私は、記念日なんて覚えちゃいない。
おはようございます。
会社に舞い込んできた猫を始めて見た日も、
その猫を始めて触った日も、その猫に名前を付けた日も、
正確な日にちなんて覚えちゃいない。
ただ、これだけはハッキリと記しておくべきだと思う。
3月20日、チャー坊を保護した。
日曜日、なぜか、チャー坊は小屋へ入らなくなった。
体調は、みるみる悪くなっていくというのに、
更になぜか、左手を地に着けなくなっていた。
周囲を点検してみると、車庫内のロッカーにマーキング尿の跡を見つけた。
「これ、この辺でブイブイ言わせてる野良のじゃ?」
私は以前から、嫌な予感がしていた。
弊社はおそらく、数年前から、白黒ブチ猫の縄張りのはずだ。
実は、その中にチャー坊は舞い込んできたことになる。
いずれ、ブチに追い出されるかもしれない。
私は、それが気がかりだったが、ついにその時期が来たかもしれないと悟った。
左手は目立った怪我は見えないが、ただでさえ体調の悪い中、
それ以上の痛みには、もう耐えられないといった様子だった。
それでも、チャー坊は、私に
「おばさん、ブラシイングの時間だよね」
と言わんばかりに、毎朝ブラシを掛ける、朝日が集まる場所へ歩いて行く。
そこでコロンと寝転んだ。
昼も夕方も、そのまま、そこで転がっているから、
「チャー坊、もうお部屋に行こう」
と言って、車庫内へ運んだ。
いくら馴れているからって、抱っこは苦手なことを知っていたから、
15メートルの移動に、キャリーケースを使った。
そして20日、月曜日は、かずこさんのデイサービスの日だった。
準備をして、送り出すために、月曜日は毎週、会社には遅刻する。
昨日は、その前に一度、会社へひとっ走りした。
チャー坊は、昨夕居た場所にそのまま、居た。
小屋ではなく、小屋の横だった。
ガタガタ震えていた。
それでも、
「チャー坊?」
と声を掛けたら、チャー坊は、ちゃんと返事をした。
もうダメだ。
私ははっきりと、チャー坊に断言した。
「チャーちゃん、実家へ行こう。もう、行こう!」
私は以前から、チャー坊にそれとなく話していた。
「うちにはさ、気難しい猫が居るからチャーちゃんは連れて行けない。
それじゃ結局、君にまた、別の苦労を掛ける。
でも実家なら連れて行けるかもしれない。
その代わり、君の自由は奪うよ。
それでいいなら、それでもいいなら、教えてね。」
そして私は昨日、チャー坊の答えは、イエスだと判断した。
それと同時に、保護してもすぐに看取ることになる覚悟を持った。
まずは病院だ。
看護師さんは、バックヤードで、
「やっぱり、おかっぱさんが連れて来ましたよ~。
ほら、薬だけ渡した地域猫ちゃん。来た来た。」
丸聞こえだ。
やっぱりとか言われてる・・・。
そして今回は、院長ではなく奥さん先生のお出ましだ。
私は相変わらず、めちゃぶりオーダーをする。
「今保護したばかりなので、怖がらせたくない。
とにかくまずは、痛いのと苦しいのが楽になるようにできませんか?」
と。
すると、奥さん先生は
「そうね、分かったわ。
耳も目もボロボロね。あぁ、口の中も酷い。
左手は・・・ん~大きな傷は無いわね。
って、おかっぱさん?
この子、ものすごく大人しいんだけどぉ~。」
革手袋覚悟の診察だったはずが、まあ、チャー坊の大人しいこと!
「普通ね、意識が無い意外、どれだけ具合悪くても
フーかシャーくらいは言うものよ。ねえ、この子、こんな感じな子なの?
もうね、そうなったら、3日に一度、点滴通って~。
おかっぱさん、まだ諦めないで。
楽観はできないよ。でも、これだけ大人しい子なら、
いろんなこと、やってあげられるもん。やりましょう、おかっぱさん!」
次は、いよいよ実家だ。
キャリーケースを開けて10分後、
父の立つ台所まで歩いて行って、そこで寝始めた。
父は驚く。
「おい、この子はどういう子や?
普通、もっとオドオドするもんだぞ?」
父「いいか、チャー坊。ここはお前の家だからな。大事にするからな。」
昨日は、こんな感じで少なく見積もって15回、
チャー坊は、父の愛の告白を聞かされていた。
かずこさんも、なんかよく分からんけど、楽しそうだ。
チャー坊、待させたね。
長い間、お疲れさんだったね。
静かな暮らしをと実家に保護した訳だが、
結局、実家も騒がしいということを、私はこの時、思い出した。
チャー坊、頑張れ!