛原:「そのうちの2人は栗原姉妹ですね」
 善場:「そういうことです。まあ、幸い夏休みですので、学校側から対象生徒に呼びかけてもらいましょう」
 愛原:「でも、本当に大丈夫なんですか?子宮頸がんワクチンと称して、別のワクチンを打つなんて……」
 善場:「TウィルスやGウィルスのワクチンは、同時に子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウィルスに対しても効果を発揮するのです。ですので、問題はありません」

 因みにそれをリサに打てば、リサは人間に戻れるのではないかと思ったそこのあなた、残念でした。
 肉体レベルで『歩くゾンビウィルス』にそんなのを打っても効かないし、よしんば効いたとしても、死ぬだけである。
 特異菌に対する特効薬を投与されたエブリンは死にはしなかったものの、ラスボスに相応しい化け物へと変化を遂げたそうだ。
 リサもそうならないとは限らない。
 エブリンは制御不能となっていたから、あんなこと(“バイオハザード7”またの名を“バイオハザード・レジデントイービル”)になったが、今のリサは制御できている。
 え?勝手に学校にウィルスばら撒いただろうがって?
 それはそうだが、リサの意思で不活性状態になっているし、何より先輩BOWの説教で済むなんて制御できている方だと思うが?
 嘘だと思うなら、説教で済まなかった“バイオハザード7”をプレイすると良い。
 但し、説教で済まなかった描写はゲームの後半くらいになるが。
 つまり、制御できているのなら、ヘタなことはせずに、確実かつ安全に人間に戻す方法を考えた方が良いというわけだ。

 善場:「そこは我々にお任せください」
 愛原:「よろしくお願いします。因みに、ウィルスの結果はいつ頃出ますか?」
 善場:「まあ、3日もあれば何とか……といったところでしょうか」
 愛原:「案外、時間が掛かるものなんですね」
 善場:「何しろ取り扱うウィルスが、とても特殊なものですから。今流行りの新型コロナウィルスや、致死量の高い狂犬病ウィルスや、エボラ出血熱のウィルスよりも更に危険なウィルスですので、取り扱いには十分に注意しないといけないのです」
 愛原:「しかしリサが自分の意思で不活性化しているのでは?」
 善場:「だからといって感染しないに越したことはありません。いつ暴走して、感染者達がゾンビ化するか分かったものではありませんから」
 愛原:「……もしかして、霧生市にばら撒かれたTウィルスも、リサの意思によるものだったんですか?」
 善場:「それについては今も分かっておりません」
 愛原:「えっ?」
 善場:「アメリカのラクーン市で蔓延したTウィルスと、霧生市のTウィルスは似て非なるものだとされています。前者は全く制御できないものでしたが、後者はリサ・トレヴァーが制御できるという違いはあります。ですが、見た目には区別は付かないのです。今ここにいる『2番』のリサは、自分のウィルスをばら撒いてはいません。ウィルスをばら撒いたのは、研究所を抜け出した他のリサ・トレヴァー達です」
 愛原:「『2番』のリサは、研究所ではばら撒いたとされていますが……」
 善場:「それが本当に『2番』が撒いたものなのかは分かりません。何しろ、研究所に残っていたのは彼女だけでしたからね」
 愛原:「話は変わりますが、テロ組織についてはどうですか?」
 善場:「今のところは安全になったと見て良いでしょう。何しろ、ヤング・ホーク団が洗い浚い喋ってくれましたから」

 ヴェルトロは下請け選定を間違えたようだな。

 善場:「ただ、肝心のヴェルトロについてはまだ摘発できておりません。引き続き、警戒は怠らないようにしてください」

 これが実情である。
 あくまで、実行犯がいなくなったというだけだ。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの緊急検査」

2021-09-12 20:53:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日13:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 三井記念病院からタクシーで事務所に戻った私達。
 ビルの中に入ると、私達はそのまま中を通り過ぎて、反対側の駐車場へ抜けた。
 というのは、タクシーで戻る途中、善場主任から電話があったからだ。
 こういう時、タクシーだとすぐに電話に出れるから助かる。
 で、その電話というのは、リサのウィルス検査をしたいので、戻り次第、ビルの駐車場に向かって欲しいというものだった。
 あえて駐車場前ではなく、新大橋通り側にタクシーを着けてもらったのは、まだどこかでテロリストが見ているかもしれないという警戒感からだ。

