報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「沖縄の異常」

2024-06-25 14:32:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月14日08時30分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校・正門]

 朝のホームルームのチャイムが鳴り、生活指導教師の三上は正門の鉄扉を閉めた。

 三上「出せ、生徒手帳!三田!またお前か!」
 男子生徒(三田)「さ、サーセン……」
 三上「輪島、お前もだ!朝飯食うヒマも無かったのか!」
 男子生徒(輪島)「うっ!」
 三上「小林!ヌいて来たのは、朝飯だけじゃないだろ!?」
 男子生徒(小林)「う、うるせっ!」
 三田「朝からオナり過ぎて遅刻とかw」
 輪島「ねー?」
 小林「こ、殺すぞっ!」
 三上「いいから!早く生徒手帳出せ!」
 三田「小林きゅん?今朝のオカズは何でちゅか?」
 小林「何を隠そう、今朝の隠し味は……」

 小林はスマホを取り出した。
 そして、それでカメラを起動させる。

 小林「そろそろ来る頃だ……🤤」
 リサ「おはよーございまーす!!」

 リサは高さ3メートルくらいある正門の鉄扉を跳び越えてしまった。

 小林「これだ!!」

 小林は下からカメラを構えて、リサのスカートの下を撮影する。
 リサは緑色のブルマを穿いていた。

 リサ「すぐに教室に入りますんでー!!」
 三上「こ、こらーっ!!その前に生徒手帳を出さんかー!!」
 小林「3年3組の愛原リサのブルマ画像」
 三田「お、俺にもくれよ!」
 輪島「ワイも!」
 三上「お前ら!放課後、生徒指導室まで来い!」
 三田「へ?ひょえーっ!!」

[同日08時35分 天候:晴 同学園1階・3年3組]

 坂上「愛原?愛原は来てないのか?」
 淀橋「魔王様、今日も休み?」
 坂上「おかしいな。今日は病欠の連絡は来てないが……」
 リサ「先生!はーい!」

 リサは開いている窓から飛び込んで来た。

 坂上「愛原!遅刻だからって窓から入っていいって誰が言った!?ちゃんと上履きに履き替えてから来い!」
 リサ「ちょっと、履き替えて来ます」

 リサは再び窓の外に出て行った。

 レイチェル「相変わらず、アグレッシブなOniさんですネ」
 淀橋「そのうち、空も飛べるようになったりしてねw」
 坂上「はい、静かに!先にホームルームを始めるぞ!」

[同日12時30分 天候:晴 同学園・学食]

 リサ「今日の定食はにんじんハンバーグ!」
 淀橋「ウマ娘か!w」
 小島「ハンバーグ定食でしょ?ニンジンの温野菜が添えられてるだけで」
 リサ「肉が食えればそれでいいの!」
 淀橋「いつもながら、売り切れたらどうしようとか不安になっちゃう」
 リサ「そしたら、2人の肉食うからいいよ」
 小島「BSAA隊員さん、そんなこと言ってますよ?」
 レイチェル「BOWの捕食行為は、即射殺という指令が下っています」
 リサ「それは恐ろしいw」
 淀橋「それに、この後体育だから、あんまり食べたりしたらお腹モタれるよ?」
 リサ「わたしは関係無いけどね」

 そんなことを話しながら食券を買い、無事に肉料理がメインのB定食をゲットした。
 3年生ともなると、テレビの観やすい席を陣取ることもできるというもので……。

 リサ「あーっ!わたしのスカートの中、盗撮したヤツ!」
 小林「げっ!?」
 淀橋「何だって?」
 小島「ほお……」

 わらわらと集まって来る『魔王軍』のメンバー達。
 あっという間に取り込まれる、今朝の遅刻組。

 小林「こ、この前、『ブルマ穿いてるから大丈夫』とか言ってたじゃないスかぁ~?」
 淀橋「あァ?そーゆー問題じゃねーんだよ!分かってんのかぁ!?」
 小島「放課後、既に生徒指導室呼び出し食らってますね」
 レイチェル「BOWのスカートの中を覗くなんて、勇気ありますね」
 上野凛「センパイ!天長会で何とかしますか!?……人間辞めてもらうことになりますけど?」
 桜谷「『男子生徒緊縛物語』というタイトルで、人物画の題材に……」
 小林「ひぃぃぃっ!」
 リサ「死にたくなかったら、この席譲って?」
 小林「は、はいいいっ!!」

