チャー坊を実家へ連れて来て、
今日が4日目だ。
おはようございます。
一日目は、ぐったりリビングに横たわっていたが、
二日目からは、ある意味体調が改善したおかげで、
籠城するという行動が出来るようになった。
そんな訳で、今はリビングのソファーの下で暮らしている。
まだ、おっかなびっくりだ。
そりゃそうだ。
ずっと外で暮らしてきたのだから、テレビ見ただけでも
「なんだ、これはぁぁぁ?!」
ってなるよね。
ただ、チャー坊の凄い所は、
そんな中でも、実はもうすでに、トイレを覚えた。
2日目で覚えた。
おそらく土の上でしか放尿したことなかったろうに、
しょぼい簡易トイレですることを、完璧に覚えたのだ。
用を足す時は、ソファーの下からちょろっと出てきて、ちゃんとする。
そして、体調も回復してきたからもあるが、
ご飯をちゃんと食べている。
お薬入りのチュールをちゃんと舐めて、その後ドライを出してやると、
ちゃーんと食べる。
私が呼ぶと、ちゃーんと返事もする。
一昨日から、私とのブラッシングの時は、ソファーから出ても来れている。
これって、凄まじい適応能力だと思うのだ。
チャー坊にとって、父さんと母さんは、まだ怖い。
とはいえ、昼の間ずっと話し掛けてくる父さんは、
実は、もうそんなに怖くないっぽい。見慣れて来ているのだ。
おそらく、もう触れると思う。
でも、父さんはまだ触らない。
「まだ触らんでおくぞ。今が肝心だからな。」
と、決してチャー坊に無理強いをしない。
かずこさんは、全く理解していない。
認知症のかずこさんにとっては、
なにもかも、理解の範ちゅうを越えているのだ。
ただ、
「猫がおる」
ということは、理解している。
反応は、まるで幼子だ。
ソファーの下からちょろっと出てくると、かずこははしゃぐ。
こういう時は、猫を無視してやるのが鉄則だ。
しかし、幼子のようにはしゃいだ声を出すから、猫は余計に怖がるわけだ。
とはいえ、自己防衛本能がズバ抜けている、かずこは
近付いて無理にでも触ってやろうなどという、悪戯心を持っていない。
そのくせ、我が家に来た時など、
近寄ってくる猫は優しく撫ぜてくれるから、いずれチャー坊もそうなると思っている。
私は、チャー坊を実家へ連れて来て以来、
夕方から両親の就寝まで実家に留まるようになった。
チャー坊が実家に馴染むまでは、側に居てやりたいからだ。
両親は、夕方から就寝まで、毎晩酒盛りをしている。
そりゃもう、タフなんてもんじゃない。
私は、吞まずに付き合う訳だが、それでももう、ヘロヘロだ。
三日でヘロヘロだ。
楽しい訳じゃない。
いや、もう嫌だ。
チャー坊が居なければ、あんな酒盛りになんて付き合いたくない。
父さんは酔うタチが悪いし、かずこはもっとタチが悪い。
昔から、そうやって毎晩、夫婦喧嘩に発展していた。
吞んで言い合いして、崩れるように寝る。
それは今も、変わっちゃいないことに愕然とした。
こんな環境下に、チャー坊を置いて大丈夫だろうかと心配になるから、
両親が寝るまで、実家から離れられない訳だ。
ただ、その様子を毎日見ていると、この二人は噛み合わない。
父さんの言い分に対し、かずこの返答は全く的外れで、会話にもなっていない。
喧嘩なのに、喧嘩が成立していないのだ。
そこは昔と大いに違う。
そして、昨夜はもう、私は泣きそうになった。
父さん、父さんったら・・・・
私は、母が認知症になって以来、父に批判的な思いを持っていた。
「母さんのは病気なの。そんな言い方しないで!」
そう思うことがよくあった。
分かったような口ぶりで、
「だからね、あたしがサポートしてるんだから安心して。」
なんて言っていた。
「こんなにサポートしてるのに、なにがそんなにイライラしてんだよ。」
なんて思ってもいた。
けれど、私はこの3日間で、私がいかに浅はかだったかを思い知った。
認知症で、どんどん壊れていく人間と二人きりの暮らしが
どれほどやるせなく、どれほど苛立ち、どれほど絶望するか、
たった三日で、その深淵を見せられた。
それでも、父は今も、母を守らんと踏ん張っている。
決して、いつも暴言を吐いている訳じゃない。
酔った時、溜まったものが抑えられなくなるのは、
無理もないことだ。
分からず屋の頑固者でワンマンで、偉そうで、短足で眼が細い、
声がバカでかい父さんが、この環境下で、
どれほど踏ん張っていたか、私はようやく、その深みを感じた。
だから私は今、朝だっていうのに号泣している。
父さん、ありがとう。
私の母を守ってくれて、ありがとう。
その思いで、涙が止まらない。
チャー坊が来なければ、気付かないままだった。
チャー坊、君ってやっぱり、凄いんだな。
おっと、もうこんな時間だ。
我が家の猫らは、相変わらずの模様をお伝えします。
おたま「あや姉が見てるから、おらの雄姿をアピールするだ」
おたま「おらのくねくねセクシーアピールだ」
おたま「くねくね~、くねくね~」
くねくね~くねくね~
おたま「?!」
とっくに行っちゃったよ・・・。