報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「たかつえスキー場に到着」

2022-02-23 20:07:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日06:30.天候:晴 福島県南会津郡南会津町高杖原 会津高原たかつえスキー場]

 バスは6時に会津高原尾瀬口駅を出発した。
 先頭は一般客を乗せた2台であるが、そのうち1台は別の道に行った。
 私達はこれから会津高原たかつえスキー場という所に向かうのだが、シャトルバスは他にだいくらスキー場行きがあり、そちらへ向かうバスだろう。
 私達を乗せた東京中央学園の貸切バス3台は、その後ろを行く。
 そして、最後に聖クラリス女学院のバス2台が出た。
 両脇に高く積もった雪壁の中をバスは進む。
 豪雪地帯とはいえ、国道ということもあり、除雪はちゃんとされているようだ。
 駅から30分ほど走って、バスはたかつえスキー場へと到着した。
 さすがにこの時間になると、外も少しは明るくなってくる。
 但し、まだ薄暗いのは曇っているからだろう。
 一応、天気予報では昼には晴れることになっているが……。

 リサ:「先生、お腹空いた」

 後ろの席からリサが顔を覗かせた。

 愛原:「分かった。確か、スキー場内のレストハウスで朝食が出るはずだ。多分、スキーはそれからだろう」

 バスは駐車場に到着した。

 愛原:「大沢さん、やはり朝食はあの建物の中で?」
 大沢:「そうです。朝食サービス付きなので」
 愛原:「朝食はバイキングですか?」
 大沢:「そうです」
 絵恋:「聞いた、リサさん?朝食はバイキングですって」
 リサ:「おー!」
 愛原:「皆の分を食べ尽くすなよ」

 バスの床下の荷物室から荷物を降ろす手伝いをしていると、遅れて聖クラリス女学院のバスも到着した。

 男子生徒A:「知ってるか?聖クラリスって、可愛いコいっぱいいるらしいぞ?」
 男子生徒B:「ホントか?」
 男子生徒C:「ちょっと声掛けてみようかな」

 こういうこともあるので、特に女子校は男子校や共学校と混在させることはないと聞いたことがあるのだが、聖クラリス女学院は違うのだろうか。
 あそこも御嬢様学校で、『悪い虫』には特に警戒するような学校だと思うのだが。
 反面、同じ女子には甘く、それが日本版リサ・トレヴァー『1番』の侵食を許してしまった感がある。

 教師:「オマエ達、何言ってる。他校の人に迷惑を掛けたりしたら、内申に響くぞ」
 男子生徒A:「冗談っスよ」
 男子生徒B:「でも先生、女子ならいいんスか?」
 教師:「へ?」
 女子生徒A:「あのー、付き合ってる人とか、いますか?」
 高橋:「一応いるぞ」
 女子生徒B:「バレンタインのチョコ、後で受け取ってもらえますか?」
 高橋:「もう過ぎてんだろ」

 イケメン高橋、女子にはモテるモテる。

 教師:「オマエ達!さっさと建物に入れ!」
 愛原:「高橋は連れて来ない方が良かったかなぁ……」
 高橋:「何でですか!?」
 リサ:「わたしが感染させて、兄ちゃんに近づけさせないようにするというのは?」
 愛原:「後で善場主任に怒られるから、やめなさい」
 リサ:「はーい」

 リサも荷物を持って、スキーセンターへと向かって行った。

 女子生徒A:「もしかして、愛原さんのお兄さん?」
 リサ:「一応」
 女子生徒B:「ねぇねぇ!良かったら、お兄さんの連絡先教えて!?」
 リサ:「それは……」
 絵恋:「ちょっと!リサさんが困ってるでしょ!散った散った!」
 小島:「リサさんを困らせちゃダメね」
 淀橋:「魚心あれば水心って言うけどね」
 淀橋:「リサさん、どうしてもって言う場合はどんな条件?」