 慌ててテレビの前の席を空ける遅刻3人組だった。

 リサ「おー、やっとテレビが観れる」
 凛「本当にスカートの中を撮られたんですか?」
 リサ「本当だよ。ブルマ穿いてるけど」
 凛「そういう問題じゃないですよ。先生に言った方がいいですよ」
 小島「いや、だから、もうあいつら生徒指導室に呼ばれてるんだって」
 凛「女子陸上部でも、たまに盗撮されるんです」
 淀橋「練習着で?」
 凛「練習着でです。本番を想定して、ユニフォームで練習する時なんか大変ですよ」
 リサ「ユニフォームで練習か。オマエはブルマを穿くんだろ?まさか、愛原先生が観に来られるというのに、スパッツじゃないよな?」
 凛「えっ、えっとぉ……」
 リサ「愛原先生はブルマがお好きだ。なあ、皆!」

 リサがギラリと瞳を赤く光らせると、『魔王軍』全員、目から生気が無くなる。

 淀橋「愛原先生のお言葉は絶対です……」
 小島「愛原先生の為に、次の体育はブルマを穿きます……」
 凛「陸上部のユニフォームも……」
 桜谷「スカートの下に穿く時も……」
 小島「って、ああっ!」

 すると、真っ先に正気に戻った小島がテレビを指さした。

 リサ「何だ!?」
 小島「沖縄中央学園ですって!」
 リサ「ん!?」

〔「……行方不明になったのは、NPO法人デイライト東京事務所職員の○○さんで、沖縄中央学園那覇高校校内に入ったのを最後に行方が途絶えたものです。警察では何らかの事件、事故に巻き込まれたものと見て、学校関係者からの聞き込みを……」〕

 リサ「え……?なに?これ、どういうこと???」
 淀橋「魔王様、沖縄支部の斉藤……じゃなかった!絵恋さんに聞いてみた方がいいですよ」
 リサ「確かに。でも、今はハンバーグを片付けるのが先!」

 ズコーッ!

[同日13時30分 天候:晴 同学園・校庭]

 

 PTA会長として学校を訪ねた愛原。
 来月の修学旅行に関して、校長達と打ち合わせをする為に来た。

 愛原「本当にリサ達、ブルマで体育やってるんだなぁ……」

 『魔王軍』メンバーとその賛同者くらいで、あとは従来の短パンやジャージで受けている女子生徒もいる。
 スカートの下にも穿けるようにと、丈を短くした、もはや『短パン』と言って良い物も導入されている。
 元々は高等部よりもスカートの丈が長い中等部用に導入された物だが、選択肢を広げてあげる為にと高等部にも導入された。
 『魔王軍』の活躍により、ブルマも選択肢の中に入れられるようになったが、あえて選択しているのは『魔王軍』だけか。

 愛原「おっと!こうしちゃいられない!」

 愛原は急いで校内へと入って行った。

 リサ「見た!?愛原先生、こっちを見てくれたよ!?」
 淀橋「よ、良かったね……」

 尚、昼のニュースのことについて、リサは我那覇絵恋にLINEで聞いてみたが、今のところはまだ返信が無い。
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“愛原リサの日常” 「不調のリサ」

2024-06-23 20:20:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月13日12時12分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 リサ「むー……」

 リサは変な夢を見て目が覚めた。
 色んな鬼の男達から、求婚される夢だったが……。

 リサ「わたしゃ元人間だっつの」

 起き上がると、まだ少し頭が痛かった。
 二日酔いの状態というのは、体内の水分が失われている状態でもある。
 机の上には誰が置いたか、未開封の水のペットボトルがあり、リサはそれを開けるとがぶ飲みした。

 リサ「ふう……」

 水を飲んだ後はトイレに行きたくなり、部屋の外に出る。

 リサ「ん?」

 廊下の窓から雨音がした。
 どうやら、外は雨が降っているようだ。
 しかも、意外と強い。
 通り雨がサーッと降っているだけだろうか?

