高学年から
「季節風」同人、せいのあつこさんのデビュー作です。
「季節風」は投稿した作品を編集会議で協議し、これというものだけが掲載されます。せいのさんはその常連。圧倒的な実力の持ち主で、デビューが待ち望まれていました。
そして、ついに!
『ガラスの壁のむこうがわ』は、掲載作だったものの連作です。
冒頭の章でぐいっと心をつかまれます。
「ガラスの豆」・・・ガラスの豆が、私の前にも落ちました。私もこのガラスの豆を見てたことがあったよ。
もくじにある各章のタイトルを並べると、
ガラスの豆/埃は光る/空を、さわる/パーティー・ケーキの味/風が吹く場所/沈黙のお姫さま/水底の宝/閉じる鍵、開く鍵/銀のバレッタ/仲原さん/ガラスの壁のむこうがわ/小さな声
この一つがタイトルになったわけですが、他の章タイトルのどれもがタイトルになり得る。
これは、すごい。
繊細に紡がれた言葉が、きらきらと輝いて降り注いでいるような作品。
内容について書こうと思ったけれど、読んでいただくのが一番いいかな。(あたりまえですね)この子は私だ。と思う子達が、きっといるに違いありません。そしてその子にとって、この本はどれだけ大事なものになるか。
児童書の場合、毎年課題図書というのが選定されます。この作品が、それになって、子どもたちに作文を書いてもらいたいなあ。読書感想文というものに対しては否定的な意見も多いし、それは確かに的を得ているとは思うのですが、でもでも。『ガラスの壁のむこうがわ』を読んで、「正解!」的な作文を書く子もいるだろうけど、なんだろう。もしかしたら、この作品に負けないくらいすごい文章を書く子がいるかも、なんて思ったりして。
人の心の奥底に眠っているものを掘り起こしてくれそうな作品なのです。