 リサの取り巻き達も応援に回る。
 全員、リサから老廃物(と多少の血液)を吸い取られて子飼いと化したコ達だ。

 リサ:「愛原先生にパンツ見せてあげて。何なら今すぐ脱いで差し上げて」
 絵恋:「そうよ!それくらいやりなさいよ!」
 愛原:「こらぁーっ!」

 全く、油断も隙も無い。

 リサ:「JKのパンツなんて、そうそう見れるモンじゃないから、それくらいの価値はあると思う」
 愛原:「そういう問題じゃない!」

 こういう感覚がズレている所、リサは人間じゃないって思い出させてくれる。

 愛原:「高橋!収拾がつかなくなる前に、オマエのTwitterとFacebook、教えてやれ!」
 高橋:「はあ……分かりました」
 愛原:「さすがにLINEやメールは早いから、まずはそこからやり取りをしてもらう。いいね?」
 女子生徒A:「やった!」
 女子生徒B:「ありがとうございます!」
 リサ:「後で先生にパンツ……」
 愛原:「いらんっちゅーに!」

 もっとも、高橋のTwitterとFacebook、内容はフツーの報告のはずなのに、何故か犯罪臭がするんだよなぁ……。

 リサ:「それならスパッツからでいいや」
 愛原:「だから!」
 リサ:「そうだ!ブルマー貸してあげから、それ穿いて先生に見せてあげて」
 愛原:「やめなさい!」
 女子生徒A:「ぶ、ぶるまぁ!?」
 女子生徒B:「愛原さん、普段家で何してんの?」
 リサ:「サイトー達と楽しいこと!」
 絵恋:「そう!楽しい事よ!」
 小島:「うん、楽しい事」
 淀橋:「楽しい事……だね」
 女子生徒A:「な、なに?何か怪しいんですけど……」
 女子生徒B:「ブルマってことは、おうちでコスプレイベントとか?」
 リサ:「ちが……」
 愛原:「リサ、この際そういうことにしておけ!」

 私はリサの口を塞いでそう言った。
 しかし、本当にリサは主導権を握るのが上手いな。
 きっと『1番』も、そうして聖クラリス女学院を侵食したのだろう。
 それにしても……。

 愛原:(確かに不自然だな……)

 東京中央学園はこんな感じで楽しくやっているのに、聖クラリス女学院の方はそんな雰囲気が微塵も無い。
 そこの生徒をナンパしようと企んでいた男子生徒も、首を傾げた。

 男子生徒A:「何かさ、全員陰キャじゃね?」
 男子生徒B:「まるでお通夜みたいっスね」
 男子生徒C:「あれも何かのネタ?」
 男子生徒D:「いや、違ェだろ」

 聖クラリス女学院の生徒の制服は、宝塚音楽学校の制服にやや似ている。
 あれをもっと黒くした感じ。
 ミッション系の女子校なので、制服のデザインもシックなものなのだろう。
 恐らく、修道女の衣装をモチーフにしているのではないだろうか。
 無宗教の東京中央学園が、明るい緑色のブレザーを着ているのとは対照的である。
 それにしても、何だか精気が無い。
 夜通し電車の中だったので、疲れているのだろうが、それにしても……と思う。

 愛原:(後で善場主任に連絡しておくかな)

 私は取りあえず朝食を済ませた後、善場主任に報告も兼ねて問い合わせてみることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「会津高原尾瀬口駅」

2022-02-23 16:06:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日05:13.天候:雪 栃木県・福島県境付近 野岩鉄道会津鬼怒川線“スノーパル2355”1号車内]

〔♪♪♪♪。「皆様、おはようございます。電車は只今、野岩鉄道会津鬼怒川線内を順調に走行しております。あと凡そ10分ほどで、終点の会津高原尾瀬口に到着致します。お忘れ物、落とし物をなさいませんよう、お支度をしてお待ちください。……」〕

 到着10分前くらいになり、車内の照明が元の明るさに戻る。
 それまで比較的静かだった車内が、俄かに賑やかになった。

 愛原:「うーん……」

 私はアイマスクを取り、大きく手足を伸ばした。
 久しぶりに乗った夜行列車、慣れないとなかなか眠れないものだな。
 最後に乗った夜行列車は、“ムーンライトながら”か“ムーンライト信州”だったか。
 あれを思い出す。
 閉めていたカーテンを開けると、当然ながらまだ暗い。
 だが、新藤原駅もなかなか山中にある駅だったが、それ以上に山深くなり、その分、雪も大きくなっていた。
 これなら、問題無くスキーもできるだろう。