 リサ「う……来た……」

 Gウィルスを酒で眠らせている間に生理が来ると重くなるというのを思い出した。
 頭痛というのも、二日酔いによるものだけではないのかもしれない。
 トイレを済ませた後、リサはまた水を飲み、もう少し寝てることにした。

[同日17時02分 天候:晴 同地区内 愛原家4階リサの部屋]

 上野利恵「私はもう中年ですから何を今さらですし、うちの娘達は半分人間の血が入った『半鬼』です。また、うちの従業員のみならず、天長会の職員も、私の血が入って鬼化した『半鬼』です。生粋の鬼で、年頃なのはリサお姉さまだけなのです。だから、他の鬼の男達が求婚に来るのですよ」

 リサ「……何であいつが、わたしの夢の中に出てきて説教してんだよ……」

 とは言いつつも、さすがに起きることにした。
 二日酔いによる頭痛はさすがに治まっていたものの、今度は生理だか、あるいは寝過ぎたことによる小さな頭痛が起きていた。
 効くかどうか分からないが、市販の頭痛薬でも飲んでおいた方がいいのかもしれない。
 リサはまた水を飲んでからトイレに行き、それから洗面所で顔を洗った。
 その後で、3階に下りて行く。

 

 リサ「おはよう」
 高橋「おっ?やっと起きたか、寝ボスケが」
 リサ「むー……具合が悪くて寝てんたんだよ!おまけに生理まて来ちゃってさ!あとお腹空いた!」
 高橋「2食も食ってねーからな」
 リサ「今日の御飯は!?」
 高橋「鍋だよ。先生がそうしろってさ」
 リサ「おーっ!」
 高橋「単純だな。……そうだ」

 高橋はコンロの火を止めると、内線電話を取った。
 そして、2階の事務所に掛ける。

 高橋「あっ、先生。リサが起きて来ましたよ。……まあ、大丈夫そうっス。角とかは出してる状態っスけど。……分かりました」

 電話を切ると、高橋はリサの方を見た。

 高橋「先生がお呼びだ。事務所に行け」
 リサ「分かった」

 リサは頷くと、エレベーターに乗って2階の事務所に向かった。
 そして、2階に到着する。

 リサ「先生!」
 愛原「よお、リサ。元気になったか?」
 リサ「二日酔いは治まった。生理になったくらい」

 リサは自分のブルマの股間を指さして言った。

 愛原「ん?そうなのか。鬼の姿でいるのは、その為か。まあいいや。善場係長からも聞いてると思うが、俺が上野利恵の所に行ったのは、係長からの依頼で、あの仮面を手に入れる為だよ」
 リサ「知ってる。善場さんから聞いた」
 愛原「確かに利恵とは色々話したが、別にそれだけだぞ?」
 リサ「分かったよ。『所有の証』は付けられていないみたいだからね」
 愛原「『所有の証』?何だそれ?」
 リサ「それは……こういうこと!」

 ガブッ!(リサ、愛原の左手に噛み付く)

 愛原「いっでーっ!?」
 リサ「爪で引っ掻いたり、歯型を付けたりするの。あとは、おしっこ掛けてマーキングとかね」
 愛原「動物か!」
 リサ「先生だって、『1番』にされたじゃん。今度はわたしがするんだからね!今なら、生理の血がついたオシッコだよ!」
 愛原「カンベンしてくれ……。でもまあ、これくらい元気なら学校には行けそうだな」
 リサ「少し頭痛がするくらい。頭痛薬ちょうだい」
 愛原「なに?そうなのか?やっぱりまだ二日酔いが……」
 リサ「いや、たっぷり寝たから、それはもう無いよ。多分、寝過ぎたせいと、あと、生理のせいもあると思う」
 愛原「そうか。それなら、救急箱に……。ほれ、ロキソニン。これでも飲んでろ」
 リサ「ありがとう」
 愛原「BOWのオマエに効くのか?」
 リサ「わかんないねー。ソルマックは効いた感あるよ」
 愛原「あれも、第2類医薬品のヤツを買ってたからな。また、ドラッグストアに行って買って来なきゃな……」
 リサ「なるほど」

[同日19時00分 天候:晴 同地区内 愛原家3階ダイニング]

 リサ「ごちそうさま。今日はキノコの多い鍋だったね」
 パール「今日はキノコ類が特売だったんです。先生、食後のコーヒーお入れしますね」
 愛原「ああ、すまない。リサも飲むか?」
 リサ「飲むー」
 愛原「というわけだ」
 パール「かしこまりました」