 善場:「愛原所長、お疲れさまです」

 駐車場に行くと、そこには1台の救急車のような車が止まっていた。
 『のような』というのは、消防署から出動する救急車はワンボックスタイプが一般的なのに対し、そこにいたのは2トントラックをベースに製造された特殊な救急車だったからだ。
 見た目は救急車というよりは、献血バスのようにも見える。
 もっとも、献血バスは、それこそ大型バスからマイクロバスくらいのサイズの車種が主流で、今時はトラックベースの物は余り見かけない。
 とにかく、8ナンバー車の特殊車両であることは間違いない。
 それでも救急車っぽく見えるのは、キャブの屋根の上に赤色灯が搭載されているからだろう。
 別に緊急出動してきたわけではないのか、普通に駐車場に止まっているだけで、赤色灯は点灯させていない。

 愛原:「善場主任、お疲れ様です」
 善場:「リサのお友達がテロリズムに巻き込まれてしまったようで、お気の毒です」
 リサ:「大丈夫。サイトーは体は元気だから」
 愛原:「それより主任、いきなりリサのウィルス検査をするというのは、どういうことなんですか?」
 善場:「そのお友達が入院している病院、昨今のコロナ禍の影響で、彼女にもウィルス検査をしたのですよ」
 愛原:「あー、PCR検査ですよね」
 善場:「それだけではありませんよ。とにかくその結果、高濃度のTウィルスやGウィルスが検出されたということです」
 リサ:「……ごめんなさい。それ、私の影響」
 善場:「1つ屋根の下で暮らしている愛原所長や高橋助手が感染しているのは想定内ですし、友人関係においても感染者はいるでしょう。しかし、リサにはそのウィルスを活性化させないように伝えてあります」
 リサ:「聞いてます」

 活性化しない限り、TウィルスやGウィルスはただの居候ということになる。
 しかも、他のウィルスを食い倒してくれる役割も持つ。

 善場:「しかし、いくら活性化させていないとはいえ、想定外の高濃度のウィルスが検出されたので、病院側から私共に通報が入ったのです。もしかしたら、リサの体内でウィルスが変異している可能性があるので、こうして緊急検査を行うというわけです」
 リサ:「えーと……」
 善場:「あなたに拒否権はありませんよ。採尿と採血、それから検便に【その他もろもろ】やりますからね」

 よく見るとこの救急車っぽい車、小さく『BSAA』と書かれている。
 どうやら普段は、自衛隊の駐屯地の奥に止まっている移動診療車のようだ。
 善場主任の所属する組織がBSAAの医療部隊に手を回し、この車を用意させたのだろう。
 移動診療車ということもあって、中で検査ができるようだ。

 リサ:「お注射やだー!」
 善場:「注射ではなく、採血です。10本は取りますからね」
 リサ:「10本も!?」

 ブスッ!(注射針がリサの腕に刺さる音)

 リサ:「きゃーっ!」

 有無を言わさない検査だな。
 きっと、日本アンブレラの実験はこれよりもっと非人道的だったのだろう。

 善場:「次は採尿です!」
 リサ:「オシッコ出ないよー!」
 善場:「嫌なら尿道カテーテル突っ込んで、強制採尿します!」
 リサ:「それも嫌ーっ!」

 トイレまでは移動診療車に付いていないので、ビル1階のトイレを使わせてもらうことになる。
 このビルには各階共用トイレが付いているのだが、1階のトイレだけは多目的トイレしかない。
 逆に言えば、他の階には多目的トイレが無いのだが。

 リサ:「うぅ……先生見ないで。恥ずかしい……」
 愛原:「オマエ、前に俺に『オシッコ引っ掛ける』とか言ってなかったか?」
 リサ:「『1番』が先生にそうやってマーキングしたんだもん!だったら、私もそうして上書きしてやるって思ったの」
 愛原:「はいはい。あれはもうとっくに洗い流してるよ」