 高橋:「先生……おはざーっス」
 愛原:「おう、おはよう。よく眠れたか?」
 高橋:「まあまあッス」
 愛原:「そうか」

 私は荷物を降ろすことにした。
 その時、後ろに座っているリサ達の姿が目に入る。

 愛原:「おはよう、リサ。大丈夫か?変化してないか?」

 私はフードを被っているリサの頭を撫でた。
 幸い、角は生えていないようだ。
 たまに寝惚けて第1形態の鬼姿に戻ることがあるので、その用心の為にフードを被っている(絵恋さんなど、一部の人間以外には基本秘密なので)。

 リサ:「ううーん……大丈夫……」

 リサは眠い目を擦りながら言った。

 リサ:「サイトー、起きて。もうすぐ到着」
 絵恋:「ふぁい……」

 私はトイレに行こうしたが、通路まで長蛇の列ができていた。
 しょうがないので、駅のトイレを使うことにした。

[同日05:23.天候:雪 福島県南会津郡南会津町 野岩鉄道・会津鉄道会津高原尾瀬口駅→会津バス車内]

〔♪♪♪♪。「皆様、長らくのご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく終点の会津高原尾瀬口、会津高原尾瀬口に到着致します。お出口は、右側です。会津高原尾瀬口駅前広場より、だいくらスキー場、たかつえスキー場へのシャトルバスに接続しております。尚、団体の皆様は団体専用のバスをご利用ください。……」〕

 他にもバスは6時に出発するが、乗車はその30分前からできること、この電車内でも6時まで車内で休めることが案内された。
 引率者の1人として、私達は先に降りて、バスの方に行く必要があるだろう。
 列車は速度を落とし、1面2線のホームに進入した。
 反対側のホームには、既に普通列車が停車していたが、車内の照明は点いていないので、夜間滞泊の車両だろう。
 始発電車として運転されるまで、待機中と思われる。

 愛原:「着いた。じゃあ、降りるか」
 高橋:「はい」

 私達は荷物を持って、ホームに降りた。

 愛原:「うひょ~!」
 リサ:「雨氷?」
 愛原:「違う!寒ッ!新藤原より寒い!」

 天気は小雪が舞う程度だが、時折吹く風が体温を奪うのがすぐに分かる。
 うかうかしていたら、本当に凍死してしまう。

 愛原:「ちょっとトイレ行って来るわ」
 高橋:「俺もお供します。で、一服させてください」
 愛原:「いいだろう。リサ達は、他の皆と一緒に来いよ?」
 リサ:「分かった」

 私と高橋は一足お先に、駅舎へと向かう。
 除雪された構内踏切を渡り、待合室へと向かった。
 駅のトイレを借りた後、高橋は喫煙所に行って一服。
 駅前広場に行くと、そこにはバスが7台止まっていた。
 全てが地元のバス会社のバスだった。
 そのうち、東京中央学園は3台のバスを借りているはずだ。
 で、人数的に聖クラリス女学院は2台借りているだろう。
 そして残りの2台が一般客用。
 うち1台がだいくらスキー場行きで、もう1台がたかつえスキー場行きだろう。
 バスに近づいてみると、ちゃんと団体名と行き先が書かれているので、迷うことはない。
 再び駅に戻ると、妙観光の大沢さんがやってきた。

 大沢:「愛原さん、おはようございます」
 愛原:「おはようございます」
 大沢:「バスの確認をしてくれたんですか」
 愛原:「そうです。あそこに3台固まって止まっているのが、東京中央学園のバスですね」
 大沢:「ありがとうございます。先生方によりますと、乗り遅れ防止の為、駅の外に早めに出て、バスに乗り込むそうです」
 愛原:「なるほど。……あ、そうか。我々は完全に団体貸切だから、一般客のダイヤに合せる必要は無いわけですね」
 大沢:「確かにそうなんですが、バス会社によると、あくまでも“スノーパル”のツアーに合せて乗った方が安くなるので、6時出発のダイヤになるようです」
 愛原:「そうなんですか」

 その辺りの事情は専門外なのでよく分からないが、恐らくこういうことだろう。
 東京中央学園がその名義でバスを貸し切るより、東武のツアーに便乗し、バスの台数を増やして貸し切るという形の方が安くなるのかもしれない。
 そこは旅行会社同士、上手くやったようだ。