 リサは片付けを手伝った後、リビングに移動してスマホをチェックした。
 『魔王軍』メンバーから今日休んだことを心配されおり、さすがに二日酔いだとは言えず、久しぶりに重い生理が来たので、休んでいたと答えた。
 実際、生理は来ているので、ウソではない(生理は後から来たものである為、厳密にはウソになる)。
 リサがやり取りするのは『魔王軍』だけでなく、『魔王軍沖縄支部』もある。
 一応、グループは分けていた。

 リサ「今日は久しぶりに重いのが来たんで、さすがに学校は休んだ」
 我那覇絵恋「リサさん、大丈夫?」
 リサ「Gウィルスが動いてくれれば、割かし軽くなる。明日は学校行けそう」
 絵恋「それなら良かった。生理の時のブルマって、何か使い勝手悪くない?」
 リサ「そうか?」
 絵恋「陸上部で、どうしてブルマとスパッツの両方あるのかの理由が分かったよ」
 リサ「なるほど。そっちは変わったことは無い?」
 絵恋「異常無しですよ。ただ、放課後、黒服の人達が学校に来たくらいですけど」
 リサ「ん?」
 絵恋「デイライトって名乗ってたわ」
 リサ「おー!もうそっちに行ったんだ!」
 絵恋「やっぱり、リサさんは知ってるのね」
 リサ「多分、斉藤早苗の所に行ったんじゃないか?」
 絵恋「そうなの。でも、何かおかしいのよ」
 リサ「……オマエ、さっき『異常無し』とか言ってなかったか?」
 絵恋「『魔王軍沖縄支部』は異常無しです!早苗さんは『魔王軍』の正式メンバーではないので!」
 リサ「それで、何がおかしかったの?」
 絵恋「何度も校内放送が流れたの。ほら、『斉藤早苗さん、斉藤早苗さん、至急職員室まで』とかっていう放送」
 リサ「ああ!何度も流れたということは……」
 絵恋「なかなか職員室に行かなかったってことだね」
 リサ「エレンは知らないの?」
 絵恋「早苗さん、他のクラスだからね。だから結局、早苗さんがデイライトの人達と会ったかどうか分からないのよ」
 リサ「ふーん……」

 確かにクラスが違えば、なかなか事情も分かるまい。
 この時は、ちょっとした行き違いでもあったのだろう程度にしか思わなかったリサだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの二日酔い」

2024-06-23 14:41:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月13日06時30分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家4階・リサの部屋]

 愛原「リサ、朝飯の時間だぞ!学校はどうするんだ!?」
 リサ「頭が痛い……気持ち悪い……食べたくない……休む……」

 リサはベッドに横になって、頭から布団を被っていた。
 リサの部屋は、酒の臭いが充満している。
 昨夜帰ってから部屋を除いたら、リサの部屋は“鬼ころし”のパックが部屋中に散乱していた。
 そして、ベッドの上に大の字になって鼾をかいて眠っていた。
 で、朝になったらこのザマだ。

 愛原「未成年のくせに二日酔い起こしやがって!“鬼ころし”はお前が暴走しない為に、特別に少量だけ薬として飲むことが許されているだけなんだぞ!」
 リサ「大きな声出さないで……!頭に響く……!」

 リサは更に頭から布団を被った。

 リサ「体が消えちゃいそう……」
 愛原「えっ?」
 リサ「…………」

 すると、布団の膨らみが無くなって行く。

 愛原「おい、リサ!」

 私は上から布団を押してみた。
 すると、感触が無い!

 愛原「!?」

 慌てて掛布団を剥がしてみると、そこいたはずのリサがいなくなっていた。
 リサが消えた!?

 愛原「わああああ!!」

 私は慌てて部屋を飛び出した。
 そして、階段を駆け下りて3階のダイニングに飛び込む。

 愛原「たっ、たっ、大変だーっ!リサが消えたーっ!!」
 リサ「だから大きな声出さないでよ……」
 愛原「えっ!?」

 リサはダイニングにいて、冷蔵庫を開けていた。

 リサ「確かここに……ソルマックがあったよね……」
 パール「先生、差し上げて宜しいのでしょうか?」
 愛原「てか、何でオマエここにいるの!?」
 リサ「えっ……何が……?」
 愛原「さっきまで布団にいただろうが!?ワープでもできんのか、お前はーっ!?」
 リサ「ちょっと……何言ってるか分かんない……」
 愛原「何で分かんねーんだよ!パール、リサのヤツ、いきなり現れたのか!?」
 パール「どうでしょうねぇ……。ただ、いつの間にかいらっしゃったって感じです」