 で、採尿の次は……。

 善場:「次は検便です!」
 リサ:「ウ○○出ないよー!」
 善場:「はい、これ」
 愛原:「主任、そ、それは……」
 リサ:「何でお浣腸持ってるの!?」
 善場:「それは緊急検査だからです」
 リサ:「ワケ分かんないよーっ!」
 高橋:「てか、よく浣腸って分かったな?」
 リサ:「学校の保健室にもあるから。ひどい便秘でお腹が苦しくなって保健室に行くコとかいるから、それで常備してるんだって」
 愛原:「オマエには要らないシロモノだな」
 リサ:「そうなの。で、そういうコには私が触手を突っ込んで、老廃物を根こそぎ頂く……はっ!」
 善場:「このおバカ!そうやって学校にウィルスばら撒いたのね!!」
 リサ:「で、ででで、でも、活性化はさせてないし……」
 善場:「そういう問題じゃありません!とにかく、さっさと検便してきなさい!」
 リサ:「はーい!」

 リサは市販の浣腸を持ってトイレへ駆け込んだ。
 さすがのリサも、リサ・トレヴァーの先輩には頭が上がらないか。
 善場主任は厳密に言えば、今はリサ・トレヴァーではない。
 人間に戻れた元リサ・トレヴァーで、OGとも言える。
 どこの世界でも、OB・OGの力は強い。
 こりゃ後で、リサは説教の刑を食らうことになりそうだ。
 実はリサが食人しない代わり、老廃物を吸い取る行為については黙認されていた。
 それで食人衝動が抑え切れず、暴走されるよりは……という考えからだった。
 しかし、リサはあまりにも学校内で『獲物』を取り過ぎた。
 さすがの善場主任達も、先述の理由から見て見ぬフリをしていたが、直接報告が入ってしまった以上は動かざるを得なかったというわけだ。

 愛原:「見た限り、リサには何の変化もありませんがね?」
 善場:「見た限りは、ですね。でも実際、体内では何がしかの変化が起こっているかもしれませんし、何より……リサには調子に乗ると、こういう目に遭うという警告にもなりますので」
 愛原:「な、なるほど……」
 善場:「BSAAの車両をレンタルできた時点で、お察し頂ければと思います」
 愛原:「は、はい」

 BSAAでもうちのリサの動きについて、何か怪しいとでも思ったのだろうな、きっと。
 まあ、窓口機関でもあるデイライトがまずは出動してみて、何も無ければそれで良いということだろう。
 そして、そういう判断をするのは、現場の長である善場主任なのだ。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の暴走」

2021-09-12 15:59:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日12:15.天候:晴 東京都千代田区神田和泉町 三井記念病院]

 斉藤絵恋さんの入院先に到着した私は、まず電話で斉藤社長に連絡を取った。
 院内にいると思われるので、通話ではなく、メールにしておく。
 するとすぐに返信があり、院内のレストランで待機しているように言われた。
 そこで私達は院内にあるレストランに向かった。
 お昼時で賑わっていたが、すぐにテーブル席に着くことができた。

 愛原:「先に昼食を食べてていいらしい」
 高橋:「そうですか。じゃあ、注文しちゃいましょう。親友の見舞いより、昼飯が優先の『歩くウィルス兵器』がここにいますから」
 リサ:「煮込みハンバーグ……」
 高橋:「先生は何にしますか?」
 愛原:「俺はカレーでいいよ」
 高橋:「でも今日の夕飯、カレーっスよ?」
 愛原:「マジか。じゃあ、天ぷらそばだ」
 高橋:「じゃあ、俺も」

