ずっしり厚い一冊。内容もびっしりです。年に一度の大会での各分科会からの推薦作品が掲載され、投稿作品からは3作の掲載です。投稿作品に対して一作一作編集委員の選評が載っています。これが、すごい。掲載された完成度の高い3作品に対してのあさのあつこ代表の厳しいコメントには襟を正す思いになります。ひとつ例をあげると「このラストにしないために、人は物語を書くのではないでしょうか。作者は○○(主人公)ともっと本気で向かい合うべきです。そうすれば○○にしかできないラストがうまれてくるはずです」うーん。この作品、ホントに描写力抜群のものなのです。でも、そこのレベルを求められるほどの力があるということ。
かつてこの大会推薦作だったものが、そのまま出版されているものがあることを思うと、この季節風は原石のようなものだと思います。横沢彰さんの「スウィング」、升井純子さんの「空打ちブルース」(講談社児童文学新人賞)、にしがきようこさんの『ピアチェーレ』(椋鳩十文学賞)、堀米薫さんの「林業少年」も近々出版!
今号から私は書評委員として、本の紹介をしています。今でも迷っているのは、書評ってなんなのか? 書評委員なのだから、たんなる本の紹介ではないものを書くべきなのか、ということです。通常新聞や雑誌にはよく本の紹介がありますが、あれは書評とは違うのですものね。それを読んだ人が、その本を読みたくなったらOK.で、評論というのは、その本を考察すること……。そんなことできません。
『逢魔ヶ時の物語』(巣山ひとみ・学研)を取りあげ、書かせていただいたのですが、今号では季評(これも、つまり「季節風」の評論という意味か?)で、海光哲さんが、10冊の本を読み解き、「行き詰まる文学と児童文学の行方」というまさに評論を書いてらっしゃいました。そこに『逢魔ヶ時の物語』も入っていて、私の書いたものと比較させていただき、なるほど、私は作品の要素に焦点を当て、海光さんは物語が伝えようとしているものに焦点を当てています。とても参考になりました。
また大会の感想として、上原孝一郎さんが(お会いしたこともなく、どんな方なのか全くわかりません)書かれていたことが、とてもとてもよかったです。「感想をいくら積んだところで、それは合評会にはならない。合評会の醍醐味は、人の作品を語る中で、自分の論理や作品世界を高めていくことにある。また人から語られる言葉を受け止めることによって、自分の論理や作品世界を再構築していくことである」「他の人の作品について語ることは、同時に自分の作品について語ることだった。他の人の言葉に耳を傾けることは、同時に自分の作品について耳を傾けることだった」
いや、松弥龍さんの「てまり物語」のやさしさや(ぜひ一冊の本になりますように)、佐渡を舞台にした力作「じいちゃんおお経の本」(高田由紀子さん。これも完成度が高い)や、井嶋敦子さんの詩「汽笛」の一節のきらめきや(敦子さん、現在毎日小学生新聞で「小児病棟504号室」連載中!)、ナンセンス児童文学の旗手近江屋一朗さん(今年集英社みらい文庫でデビュー)の「うそうそラブレター」や、まだまだ語り尽くせずすみません。