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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

3月歌舞伎座「仮名手本忠臣蔵」

2007-02-04 02:18:03 | 伝統芸能
すっかりバレエ頭になっていたわたくしに、会社の先輩が「2月の歌舞伎座にはいつ行かれるの?」
「?」「仁左衛門さんと玉三郎だから行くのでしょう?」「!」

なんと祇園一力茶屋でお軽の玉三郎、寺岡平右衛門が仁左衛門!
慌ててWEBで夜の部一等席をチェックしたところ、思いのほか良いお席をGET.
6列目中央花道寄りのお席で観て参りました。


建て替え前に、名作の通し狂言を豪華配役で!というコンセプトなのでしょうか。
3月は義経千本桜ですし。
夜の部は5段目6段目の勘平が定番、菊五郎。お才は時蔵。
7段目の祇園一力茶屋では、大星由良之助を吉右衛門、お軽が玉三郎で兄、寺岡平右衛門が仁左衛門、斧九太夫は芦燕。
折角の通しですので昼の部も、とちょっと思ったのですが、仁左玉フリークとしては欲張りすぎずに、しっかりと見たいところに集中しようという所存で。



6段目、勘平腹切の場。
10月に仁左衛門の勘平で見たときには、浅葱の礼服が似合う(お着替えを舞台の上でとてもスマートになさったのも印象的)「色にふけったばっかりに」という台詞から運命の流転をくいとめることの出来なかった悲劇の主人公、という強烈な印象だったこの勘平役。
菊五郎さんですと、ハッとことの次第を飲み込んで(誤解して)自らの不孝に動揺する場も、あまりおたおたせず、それはそれとして運命の残酷さを噛みしめている風情。動の仁左衛門、静の菊五郎でしょうか。
お着替えシーンもお軽の玉三郎がかいがいしくお手伝い。
玉三郎は、もと腰元のお行儀のよさを残す控えめな妻の拵えながらも、いいことがあったからもう祇園に働きに出さなくても良いのだよ、と言われて一瞬小躍りする場面、夫婦の別れで「お軽、待て」と言われて「あい」と駆け戻り勘平にすがる場面など、愛情の強さと女心の機微を強く打ち出すお軽でした。

7段目、祇園一力茶屋。目隠し鬼に興じる由良之助は吉右衛門。その相手をする仲居と太鼓もちの大群(20人以上!)が、次々とピンクと水色の斜め麻の葉模様の暖簾を掛け分けて登場する場面は圧巻。
塩冶家に仕えた3人の侍が、由良之助の真意をただしに登場するも、敵を欺くことに徹底する由良之助、なかなか腹を割りません。侍のひとり竹森喜多八役の中村松江は端正な容姿で目を惹きます。しびれを切らした竹森たちが気色ばむのを押しとどめるのが足軽寺岡平右衛門。
平民ながらも主君に忠義を尽くしたいと熱望する好漢で、洗練されてはいないが真っ直ぐな人柄、という役どころ。黒の嵩高い衣装と勢いのある髪型が必ずしも細身の仁左衛門に似合っているとは言えないが、この人の”荒川の佐吉”的、人の良さと下町的なキップの良い人情深さが沁み出して、彼ならではの平右衛門。

顔世御前からの密書を子息力弥から受け取り、密かに広げるも、隣の2階で風に吹かれて酔い覚ましのお軽が手鏡を使って盗み読み。縁の下ではスパイ斧九太夫が密かに上から垂れる文をチェック。
この場面は舞台ならではの面白さ。
落ちた簪の気配でお軽に気づいた由良之助。2階から梯子を使ってお軽を降ろし、じゃらつきながら文を読まれたと知ると身請けを持ちかけ席をはずす。
梯子を怖がる様の色っぽさ、身請けの後は3日で自由にしてやると言われ、恋しい勘平のもとに帰れると有頂天になり、「3日じゃぞえ」と何度も確かめる可愛さ。
6段目の女房姿とは打って変わって薄紫に紅葉の裾模様の着物の襟元の反し襟に覗く紅色が艶っぽく、前で結んだだらりの帯は水色に金糸で破れ麻の葉の刺繍、艶やかで廓の女らしくありながらも勘平一途の心根が垣間見えるお軽。