 料理を注文して待っていると、斉藤社長がやってきた。

 斉藤秀樹:「やあ皆さん、お揃いですな?」

 仕事を抜け出して来たのか、私のよりもずっと高級そうなスーツを着ていた。

 愛原:「社長、お疲れ様です」
 リサ:「サイトーのお父さん、これ、手紙……」
 秀樹:「おー、ありがとう。後で渡しておく。絵恋もきっと喜ぶよ」

 私の向かいに座った社長は、カツサンドとコーヒーを注文した。
 で、先に注文した私達の料理が来る。

 秀樹:「どうぞ、先に食べてください。食べながらでいいので、聞いてください」
 愛原:「お先に失礼致します」
 リサ:「サイトーのお父さん、サイトーの様子はどう?」
 秀樹:「症状自体は落ち着いています。ただ、眠る度に死体が襲ってくるという悪夢に魘されるのと、時折フラッシュバックが襲うというものがありますが」
 愛原:「まるで、霧生市のバイオハザードから生還した人達のようですね」
 秀樹:「それに似ています」
 愛原:「しばらくはカウンセリングを受けることになるわけですか」
 秀樹:「はい。入院そのものは今日までです。明日には退院して、あとは通院ということになりそうです」
 愛原:「そうでしたか」
 リサ:「今、サイトーはどうしてます?」
 秀樹:「ベッドに繋いでおいたよ」
 リサ:「ん?」
 秀樹:「どうやって知ったのか、キミが来ると分かったら、『すぐに会いたい!』と喚いてねぇ……」
 リサ:「会いに行きましょう!」
 愛原:「だからリサ、面会はコロナ禍で禁止なんだって」
 リサ:「わたしなら大丈夫!」
 愛原:「それは分かってる」
 秀樹:「だから、キミの手紙だ。これを渡せば、少しは大人しくしてくれるだろう」
 高橋:「いや、そりゃ甘いっスよ、社長」
 秀樹:「え?」
 高橋:「人間の下半身を甘く見ちゃダメっス」

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 「院内の御呼び出しを申し上げます。斉藤秀樹様、斉藤秀樹様。至急、精神科病棟までお戻りください。お言付けがございます。繰り返し、院内の御呼び出しを申し上げ……ああっ!?ちょっと!」「リサさーん!病院にいたら、すぐに来てーっ!会いたいーっ!」「キミっ、やめなさい!すぐに病室に戻って!」「ちょっと!何すんのよ!?放しなさいよ!」「こら、暴れるな!!」ドシン!バタン!……プッ〕

 秀樹:("゚д゚)
 高橋:「ね?LGBTのLとGの下半身の力、凄まじいものがあるっス!」
 愛原:「うん、オマエがBでまだ良かったよ」
 高橋:「いやァ、そんなぁ……」(´∀`*)ポッ
 愛原:「いや、褒めてねーし!」
 秀樹:「ちょ、ちょっとすいません!席を外します!」
 愛原:「お、お疲れさまです……」
 リサ:「サイトー、どうして放送室の場所分かったんだろう?」
 秀樹:「だから言ったろ?ビアンは全身性感帯だから、その力は凄まじいものがあるってな」
 愛原:「読者の皆さん、これはノーマルの私や作者じゃなくて、同じLGBTの人が言ってたことですからね?別に勝手に差別発言してるわけじゃないですからねー?」
 リサ:「先生、誰に向かって言ってる?……ていうか、何かサイトーか怖い」
 高橋:「オメェ、あいつにウィルス送り込んで、操れるようにしたって言ってたじゃねーか?制御不能になってんじゃねーか?」
 リサ:「ウィルスからは何の反応も無いけど……」
 愛原:「何さらっと後でBSAAが掃討しに来るかもしれない発言してんだよ?とにかく、さっさと昼食食べたらズラかるぞ。絵恋さんという中身BOWが襲撃してくるかもしれん」
 高橋:「了解っス」
 リサ:「りょ、りょ!何か私も、今のサイトーには勝てる気がしない……」

 ゲームのシリーズによっては、ラスボスを張ってたオリジナルのリサ・トレヴァー。
 その改良型亜種が怯える瞬間であった。

 高橋:「精神病棟ですから、完全に拘束ですかね?」
 愛原:「……かもな。だけど、今の絵恋さんだったら……」
 リサ:「オリジナルの大先輩みたいに、きっとわたしを探して追ってくるよ……」
 高橋:「俺は一瞬、ターミネーターをイメージした……」
 愛原:「ま、まあ、その……何だ。早く事務所に戻りたいし、帰りはタクシーに乗ろうか」
 高橋:「それはいいアイディアっスね」

 それから私達は昼食をかき込むようにして食べた。
 食後のコーヒーを注文しなかったのは幸いだ。
 会計を済ませて出ようとすると、何故か伝票が無い。
 確認すると、いつの間にか斉藤社長が支払を済ませてくれたのだという。
 御礼は後でするとして、私達は病院の外に出ようとした。

