新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

3月3日 その2 トランプ大統領の政策に思うこと

2017-03-03 13:36:05 | コラム
何処までご存じなのだろうか:

私はトランプ様は家業としての不動産業界には精通されていたでしょうが、海外の事情と言うべきか、貿易関連の実態と実務には疎いと信じ切っております。恐らくはこれから経験されて学習されるのでしょう。

私はアメリカの会社に在籍し多くのビジネスマンと交流し、更にある程度の数の一般人とも触れ合いました。中でも国の内外の事情にある程度以上通じていた経験者たちからは、我が国を同盟国や重要な(敢えて英語にすれば)“customer country”と見るよりも、「多額の出資をしてある重要な子会社」と具体的に言わないまでも、頭の中にはそういう認識があるのではないかとの感が深かったのです。

トランプ様自身がどれほど我が国のことをご存じかは知りませんが、既にご進講申し上げるべき側近乃至は関係筋からは伝わっていると思います。また、経験上も言えることで(北欧の多国籍企業T社の副社長だった論客のHK氏も同じことを言われましたが)マスコミなどが「知日派」乃至は「親日派」と持ち上げる人たちの我が国についての知識は往々にして浅薄か皮相的なことが多いのです。

そういった経験から考えても、そもそも輸出国ではないアメリカが何処までトランプ大統領とその政策を盛り上げていけるかかは、黙って見ているしかないのかも知れません。だが、あのPrime Newsで小野寺氏が言っていたように、必要に応じてあらゆる手段を講じてトランプ大統領に「我が国から見た世界の貿易の実態と我が国が何をやってきたか」を聞いて貰うようにすると良いと思うのです。

私には未だにトランプ大統領の言うことには「知らぬが故の強さ」があるとしか思えないのです。知らないからこそ、これまでの態勢を打ち砕くようなことが言い出せるのだと思うのです。オバマ前大統領は矢張り輸出入については知らずに就任し、ある程度を実体験した後は輸出入に関しては言わなくなったと思います。私は個人的にはアメリカは国際的な貿易国ではない、内需依存の国なので強気なことが言えるのだと疑っています。

トランプ大統領の政策批判

2017-03-03 07:29:18 | コラム
大統領には未だ学習すべき余地が残っているのでは:

施政方針演説の批判はしないと言ったが、矢張り一言指摘したくなった。

あの演説でも重要な部分を占めていたことの一つに「雇用」=jobとその増加があると思う。兎に角“job”を増やすことを強調しておられた。その点ではメキシコとの国境に壁を建設することだけを捉えても、“job”は増えるだろうと思うのだ。トランプ大統領は海外に工場を建設せずにアメリカ国内に工場を設けるか海外から戻せと言われている。

私は海外から戻そうと何だろうと、いきなり工場が建設出来て翌日からでも新規の雇用が生まれるものではないと思う。先ずは我が国とは違って価格が安い土地を購入し設計から着手して、新工場が出来上がるまでに数ヶ月あるいは何年かを要するだろう。その間に事務要員や労働組合員を雇って遊ばせておくことはないだろう。即ち、新工場建設投資計画が直ちに明日からの雇用の増加とはならないと思うのだが。

それだけではない。何人かの専門家が既に指摘しておられたが、アメリカの失業率はオバマ政権の下に4%台の低率にまで改善されているのである。そこに、現時点で考えても、いきなり新規の人の需要が増えた場合にそれを賄うだけの「職がない新規のjobに当てはまる人」が残っているのかなという単純且つ素朴な疑問も感じてしまう。もしも既に職がある人が異動していけば、そこには空席(opening)が生じてしまうのではないか。

私は部外者というか素人だから感じるのだが、大統領は新規のjobを増やすことを強調しておられるが、その間に企業のリストラや倒産や撤退や業界再編による失業者は出ないという想定なのだろうかと考えてしまう。即ち、プラスがあればマイナスもあるのは考慮されていないのではないかということ。

同様に疑問に感じたことを言えば、TPPやNAFTAを嫌って2国間の話し合いによるFTAをお好みのように聞こえる点だ。TPPだって参加各国が批准すれば発効という段階に漕ぎ着けるまで何年を費やしたか。2国間であればもっと簡単に短期間で締結出来るだろうとお考えだったならば甘いのではないかと思わざるを得ない。2国間でもTPPと同様に利害が絡む業界が同じ数だけあるのだから、話し合いはそうは簡単には進まないと思うのは間違いか。
第一、TPPと違って交渉を進める相手個別であり、数カ国を相手にして同時進行とは行かないのではないか。

仮に我が国だけを考えても、TPPではなくなった以上、米だの牛肉だのという農産品というか一次産品は高率の関税が残ったままなのだ。それを再び各個撃破でやり直さねば、売りたかったというか買わせたかったものが残ってしまうままだ。それだけではない特許関係だの知財だのという項目別の交渉もせねばならないのだが、それらを相手国別に交渉するのは簡単な作業ではないという気がする。

FTAでは、各国との折衝を何時始めるお考えか知らないが、TPPに参加していた国全部との交渉が終わるまでに何年かかるのだろうか。そこまで考えてと言うか読み切って離脱宣言をされたのだろうか。私には矢張り海外との商いがどういうものかを知らずに選挙キャンペーンと独断的理想で打ち出された政策ではなかったと思えてならない。「これがアメリカの政策だ。呑まない貴国が間違っている」で済む交渉事ではないと思うのだ。