新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

高層マンションの火災

2015-03-03 13:27:40 | コラム
10年ほど前の経験を回顧すると:

目下、各テレビ局が競うかのように千代田区営の25階建て高層アパートの20階での火災の危険性を採り上げて報じている。当アパートも築27年の25階建てで、当方はその13階に住んでいる。建築様式は回廊式というのかアトリューム(エイトリアムだが)だか定かではないが、真ん中が抜けた形である。この火災の件は以前にも採り上げたが、この機会に採録してみよう。

2004年か2005年だったかに12階の1号室で洗濯機の乾燥機から発火したと、住民が大慌てで報じていたそうだ。当方は鳴り響く緊急警報のベルの音に「また例によっての誤作動だろう」とタカを括って、外に出てみることすらしなかった。だが、余りにもベルの音が続くので、やおら外に出て驚いた。黒煙が12階から立ち上り、既にエレベータホールへの防火扉は閉まっている状態だった。その向こうの非常階段は使えないのだった。これは当然の処置であると後刻知り得た次第だが。

非常階段はもう一箇所あるとは解っていたので、逃げ道があるのは承知していた。しかし、室内に戻ってぬれタオルを鼻に宛がって野次馬宜しく見下ろしていたが消防車も来る様子がなく、12階の住民の方々が振りかける消化器も一向に効果が出る様子がなかった。そこに至って漸くこれは容易ならざる事態だと認識した頃に、館内アナウンスが避難を勧告してきた。

防火訓練は毎年行われていたせいか、13階以上の住民は粛々と非常階段から下に向かっており、何ら混乱もなく1階のホールに集合出来た。先程、テレビで所謂専門家の解説に聞けば、火災発生の階以下の住民は敢えて非難する必要はないとのことだった。1~2時間?経った後だっただろうか、鎮火したとのことで避難民は解散してエレベータで部屋に戻れた。

ところが、帰宅して驚いたことに鼻に当てた濡れタオルで防げたと思い込んでいた煙というか火の粉(粉塵?)で鼻の中は真っ黒だったのだ。実際に煙を見ていただけで被った記憶もなければ、吸い込んだ気もしていなかった。だが、野次馬根性で見ていただけでこの吸い込み方では、実際に煙に巻かれた場合にどれほど危険であるかを、イヤと言うほど知り得た貴重な経験となってしまった。

詳しく言えば、当方は4号室で1号室とはかなり離れていると信じ切っていた油断があった。煙は建物の中の中空の部分を煙突のように使って、相当な速度で広い幅で上昇していたのだったのだろうと思わせてくれた。思うに、黒煙以外は目に見えぬ間に、我が鼻の中に侵入したのだろう。この辺りにも火災と煙の恐ろしさがあるのではないのか愚考する。

だが、あの千代田区営住宅の火災を見ていると、20階には梯子車は届かなかった。当アパートでも事態は変わるまい。であれば、消防と消防車は如何に対応するのだろう、13階以上での火災の際には。第2の非常階段は8号室のところだ。即ち、8号室で出火し黒煙が上がれば一体どうやって避難するのかなどと考えながらテレビを見ていた。

結論的に言えることは「火事の際には、燃えさかる炎以上に煙を怖れよ」とでもなるのだろうか。