 秘書:「あっ、愛原様でいらっしゃいますか?」
 愛原:「あっ、あなたは確か……斉藤社長の秘書さん?」
 秘書:「さようでございます」

 私と同じくらいの歳の男性秘書がやってきた。

 秘書:「社長をお見かけしなかったでしょうか?そろそろ会社に戻る時間なのですが、連絡が取れませんで……」
 愛原:「あー……それなんですけど、ちょっと……御嬢様にトラブルが発生して、その対応に当たられております」
 秘書:「御嬢様に何かあったのですか?」
 愛原:「まだ精神的ショックが大きいのでしょうな。ちょっと……錯乱されてしまったみたいで……」

 ある意味ではリサのせいでもあるが、ここでそんなことを言う必要はあるまい。

 秘書:「そうだったのですか」
 愛原:「申し訳ありませんが、これはあくまで医療上の問題ですので、私共、民間の探偵業者が入れるところではございません。ここにいてもお役に立てそうにないので、お先に失礼させて頂きます」
 秘書:「お疲れ様でございます」
 愛原:「あっ、あの……よろしければ、社長に言付け願いたいのですが……」
 秘書:「あ、はい。何でございましょう?」
 愛原:「先ほど、この病院のレストランで昼食を御馳走になったのです。その御礼を申し上げたかったのですが、その前にトラブルが発生してしまいましたので……」
 秘書:「かしこまりました。社長に伝えておきます」
 愛原:「お手数お掛け致します。どうか、よろしくお願い致します」

 私は秘書さんに挨拶して、それから病院をあとにした。
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“私立探偵 愛原学” 「斉藤絵恋の入院先へ向かう」

2021-09-09 19:44:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月26日11:51.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線1179K電車最後尾車内]

〔まもなく1番線に、各駅停車、京王多摩センター行きが10両編成で到着します。黄色い点字ブロックの内側で、お待ちください。この電車は、馬喰横山で急行、笹塚行きにお乗り換えができます〕

 朝食の後に事務所に向かった私達。
 善場主任に連絡すると、特に事務所に行くなとは言われなかった。
 但し、リサを1人にしないようにとは言われた。
 斉藤絵恋さんの病院に行くことについても、特に制限を受けることはなかった。
 むしろ、都合良くリサの関係先が狙われたとして、行った方が良いとも言われた。
 要人テロの場合、要人本人ではなく、関係者から攻撃することが多々あるからだ。

〔1番線の電車は、各駅停車、京王多摩センター行きです。きくかわ~、菊川~〕

 京王線に乗り入れる電車だからか、京王線の車両がやってきた。
 平日の昼間、急行電車に抜かれる各駅停車ということもあって、車内は空いていた。
 JR701系よりは濃いローズピンクの座席に腰かける。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 短い発車メロディの後で、電車のドアが閉まる。
 ホームドアが閉まったところで、乗務員室から発車合図のブザーの音が聞こえて来る。
 都営新宿線ではワンマン運転は行われていない為、車掌が乗務しているからだ。
 それからエアーの抜ける音がして、電車が走り出した。

〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Morishita.S-11.Please change here for the Toei Oedo line.〕

 愛原:「手紙は書いたのか?」
 リサ:「書いた」
 愛原:「そうか。絵恋さん、きっと喜ぶよ」
 リサ:「むふー」
 高橋:「萌え死にするかもな」
 リサ:「それはダメ。わたしのデザート……」
 愛原:「今サラッと人喰い前提で言わなかったか?」