 大沢:「もっとも、それ以降は完全に東京中央学園さんの名義での貸し切りになりますが」
 愛原:「でしょうね」

 東武のツアー会社が面倒を見てくれるのは、スキー場までだろう。
 “スノーパル2355”は上りは運転されないので、帰りは銘々に帰ってくださいということだ。
 もっとも、完全に見放しているのではなく、ちゃんと駅までのシャトルバスの運行や、帰りの列車の割引サービスなどは行っているもよう。
 しばらくして、愛国清澄さんが高く掲げた旗を先頭に、寝惚け眼のリサ達がやってきた。

 大沢:「1組さんは1号車、2組さんは2号車、3組さんは3号車に乗ってくださーい!」

 すると中3の時、3組だったリサ達は3号車になるわけか。

 愛原:「大沢さん、PTAの我々は何号車に乗れとか決まりはありますか?」
 大沢:「特に決まってませんね。もともと50人乗りくらいの大型バスに、40人程度の生徒さんや先生が乗られるわけですから、各車両とも席は余る計算なんですよ。まあ、コロナ対策として、それくらいの余裕はあった方がいいでしょう。ましてや、こんな極寒の中、窓を開けて走行するわけにはいきませんから」
 愛原:「確かに。じゃあ、我々は3号車に乗っていいですか?」
 大沢:「いいですよ。それなら私は1号車に乗りまして、愛国は2号車に乗りましょう」
 愛原:「ありがとうございます」

 私と高橋は3号車に乗り込んだ。
 現行車種のいすゞ・ガーラ(日野・セレガとのOEMなので、バスファンからは合わせて『セレガーラ』と呼ばれることもある)に乗り込むと、さすがに車内は暖房が効いて暖かかった。

 大沢:「愛原さん方はこちらへどうぞ」
 愛原:「ありがとうございます」

 同じく眠そうにしている、リサ達の担任教師だった沼沢先生も運転席の後ろの席に座っている。
 彼は私よりも5つくらい年上の痩身で、眼鏡を掛けている。
 担当教科は英語とのこと。
 私と高橋は1A席と1B席へ座った。
 開いている前扉のすぐ後ろだから、多分ここが1番寒い。
 これなら、電車の中で待っていた方が良かったかな。
 後ろの席を見るが、さすがに後ろをサロン席にはしていなかった。
 私が警備会社にいた時に行われていた社員旅行では、サロン席で酒飲み達がドンチャン騒ぎをやっていたものだが。
 朝から興奮冷めやらぬ生徒達もいれば、列車の延長で寝ている生徒もいる。
 リサ達はというと……。

 リサ:「クー……スー……」
 絵恋:「クー……スー……」

 寝てたw
 私達のすぐ後ろの2A席と2B席で。

 愛原:「それにしても……」

 他のバスを見ると、一般客用のバスにも、それらしき乗客がボチボチ乗り始めている。
 だが、聖クラリス女学院の方は、まだ誰も駅から出て来なかった。
 彼女らは、ギリギリまで列車内で待機しているつもりなのだろうか。

 どうやらその通りで、彼女らが乗車を開始したのは、発車の10分前くらいだった。
 もちろん、それもそれでアリなのだが、何故か私は彼女らの行動に違和感を覚えた。

 リサ:「何か変だな……」
 絵恋:「気味悪いよね」

 さっきまで寝息を立てていたリサ達がいつの間にか起き、そんな彼女らを見てそう言った。
 具体的に何が気味悪いのかまでは分からないそうだが、何となく感覚的にそう思ったとのことだ。
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“私立探偵 愛原学” 「特急スノーパル2355」 2

2022-02-21 20:04:23 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日00:45.天候:晴 埼玉県春日部市 東武春日部駅→特急“スノーパル2355”1号車内]

 臨時特急が最後の停車駅、春日部駅を発車した。
 発車メロディは、“クレヨンしんちゃん”のテーマソングである。
 最後の停車駅ではあるが、今後全く終点まで停車しないわけではない。
 パンフレットによれば、この後、下今市、鬼怒川温泉、新藤原とあるから、これらの駅に運転停車する予定であるのだろう。
 そして、新藤原駅で『車内仮眠』とある。
 下調べによれば、新藤原駅で長時間の運転停車を行うらしい。
 これは、到着時間の調整もあるのだが、乗り入れ先の野岩鉄道会津鬼怒川線が除雪作業の最中なので、それが終了次第の発車だということだ。
 この辺りでは、まだ雪など全く見えないが、いずれは車窓に雪が見えるようになるのだろう。