一人になっていそいそと家族への文を準備するところに、現れたのが平右衛門。久しぶりの兄妹の対面。きれいになって、と良く姿を見せておくれと言う兄に「こうかえ」としゃなりとポーズを決めて見せたり二人の掛け合いの面白さ。由良之助の真意に気づいた兄が妹を手にかけようとする場面、勘平の最後を聞かされてあまりの衝撃に癪を起こして狂乱の玉三郎と介抱する兄。状況を理解し、今度は自ら兄の手にかかって自害する覚悟を固める妹、と息のあった2人の急展開で息をもつかせぬ場面が続き見ごたえのあるシーン。

あわやというところで、事情を見ていた吉右衛門が制止。
お軽の手を取り、縁の下の斧九太夫の成敗に手を貸させ、兄にはかねてから願書を何度もつき返していた東下りの供を許し、忠義ながら悲劇に散った勘平ゆかりの2人に報いる。

密書を受け取って後、それを読むまでに、斧九太夫の誘いの酒宴で、仇討ちの意志を確かめるための一種の踏み絵として、判官の命日の逮夜にあたる日に由良之助が生臭ものの蛸をクチにさせられる場面があるのですが、ここで仲居や幇間が「見立て」遊びを披露。
人間海苔巻きで、「恵方巻き」の見立てが客席の喝采を浴びていました。節分ですものね



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2 コメント

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Unknown (ポンチ姐)
2007-02-05 23:55:24
mariaさん、久し振りの歌舞伎ネタ(笑)。私、本日(5日)昼の部のみ見てきました。忠臣蔵の通しを見るのは「『討ち入り300年』だった2002年以来です。今回は9段目<山科閑居>がでませんねぇ。私的にはここ出して欲しかった{ラブ}

2部は最終週に行く予定です。やはり「忠臣蔵」は芝居の王道だなぁ~と
感じました。昼の部の由良之助は幸四郎でしたが、う~~~む・・でごさいますです{げっ}

「勘平腹切」はいろんな「型」があって、菊五郎のは「音羽屋型」として有名で「二枚目の色男の死」と言えるでしょう。仁左さんの勘平は義太夫に明るい仁左さん「考案」の「仁左衛門型」とうも言うべきでしょうか。
私も10月に見て完成度の高さに感心しました。「勘平」ってこういう人なんだなぁ~~と改めて思いましたよ!

余談ですが、松嶋屋は一家で義太夫が大変上手く、義太夫狂言(原作が文楽の芝居)は常に義太夫を良く読み込み、役の「性根」をそこにたずねているようです。

義太夫狂言として有名な「熊谷陣屋」の熊谷も仁左さんのは独特。団十郎とも吉右衛門とも違い、文楽の影響を受けた「仁左衛門の熊谷」でした。

「七段目」この前は団十郎が平右衛門でおかるは玉さん。細身の仁左さんの平右衛門も楽しみにしていまぁ~す!!
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Unknown (maria)
2007-02-06 05:01:37
ポンチ姐さま

ようこそお越しくださいました{ラブ}
そうですか、後半にご覧になるのですね。そういうかたもいらしてネタバレになったらどうしましょ、と思いつつ書いていたのですが、なんといっても忠臣蔵ですから、ネタバレも何もございませんわよね(爆)

幸四郎さん、宮本さんもいらいらした、とかおっしゃっていたような・・・。
由良之助って日本の男性の理想像、だそうなので演じるほうも大変でしょうが。難しいものですね。

10月の勘平は本当にドラマチックでしたね!
ジェットコースターのような悲劇なのですが、浅葱の式服の明るい美しさがそのまま勘平という人間の業を現しているような、不思議なせつなさがありました。
今回のある意味正当派の菊五郎さんの勘平を見て、あぁ、(従来のイメージの)忠臣蔵ってこんな感じだったかも、と逆に思ったことでした。
仁左衛門さんには、独自の「型」(松嶋屋の解釈)、がありますよね。家によってやはり得手とするところはそれぞれでしょうが、松嶋屋さんは義太夫なのですね。ふむふむ、勉強になります{メモ}

7段目のお軽と平右衛門の掛け合いは是非!お楽しみにしていらしてください!
わたくし、玉三郎と仁左衛門の並びは、その美しさも愛しているのですが、なんといってもコミカルな掛け合いの息の合い方が絶品だと思うのでこの段は本当に楽しめました{ハート}
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