 おかしいな?
 今のリサは第0形態のはずなのだが。
 一応、顔を隠す為にパーカーのフードを被らせている。

 愛原:「善場主任の話によると、絵恋さんのマンションで射殺体で見つかった男はテロ組織のメンバーで、善場主任の部下の1人を撃ったヤツの可能性が高い。マンションの防犯カメラによると、裏の非常階段から侵入し、そこから階段をひたすら昇って屋上に出たらしい」
 高橋:「そのテロリストを撃った奴は?」
 愛原:「どうも防犯カメラにも、侵入した形跡も無かったことから、男が自殺したんだと警察は見ているらしいぞ」
 高橋:「わざわざマンションの屋上で、ですか?」
 愛原:「絵恋さんのマンションというのが引っ掛かるな。ただの偶然には思えない」
 高橋:「確かに、わざとそうしたって感じですね」
 愛原:「だしたら何で?と思う。まあ、何かしらの警告なのかもしれないが」
 高橋:「警告?」
 愛原:「テロ組織は、あのマンションがリサの親友のだと知っていた。だけど、親友というだけで、それ以上は関係無い人物を襲うのはリスクが高い。そこであのテロリストに、俺達への襲撃に失敗したら、警告の意味を兼ねて、あそこで自殺しろとでも指令していたかもなぁ……」
 リサ:「それって、サイトーも危ないってこと?」
 愛原:「俺達ほどじゃないさ。ただ、あの大日本製薬の社長の御嬢様という意味で、別の理由で狙われる恐れはあるかもな」
 高橋:「そこで、社長はあのパールを専属メイドにしたってわけですね。あいつなら、手持ちのジャックナイフでテロリストなんざ、『流血の惨を見る事、必至であります』」
 愛原:「凄いメイドさんだ」
 高橋:「『日本のロベルタ』と呼ばれています」
 愛原:「眼鏡は掛けてないし、ゲリラ部隊に所属していたわけでもないだろう?」
 リサ:(何かまた難しい話してる……)

 で、パチンカスの哀しい性で……。

 愛原:「あれ、ロベルタが出て来たからって安心できないよな?当たりキターッと思ったら、思わぬ肩透かしだよ」
 高橋:「“海”だって、サムが来たから安心ってわけでもないのと同じっス。それより、スロットの方が……」
 愛原:「いや、だから、俺は目押しできないって」
 高橋:「今は目押しとか関係無いっスよ」
 愛原:「でも、できないよりできた方が有利なんだろ?」
 高橋:「それは機種によりますね。スロットのブラックラグーンの方は、特に目押しはできなくても大丈夫でしたよ」
 愛原:「そりゃスロットの方が得意なオマエにとっては大丈夫だろうけどさ……」
 高橋:「いえいえ、先生でも大丈夫ですよ」
 愛原:「『でも』って何だ?『でも』って」
 高橋:「あっ……サーセン!」

[同日11:48.天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅]

〔この先、電車が大きく揺れることがあります。お立ちのお客様は、ご注意ください。岩本町、岩本町、秋葉原。お出口は、左側です〕

 この駅で私達を乗せた電車は、後続の急行電車に抜かれる。
 そこで副線ホームに入る為、ポイントを通過するのだ。
 ガクンと電車が大きく揺れて、電車は副線ホームに入った。
 両側にホームがあるが、ドアが開くのは上り線ホーム側だけである。

〔2番線の電車は、各駅停車、京王多摩センター行きです。岩本町、岩本町、秋葉原〕

 JRの駅だと、本線ホームにはホームドアがあるのに、副線ホームにはホームドアが設置されていないことが多々ある。
 だが、この駅ではちゃんと副線ホームにもホームドアが付いていた。

〔「当駅で急行電車の通過待ちを致します。4分停車致します。発車まで、しばらくお待ちください」〕

 私達は電車を降りて、エスカレーターに乗った。
 電車が接近しているのか、風が強い。
 リサはプリーツの付いた黒いスカートを穿いている。
 多分、中にスパッツくらい穿いていると思われるが、それでも裾を気にする年頃にはなったということだ。

 高橋:「先生、ここから病院は近いんですか?」
 愛原:「グーグルマップによると、歩いて10分くらいらしい」
 高橋:「まあまあの距離っスね」
 愛原:「それでも真夏では、油断のできない距離だ。水分補給はこまめにな」
 リサ:「うん」

 リサはパーカーの袖を捲くった。
 パーカーの下には“バイオハザード”の白いTシャツを着ていた。
 ロゴマークの下には、後ろを振り向こうとするゾンビの絵。
 最後にはラスボスとして主人公の前に立ちはだかるタイラントは追跡中、邪魔なゾンビがいると、平気で殴り飛ばす。
 そしてリサは、そんなタイラントを従える力を持っているのである。
 
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