 リサは無言でソルマックを飲み干した。

 リサ「寝てる……」
 愛原「絶対、テレポートしたはずなんだよなぁ……」

 特異菌に感染してモールデッドなどのクリーチャーになったり、BOWになったりした者は、たまにそういうことができるらしい。
 リサも元は特異菌を持っていたわけだし、今も無毒化されているとはいえ、特異菌もどきを持っているわけだから……。
 リサは今度は階段を通って、4階へと上がって行った。

 高橋「先生、どうします?」
 愛原「さすがに、酒臭いまま登校させるわけにはいかんだろ。今日は休ませるよ」
 高橋「分かりました」
 愛原「学校へは明日、連絡しておく。お前は善場係長に連絡しておいてくれ」
 高橋「了解です。元々今日、ねーちゃんが来ることになってるんスよね?」
 愛原「ああ。9時には来られる。例の仮面を取りにな。事務所オープンと同時に御到着だ」
 高橋「で、その足で沖縄に行かれると?」
 愛原「係長御自身は行かれないだろうが、仮面は調査員に渡されるんだろう」
 高橋「なるほど」

 今朝の朝食は和食。
 サバの塩焼きと玉子焼きが出て来た。
 肉系は無いので、それもまたリサが食欲の無い理由か。
 Gウィルスを抱えているおかげで、リサは例え相手がエイズだろうがエボラだろうが、感染することはない。
 それらのウィルスが体内に入っても、Gウィルスが食べてしまうからだ。
 無毒化前の特異菌があった頃は、特異菌がインフルエンザやら新型コロナを取り込んでいた。
 人間を化け物に変えてしまう最強最悪のウィルスは、殺人ウィルスでさえもエサに過ぎないのである。
 幸いなのは、Gウィルスは空気感染や経口感染などはしないこと。
 Gウィルスが胚を形成し、それを他の生物に植え付けることで繁殖する。
 ところがその胚を特異菌が食べてしまうので、リサのGウィルスは外に漏れることは無かった。

[同日09:00.天候:曇 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 約束の時間通り、1階のガレージに黒塗りのミニバンが到着する。
 そこから善場係長が降りてきて、2階の事務所まで上がって来られた。

 愛原「おはようございます!善場係長!」

 エレベーターのドアが開くと同時に、私は係長を出迎えた。

 善場「おはようございます。愛原所長。昨日はお疲れさまでした」
 愛原「いいえ、恐れ入ります!どうぞ、こちらへ!」

 私は善場係長を応接コーナーへと案内した。

 愛原「こちらが、例の仮面です」
 善場「ありがとうございます。2つありますね?」
 愛原「一応、1つは予備です」
 善場「なるほど、そうでしたか。お気遣い、ありがとうございます。費用についての領収証なども、頂いて行きますよ?」
 愛原「はい、こちらです。よろしくお願いします」

 私は領収証と書類を係長に渡した。

 愛原「仮面の購入費用と、新幹線代やタクシー代などの交通費です」
 善場「かしこまりました。これだけで宜しいですか?飲食代や、上野利恵に情報料を払ったのでしたら、その情報料なども請求して頂いて構いませんよ?」
 愛原「いえ、さすがにそういうわけには……。それに、上野利恵からの情報は、あまり大したこと無い内容だったわけでしょう?」
 善場「BSAAにとっては、あまり有用とは言えないかもしれませんね。ただ、他の省庁では有益に思う所があるかもしれません」
 愛原「そういうものですかね……」
 善場「取りあえず、今お出しして頂いた費用につきましては、後ほど精算させて頂きます」
 愛原「ありがとうございます」
 善場「ところでリサは今日、学校を休んでいるそうですね?」
 愛原「さすがに、酒の臭いをさせたまま登校させるわけにはいきませんから」
 善場「体に変化などはしていないですか?」
 愛原「今のところは普通に部屋で寝ているだけです。私も時たま深酒してしまって、二日酔いになってしまうこともありますが、大体は昼ぐらいには治ります。リサもそうだといいのですが……」
 善場「そうですね。もしもリサに変化がありましたら、すぐに連絡して頂けると助かります」
 愛原「もちろんです。そうさせて頂きます」
 善場「よろしくお願い致します」

