新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

ケネディー新大使の扱いを誤るな

2013-11-22 16:26:37 | コラム
アメリカの一定以上の階層における女性の実力を心得よ:

駐日アメリカ新任のケネディー大使に関するマスコミ報道を見ていると、何か勘違いをしているようだと気になっている。馬車で宮中で天皇陛下に信任状を提出に向かわれた際の報道の仕方と、沿道の群衆を見ると、芸人か俳優と見まごうばかりの扱いである。奇妙で恥ずかしい。アメリカの上流階層とまでは言わぬまでも、ビジネスの社会においても、実力ある女性をあのようには扱わぬものだ。

1970年後半に、アメリカに短期駐在の経験がある英語力が高い商社マンと共にノースウエスト(現在のデルタ航空)でシアトルに向かった。彼は「久し振りに噛みつくようなスチュアーデス(当時の名称)の英語の機内アナウンスを聞いて、アメリカの女性の男を怖れない厳しさを思い出さずにはいられない。緊張する」と語った。

私は一般的に我が国のマスコミか男性方は、アメリカにおける男と女の在り方の違いを聞いてはおられると思っている。だが、それでも男女平等とでも言うか、アメリカの女性の男性に対する姿勢と対抗意識(とでも言おうか)が我が国のそれとはかなり違っていると経験されていなくとも聞いてはおられるだろう。だが、具に聞いておられたとは思えないのだ。これだけは彼らととも何年間も一緒に仕事をしてこなければ、知り得ないものだと言って誤りではあるまい。女性などと侮っては大変な目に遭うと保証しておく。

大手企業の本社機構にいる我が国の総合職に匹敵する仕事をこなしている女性には、一流私立大学の修士号を持っているプライドが高い実力派もいれば、四大卒であっても下手な男性では抵抗できないほど高い能力で仕事をこなしている者が多い。こういう女性たちは悪い表現をすれば、「男性何する者ぞ」とばかりに挑んでくるから、男性側も余程緊張感をもって臨まないと、ついていけない事態が生じる。

更に、名門か良家出身のMBAでも取得してマネージャーの称号を持って責任範囲が広い判断業務をする仕事をしている女性などと組めば、常に追いまくられている感じがして、ペースを合わせていくのは容易ではない。言葉遣いから文法に気を配る必要があるのだ。

ケネディー大使はIvy League最高の名門校・ハーヴァードを出られた後に同じIvyのコロンビア大の法科大学を経たエリートの弁護士である。ニュースで見る限りでは穏やかなか語り口だが、名門の出の有力者であるから、仕事の面では少しでも忽せにすることなどなく、素早く命じたことの正確な結果を求めてこられても何ら驚くには当たらないと思う。ましてや、大使のような激職では決済される事案だけでも毎日いくつあるのか見当もつかない。周囲が何処までついて行けるかの問題でもあるのではないか。

普通の日本の会社における女性の管理職に求められることとはかなり次元が違う膨大な範囲の仕事を、大使は24時間単位でこなして行かれねばならないと私は思って見ている。「キャロラインさん」などと、そこいらにいくらでもいるようなアイドル歌手の動向を伝えるような視点で大使を見るべきではない。

W社の大きな本社ビルで早朝にまず最初に電気がつき、最も遅くまで誰も帰らないのが上席副社長(senior vice president)以上からCEO兼社長のオフィスがある最上階の5階だった。民間企業でこれであるから、大使自ら"I represent the United States."と言われた駐日大使の職がもっと激務であっても、不思議ではない。我が上司だった副社長は朝7時には出勤し、ごく普通に夜の8時や9時まではオフィスにいたものだった。

私の新大使の仕事振りがどうなって行くのかなどとは想像もつかない。だが、あの穏やかな語り口からは帰かえって厳しい進め方ではないのかと、経験上も想像してしまう。我が上司などは尋常ではないやり手で、部下には厳しく何か命令すれば直ぐに"Where is your result?"と迫ってきたが、苛斂誅求するタイプではなかった。だが、知る限りのアメリカの女性の管理職は一切の譲歩せず、妥協を許さなかった。この辺りがアメリカの優れたビジネス・ウーマンの凄さである。

私はほお社機構の女性に何か要求する場合には、「何時までに答えて貰いたい。出来ない場合はその理由と何時なら答えが出るかを折り返し連絡せよ」と言う方式で進めていた。彼女らからも同じ要求が来ていた。万一、こちらからの返信が遅れれば遠慮会釈なく追求された。そのように遅滞なく進めるのが、あるべきビジネスライクの在り方だ。ケネディー大使を「単なる名門出身の女性弁護士さんであろう」などと簡単に認識してはならないと思っている。