 

〔♪♪♪♪。「春日部からご乗車のお客様、お待たせ致しました。本日も東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。終点、会津高原尾瀬口には5時23分の到着予定です。これより先、下今市、鬼怒川温泉、新藤原の順に停車致します。尚、下今市と鬼怒川温泉の駅は、時間調整の為の停車でございます。お客様の乗り降りはできませんので、ご注意ください。新藤原駅では、車内仮眠の時間の為、およそ2時間ほど停車致します。新藤原駅では、ホームに降りることができます。尚、駅の出入口は閉鎖しておりますので、駅の外に出ることはできません。【中略】それでは深夜帯に入りますので、放送によるご案内は会津高原尾瀬口駅到着前まで休止させて頂きます。また、車内の照明を減光致します。……」〕

 いわゆる、『おやすみ放送』が流れる。
 そういえばこの車両、新型であるから、自動放送が搭載されているはずだ。
 しかし、この列車では自動放送は流れない。
 恐らく、専用の音声データが無いのだろう。
 あるいは、こちらの編成は修学旅行用なので、あえて流さないのか。
 しばらくすると、車内の照明が落とされた。
 但し、夜行バスほど暗くはならない。
 暗くなると、あちこちから話し声がしていたのだが、それを合図にするかのように、静かになり始めた。

 愛原:「ちょっと、トイレ行ってくる」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「せんでいい」
 高橋:「冗談っスよ!俺も行きたいっス」
 愛原:「分かったよ」

 薄暗くなった車内を通り抜けて、隣の2号車に移動する。

 男子生徒A:「うむ!美味い!わっしょい!」
 男子生徒B:「○獄さんか!w」
 男子生徒C:「キップ……拝見します……」
 男子生徒D:「やべっ!眠らされるぞ!」
 男子生徒C:「お眠りィ!」
 教師:「オマエら、静かにしろ!」

 2号車はまだ賑やかだったw
 トイレは中間車のデッキに存在する。
 新型車両らしく、車椅子対応の多目的トイレの他、通常の洋式トイレと、男子用個室があった。
 不思議に思ったのは、特急列車には必ずあるであろう洗面所が無いことだ。
 手を洗いたければ、トイレ内のを使うしかない。
 客室は薄暗くなっていたが、さすがにデッキやトイレの明るさはそのままである。

 愛原:「さーてさて、俺も寝ないと……」
 高橋:「アイマスクと耳栓、そして空気枕っスね」
 愛原:「夜行バスの必需品だが、夜行列車にも使えるだろう」

 トイレを済ませて戻ろうとすると、リサと絵恋さんも来た。

 リサ:「わたし達もトイレ」
 愛原:「変なことするなよ?」
 リサ:「分かった」

 しかし2人の少女、一緒に多目的トイレに入ろうとする。

 愛原:「言ってるそばから18禁問題!」
 リサ:「サイトーが老廃物吸わせてくれるって」
 愛原:「あのなぁ!……さっさと済ませて戻ってこいよ」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「リサさんの為に、お腹の中にいっぱい溜めてきたの……。いっぱい吸ってね……」
 リサ:「ありがとう。但し、体の外に出すなよ?そんなもの汚らしくて吸えない」
 絵恋:「もちろんよ」
 愛原:「体の中にあろうが外に出ようが、老廃物であることに変わりは無いと思うのだが……」
 高橋:「ほんと、あれの何がいいんスかね?」

 私達はさっさと戻ることにした。

[同日02:00.天候:曇 栃木県日光市藤原 東武鉄道・野岩鉄道新藤原駅]

 列車が東武鉄道の北の終点駅、新藤原駅に到着する。
 この駅で2時間ほど停車する。
 微かにドアの開閉音がする。
 列車の外に出られるというのは本当のようだ。
 私はリクライニングを最大限倒していたのだが、いかんせん普通車の座席では、そこまで倒れない。
 まだ、この点では3列独立シートの夜行バスの方が倒れるだろう。
 ここで目が覚めた私は、アイマスクを取り、閉めていたカーテンを少し開けて外を見た。