 係長が退所される時、私もガレージまで送らせて頂いた。
 運転席には係長の部下と思しき男性職員が待機していたが、係長はリアシートではなく、助手席に乗り込んだ。
 どうもリアシートにも誰か乗っていたようで、それがどうやら今回、沖縄まで行く調査員達のようである。
 これから羽田空港まで向かうようなことを言っていたので、それで間違いないだろう。
 デイライトの職員達の車はガレージから出て行ったが、シャッターを閉めるようなことはしない。
 今日は他にもクライアントが来訪する予定となっており、中にはデイライトのように車で来る人もいるからだ。
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“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」 5

2024-06-22 21:15:09 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日20時20分 天候:晴 JR東北新幹線282B列車1号車内→(JR東日本)東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線と、地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 列車は定刻通りに都内を走行している。
 地下深い上野駅を出て、秋葉原付近で地上に出る。
 進行方向左手にあるヨドバシAkibaの眩い広告を眺めながら、並行する通勤電車よりやや速いスピードで走行する。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京、終点です。22番線の到着、お出口は左側です。お降りの際、お忘れ物、落とし物の無いよう、よくお確かめの上、お降りください。……」〕

 愛原「もうすぐ着くな」
 高橋「はい。荷物を下ろしますね」
 愛原「頼む」

 東京駅に近づくに連れて、私の緊張感は高まって行った。
 いくら善場係長がリサを宥めてくれたとはいえ、ずっと付きっ切りでいてくれるわけではない。
 帰宅する頃には怒りが再燃して、襲い掛かって来ることもある。

 高橋「先生。今のところ、パールからは何も連絡はありませんし、イザとなったら俺が、俺のデザートイーグルで頭吹っ飛ばしてやりますから」
 愛原「それで倒せれば、今頃リサ・トレヴァーはラスボスなんてやってないよ」
 高橋「かといって、明日はクライアントが来訪することになってますから、事務所を開けないわけにはいきませんし」
 愛原「わ、分かってるよ」

 そんなことを話しているうちに列車はホームに滑り込み、そして、ガクンガクンと揺れながら停車した。

〔ドアが開きます〕

 他の乗客達は、デッキに向かっている。
 私達もその列の後ろに並んだ。
 そしてドアが開き、乗客達はぞろぞろとホームへ降りて行く。

 

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京、終点です。お忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください。22番線に到着の電車は、折り返し20時32分発、“はやぶさ”117号、仙台行きとなります。……」〕

 愛原「一服して行くんだったな?」
 高橋「お願いします」
 愛原「那須塩原で吸えなかったんだ。思いっ切り吸ってきていいぞ」
 高橋「サーセン。ちょっと行ってきます」

 高橋はそう言うと、タバコを片手に喫煙所へと向かって行った。
 あいにくと22番線と23番線のホームでは、1号車付近に喫煙所が無い。
 あるのは20番線と21番線のホームのみ。
 あとは、後ろの方に行くしか無い。
 だがまあ私は、途中の自販機で缶コーヒーを買い求めると、待合室のベンチに座って待つことにした。
 スマホを取り出して、リサのLINEを見てみる。
 相変わらず、既読スルーされているだけである。
 『愛原学探偵事務所グループLINE』を通し、パールにリサの状況を聞いてみた。
 すると、その答えは意外なものだった。

 パール「ご安心ください。今は眠っておられます」

 とのこと。
 まだ20時台だというのに、もう寝てるのか。
 それとも、不貞寝だろうか。

 愛原「俺に対しての怒りと、善場係長に何か色々言われたから、不貞寝してるのか?」
 パール「……か、どうかは存じません。ただ、“鬼ころし”を沢山飲まれて、あとは寝室に籠もられました」
 愛原「“鬼ころし”沢山飲んだの!?」

 私がそう返信すると……。

 リサ
 

 どこかネットから拾って来たと思われるイラストを投稿してきた。
 リサとは違う容姿の女の鬼が、樽に入った“鬼ころし”をがぶ飲みしているイラストだった。
 いやいや!こんなに飲んだらリサ、逆に暴走するだろう!

 愛原「おい、リサ!こんなに飲んだのか!?」

 しかし、私の問いには答えず……。

 リサ
 
「今日の下着」

 リサ
 
 「今日はこのブルマはいて寝る。おやすみなさい」

 などと、自分の下着画像やブルマ画像を投稿して、あとは何も投稿しなくなった。
 これは……少なくとも、暴走はしていないということだよな。
 ある意味、機嫌も直ったのかも。

[同日21時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 タクシー車内→愛原家]

 喫煙を終えた高橋と合流すると、私達は東京駅のタクシー乗り場からタクシーに乗り、自宅を目指した。

 高橋「リサのヤツ、フザけた返信してやがりましたね」
 愛原「別にいいよ。逆に、機嫌が直った証拠かもしれない」
 高橋「あいつ、見た目に反して、中身はオッサンじゃないっスか。まあ、オバハンと言った方がいいかもしれないっスけど」
 愛原「しょうがないよ。パールが来るまで、実質的にむさ苦しい男2人との共同生活だったんだから」

 この事実については、基本的に内緒である。
 本当に何も無かったのだが、あらぬ誤解を招く恐れがあるからだ。

 愛原「で、それがどうした?」
 高橋「機嫌が悪いと、酒かっ食らって不貞寝する所はオッサンだなと思いました」
 愛原「ああ、そういうことか。それで機嫌が直るなら、安いモンだ」
 高橋「ですがヤツの場合、飲み過ぎても暴走の危険があるんですよね?」
 愛原「まあ、あいつ自身がというよりは、中身のGウィルスが、だな……」

 Gウィルスも酔っ払って暴走する恐れがあるからだ。
 宿主たるリサがほろ酔い程度であれば、逆にGウィルスには寝酒状態になるようで、眠ってしまう。
 だから、リサの暴走が抑えられるというわけだ。
 だが、泥酔状態になると、Gウィルスもまた泥酔してしまい、酒乱を起こすようなのだ。

 愛原「あっ、運転手さん、この辺りで止めてください」
 運転手「こちらで宜しいですか?お支払いは如何なさいますか?」
 愛原「タクシーチケットでお願いします」
 運転手「はい」

 私が料金を払っている間、高橋が先にタクシーを降りた。
 そして、曇りガラスの玄関ドアの前に立つ。
 曇りガラス越しに、向こう側は明かりが点いている。
 高橋はインターホンは押さず、スマホを弄っていた。
 恐らく、パールに直接LINEしているのだろう。

 運転手「ありがとうございました」
 愛原「どうも」

 私はチケットの控えと領収書を受け取って、タクシーを降りた。

 愛原「中に入っても大丈夫か?」
 高橋「リサのヤツ、今はガチ寝してるらしいっスよ」
 愛原「そうなのか」

 それなら安心とばかりに中に入る。
 確かにリサが襲い掛かってくることは無かったのだが、後でリサの部屋を見に行ったら、別の意味で驚かされたのである。
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“私立探偵 愛原学” 「北関東トンボ返り」 4

2024-06-21 20:52:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月12日18時50分 天候:晴 栃木県那須塩原市大原間 JR那須塩原駅→東北新幹線282B列車1号車内]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、那須塩原駅西口です。お忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください」〕

 私達を乗せた路線バスは、無事に那須塩原駅に到着した。
 降りる時は、前扉から。
 ICカードで払う。
 これだと領収証が出ないから請求できないのではと思うかもしれないが、利用履歴を印字すれば出て来るので、証拠はある。

 愛原「少し急ごう。19時3分発の“なすの”に乗れそうだ」
 高橋「うぇっ?一服無しっスか?」
 愛原「急げば1本くらいは吸えるかもしれないぞ?」
 高橋「急ぎましょう」

 ということで、駅構内に急ぎ足で入る。
 因みに今、家に善場係長がやってきて、膝詰めでリサを説得しているところだそうだ。
 まさか係長自ら足労されるとは意外だったが、これで安心というものだ。
 残念ながら、夕食は駅弁になりそうだがな。

 愛原「夕食は弁当でも買って行こう」

 キップ売り場で新幹線のキップを買う。
 もちろん、領収証を発行するのは忘れない。

 愛原「って、あれ!?」

 専用の駅弁売り場は無いようだが、NewDaysはある。
 そこに行こうとすると、音声通話の着信があった。
 着信音的に、善場係長からだろう。

 愛原「あっ、はい!もしもし!?」
 善場「愛原所長、お疲れさまです」
 愛原「係長、お疲れ様です!今、那須塩原駅です。これから、新幹線で帰京します!」
 善場「お疲れさまでした。何とか、リサの説得には成功しましたので、安心して帰って来てください。ただまあ、寄り道しないでくださいね」
 愛原「分かってます。もう、新幹線に乗りますから!“なすの”282号です!」
 善場「“なすの”282号ですね。……すると、もうそろそろ発車のようですが……」
 愛原「そうなんです!」
 善場「それでは乗り遅れては大変ですね。後で、メールさせて頂きますので、乗り遅れないことに専念してください」
 愛原「分かりました。それでは失れ……」
 リサ「先生のバカーッ!!」