 愛原:「おー……」

 栃木県の北部まで来たとはいえ、外は雪景色であった。
 天気予報では、昨日雪が降ったらしい。
 そのせいだろう。
 今は雪は降っていないようだ。

 愛原:(ちょっと降りてみるか)

 私は列車の外に出ようと思った。
 が、通路側に座っている高橋のヤツ、長い足を投げ出しているせいで、なかなか通路側に出られない。
 そういう時に限ってコイツ、グースカ寝てやがる。

 

 それでも何とか足を飛び越え、通路側に出る。
 後ろを見ると、リサと絵恋も寝入っているようだ。
 リサはブレザーを脱いで、代わりにフード付きのジャンパーを羽織り、フードを深く被って寝ていた。
 絵恋さんはスキーをする時に被ると思われる、ピンク色のキャップを深く被っていた。
 そして、リサに寄り掛かるようにし、真ん中の肘掛けの上でリサと手を繋いでいる。

 愛原:(駅のトイレに行って来るか)

 列車の外に出ると……。

 愛原:「寒っ!?」

 クソが付くほど寒かった!
 雪は降っていないものの、風が少し強い。
 吹く度に、凍死へ一歩ずつ近づく実感が湧いてくる。
 車掌の放送の通り、駅事務室や待合室には人の気配は無く、それどころか消灯されている。
 そして、駅の出入口は閉鎖されていた。
 乗客が降りて歩けるのはホーム上と駅構内のトイレと喫煙所、そして自販機の所までだろう。
 因みに新藤原駅という名前なのだから、どこかに『藤原駅』が存在するかと思うだろうが、存在しない。
 では何故、新藤原駅なのかというと、旧・藤原駅から現在地に移転した際、駅名を現在の名前にしたのだそうだ。
 その時代、今から100年前の大正時代。
 トイレに行った後、ホームの自販機で温かい飲み物を購入する。

 高橋:「先生……置いてかないでください……」
 リサ:「先生……勝手に行かないでェ……」
 絵恋:「私はリサさんとずっと一緒……」

 列車からわらわらと寝惚けた状態で、いつもの3人が降りて来た。

 愛原:「オマエら、ゾンビか!」

 取りあえず高橋は喫煙所で一服、リサと絵恋さんは駅のトイレに向かった。
 今度は老廃物吸い取りではなく、普通にトイレだそう。

 愛原:「! そういえば……」

 私はふと、聖クラリス女学院の方はどうなのだろうと気になった。
 後ろの車両の方に歩いて行くと、何だか異様であった。
 一般客が乗っている車両は、閉まっているカーテンあり、開いているカーテンありと、前3両編成と大して雰囲気は変わらない。
 しかし、聖クラリス女学院が貸し切っている後ろ2両は全ての窓にカーテンが下ろされ、しかも乗降ドアから誰も降りて来る様子が無かった。
 一瞬、中の様子を確かめたくなったが、向こうは女子校。
 さすがに部外者の私が行ったら、思いっ切り不審者扱いだろう。
 私は首を傾げながらも、前の方へと戻って行った。
 さすがに寒い。
 温かい飲み物を飲んでも、すぐに体が冷えてしまう。
 私はもう1つ温かいお茶を買い求めると、それを持って車内に戻った。
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富士急静岡バス、大石寺発着便お知らせ。

2022-02-21 18:56:35 | その他


>2022年2月21日(月)~ 下記の1往復運行になります。
【上り】
富士宮営業所 6:00発→ 富士宮駅6:10発 →鷹岡営業所6:20発→東名富士6:30発→東京駅行き

【下り】
東京駅18:20発→東名向ヶ丘18:50発→東名江田18:53発→富士宮営業所行き

 本日より減便とのこと。
 辛うじて、下り便で前日富士宮市内入りには使えるか?
 上りは恐らく御登山関係には使えないと思われ(富士宮市内在住、都内末寺の信徒さん向け?)。