 善場係長が電話を切る直前、リサの怒声が聞こえて来た。

 愛原「うあー……」
 高橋「リサのヤツ、先生に罵声を浴びせるとは、いい度胸だ……!」
 愛原「って、それより早く弁当買ってホームに行くぞ!」
 高橋「は、はい!」

 弁当や飲み物を手にホームへと急ぐ。

 

〔「1番線に停車中の電車は、19時3分発、“なすの”282号、東京行きです。終点の東京まで、各駅に止まります。自由席は前寄り6両、1号車から6号車です。まもなくの発車となります。ご利用のお客様は、ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 そして私達は、始発ホームに停車している10両編成の列車に乗り込んだ。
 編成そのものは、往路と同じだ。
 東京駅に着いてから高橋が一服できるよう、なるべく前の車両の方に移動する。
 始発駅の夜の上り列車ということもあり、車内はそんなに混んでいなかった。
 それこそ、2人席じゃなく、3人席を2人で占有しても迷惑にならないのではと思うくらい。
 先頭車の空いている席に座ると、私は弁当をテーブルの上に置いて、荷物を網棚に置いた。
 荷物には鞄とホテルで買った仮面の他、駅で買ったお土産もある。
 リサの機嫌を取る為、お菓子を購入した。

〔「ご案内致します。この電車は19時3分発、“なすの”282号、東京行きです。那須塩原を出ますと、宇都宮、小山、大宮、上野、終点東京の順に止まります。まもなくの発車となります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕

 高橋「さすがにビールは無しっスか?」
 愛原「善場係長が動いて下さった上に、仕事なんだから飲めるわけねーだろ」
 高橋「それもそうっスね」

[同日19時03分 天候:晴 JR東北新幹線282B列車1号車内]

 発車の時刻になり、ホームから発車ベルが聞こえて来る。

〔1番線から、“なすの”282号、東京行きが発車致します。次は、宇都宮に、止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 私は駅弁を食べ始めていた。
 因みに飲み物はビールではなく、ただのペットボトルのお茶。
 発車ベルが鳴り終わると、甲高い客扱い終了合図のブザーが鳴り響いて、車両のドアが閉まる。
 那須塩原駅にはホームドアが無い為、車両のドアが閉まると、ゆっくりと走り出した。
 待避線ホームに停車している為、本線に出る際にいくつかのポイントを渡らないといけなく、それで速度制限が掛かる為だろう。
 面白いのは、上り線ホームに出るまでの間、一瞬でも下り線を逆走する形になること。
 趣味的には面白くても、JRにとっては、遅い列車が一瞬でも本線を支障することはダイヤ上のネックになる為、気持ちモヤモヤするところだろう。
 元々は東海道本線の駅だった来宮駅がそこから切り離され、伊東線の駅になったのはそれが理由だからである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、東北新幹線“なすの”号、東京行きです。次は、宇都宮に止まります。……〕

 弁当を食べている間、善場係長からメールが送信されてくる。
 リサには言い付けておいたので、私からもリサには謝罪するようにとのことだ。
 あとは最低限の機嫌を取るだけで、リサからの質問に答える以外、余計なことは言わないようにとのことだ。
 まあ、確かにそうだろう。

 善場「上野利恵から、何か情報は得られましたか?」

 と、最後に質問されたので、私は一応、秋田から『なまはげ御一行様』が、京都からは『大江山御一行様』が泊まりに来たらしいという話をした。
 突拍子も無い話なので、証拠写真の集合写真を添付しておいた。
 案の定、しばらく係長からは返信が無かったばかりか、あっても、大した情報ではないと切り捨てられた。
 写真の見た目は秋田のナマハゲや、京都の酒呑童子などを観光ネタにしている観光業界関係者の慰安旅行にしか見えないからだ。
 あくまでこちらは、バイオハザード対策関係。
 ウィルスや特異菌の影響で、人間が鬼化してしまうことに今は対応しているだけなので、そうでない場合は管轄外なのだ。
コメント (2)
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