 http://www.shizuokabus.co.jp/noriai-bus_taisekiji/#rinji

 平日に御開扉がある場合も、新富士駅(富士駅)から大石寺間の登山バスは運行されるが、これも1往復に減便されるとのこと。
 私が顕正会員なら、この辺りを論って、「おいおい、法華講員さんよ、登山者が減っているようだが?」と、詰ってみるのだがなw
 おおかた、妙観講が他の宿坊支部と同じ日に御講を大講堂でやるようになったのも、登山者数減少が原因だろう。
 かつては外国人信徒だけで大賑わいだったこともあり、やかましい中国語が飛び交っていた時期もあったのだが、それがまるでウソみたいになった。
 せっかく静かになったと思ったのにね。
 顕正会員も、内部ばっかり見てないで、こういう所も見ればいいのにね。
 法華講員から逃げるばかりでなく、よくよく見れば、妙観講員でさえ反論不可能な挙げ足取りできる部分もあるから、もう少し勉強した方が良い。
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“私立探偵 愛原学” 「特急スノーパル2355」

2022-02-20 20:52:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月22日23:30.天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→特急“スノーパル2355”(列番不明)1号車内]

 集合時刻になった。
 全部の人数は120人くらい。
 中等部は40人のクラスで編成されていたので、全部合わせて120人ほど。
 中には中等部を卒業してから、別の高校や高専に行ってしまった生徒もいるので、本当に全員が集まったわけではない。
 そして、当時の担任教師や副担任も合せて130人くらいになるだろうか(同行の私達も含む)。
 確かにこの人数なら、在来線特急3両編成分くらいかもしれない。
 フル規格の新幹線なら2両分くらいか。

 教頭:「えー、本日は1年ぶりに皆さんとお会いできて、本当に嬉しいです」

 見送りには中等部の教頭先生と、高等部の副校長先生が来た。
 あくまでも中等部の代替修学旅行なのだからと、挨拶は中等部の教頭先生が行い、高等部の副校長先生は注意事項を話す程度であった。

 大沢:「ただいま御紹介に預かりました妙観光の大沢と、こちら愛国清澄です。本日より皆様のお世話をさせて頂きます。よろしくお願い致します」

 それにしても、同乗する聖クラリス女学院の生徒達はどこに集合しているのだろう?
 と、思いきや……。

 愛原:「ん?」

 その時、私のスマホにメール着信があった。
 見ると、相手は善場主任。
 メールを見てみると、聖クラリス女学院のことだった。
 善場主任の情報によると、彼女らは一旦学校に集まり、そこからバスで浅草駅に向かい、直接ホームまで行くというプランなのだそうだ。

 大沢:「それでは早速列車に乗りたいと思いますが、ちょっと今、別の団体さんが乗車中とのことで、今しばらくお待ちください」

 私は彼女らの様子を見に行くことにした。
 改札口まで行くと……。

 ケンショーブラック:「それでは、聖クラリス女学院の皆様がホームに入ります。皆様、お願いします!」
 ケンショーグリーン:「クフフフフフ……。皆さん、美少女揃いですね。嗚呼、私、とても功徳を実感しております。……嗚呼、そこのあなた、銀髪と白い肌が美しい……。ハーフでいらっしゃいますか?」
 銀髪の女生徒:「……!!」(ギロッとケンショーグリーンを睨み付ける)
 ケンショーグリーン:「ハァ、ハァ……!も、もっと睨んでください!」(*´Д`)

 やっぱり危なっかしい旅行会社だ。
 そういった意味では、まだ妙観光の大沢さん達は誠実で安心できる。
 それにしても、あの銀髪のコ……。
 何だか気になるなぁ……。

 愛国清澄:「そろそろ乗車が終わりましたかね?」
 愛原:「あっ、はい!そのようですね!」
 愛国清澄:「それでは東京中央学園の皆さんにも乗車してもらいましょう」
 愛原:「そ、そうですね!そうしましょう!」

 私と女性エージェントは、先ほどの集合場所に戻った。

 大沢:「トイレが済みましたら、ここに戻って来てください。あと、飲み物は今のうちこの駅の自販機で購入しておいてください。車内販売や列車内に自販機はございません。また、新藤原駅まで車外に出ることはできませんので、ご注意ください」

 どうやら待っている間、トイレに行かせるなどしているようだ。
 確かにホームにトイレは無いし、あとは電車のトイレしか無いので、広いトイレを使いたければ今の内かもしれない。

 愛原:「高橋は?」
 リサ:「タバコ。わたしもサイトーとトイレ行ってくる」
 愛原:「行ってらっしゃい」

 こうして、私達がホームに入ったのは、発車の10分ほど前だった。

 

 愛原:「ここだ、ここまで行くんだ」

 私は路線図を指さしながら行った。

 リサ:「末端の会津田島まで行ったことのある私達としては、あまり驚きは無い」
 愛原:「ま、まあ、そうなんだけどな!」

 現在、“スノーパル”は3両編成で運転されている。
 だが、ホームにはその3両編成の前に、同じ編成が連結されており、東京中央学園はその増結車両に乗るようだ。

 愛原:「ふーん……」

 後ろ3両の編成のうち、真ん中の車両と最後尾車両(6号車と5号車)に聖クラリス女学院が乗り込んでおり、4号車に一般客が乗るという形らしい。
 なので側面の行き先表示も、後ろ3両は『スノーパル 会津高原尾瀬口』となっているのに対し、東京中央学園の貸切編成側は、『修学旅行』という表示がしてあった。
 これらの表示、どうも日によって(編成によって?)違うらしい。
 私が下調べした時、ネットの画像では、『臨時 SPECIAL TRAIN』という表示であった。
 また、修学旅行列車の場合も、『臨時』だったり、『貸切』だったりとバラバラだ。
 その為か、普段の“リバティー会津”の時は6両編成時、前編成と後ろ編成が貫通扉で行き来できるようになっているのだが、今回は行き来できないようになっていた。

〔「4番線に停車中の列車は23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。専用の乗車券をお持ちでないお客様は、ご乗車になれません。また、途中の停車駅で降りることはできませんので、ご注意ください。……」〕

 東武浅草駅は日本のターミナル駅では、特殊な構造をしている。
 まず、1番線以外は6両編成までしか入れない。
 それどころか、下り方向、前の車両はホームが細い為に、ドアカットしなければならないほどだ。
 特急ホームもそう。
 前編成の所の時点で、既に車両とホームの間の幅が半端無く広い為に、ドアカットまではしないものの、渡り板が置かれている有り様だ。
 その為か、前編成の後ろの車両(3号車)のドアから乗るよう案内される。
 車両は新型の500系と呼ばれる車両で、これも“リバティー会津”の時に乗った車両だ。
 シートピッチは新幹線の普通車くらいなので、けして狭くはない。

 大沢:「会長代理と助手の方は、こちらへどうぞ」
 愛原:「どうも」

 私達は1番前の席へ案内された。
 テーブルは壁から出す方式だが、座席のテーブルより大きい感じだ。
 また、肘掛けの中にもテーブルが収納されている。
 更には充電用のコンセントや、Wi-Fiもあった。

 リサ:「私達はここでいい?」
 絵恋:「そうしましょう!」

 リサと絵恋は私達の後ろに座った。
 どうやら、席までは決まっていないようである(何組が何号車に乗るかまでは決まっているようだが)。

〔「ご案内致します。この電車は23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。尚、前3両、1号車から3号車は修学旅行専用車両となっております。お手持ちのキップに書かれております座席番号をお確かめの上、指定の席にお掛けください。……」〕

 私と高橋はテーブルの上に、お茶や水のペットボトルを置いた。
 リサ達もそうしている。
 ホームから、発車メロディが聞こえてくる。
 “Passenger”という曲名だ。
 ドアが閉まると、電車はゆっくりと走り出した。
 ゆっくりなのは、この先には90度に近い直角カーブがあり、その制限速度は15キロだからである。
 さしもの新型車両も、車輪を軋ませて進む。

〔♪♪♪♪。「お待たせ致しました。本日も東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。23時55分発、特急“スノーパル2355”号、会津高原尾瀬口行きです。停車駅は北千住、新越谷、春日部です。……」〕

 特急停車駅のとうきょうスカイツリー駅は止まらず、逆に特急通過駅の新越谷駅に止まる辺り、スキー列車らしいと言える。
 まだ発車したばかりということもあって、車内は賑やかだ。
 本当なら仲の良い友人同士、座席を向かい合わせにして、減光時刻まで盛り上がりたいだろうに、コロナ対策の為に、向かい合わせは禁じられている。
 また、寝る時もマスクを外さないようにという御達しが出ていた。
 車内は暖房が効いて温かい。
 本当なら、寝酒を煽って寝たいところだが、自分も引率者の1人だということを忘れてはいけない。
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