新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月29日 その2 段ボール箱の消費は景気の鏡

2017-08-29 13:45:49 | コラム
レンゴーの大坪清社長が語った:

29日の日経新聞に大坪清社長のインタビュー記事が掲載され「段ボールの使用量は景気の鏡」だと語られたそうだった。この説は確かにその通りだと思うし、私は長年「製紙産業の景気回復は一般経済の復調から最長で半年遅れることもあるが、紙パルプ産業の動向は景気のバロメーターである」と唱えてきた。即ち、大坪社長の説と同じだと言うこと。

そこで、一般経済と紙パルプ産業、就中製紙業界の景気の関係を改めて考察してみよう。実は、2005年にウエアーハウザーがアメリカの紙パルプ産業界の一般の動向に先駆けて、全米でも最大級の規模を誇る非塗工印刷用紙(上質紙のことで、我が国では屡々模造紙と言われているコピー用紙のような白い紙)事業部門を分離独立させたのだった。すると、世界最大の製紙会社、International Paperも1年遅れだったかで塗工印刷用紙(アート紙のような紙)事業部門を売却してしまった。

この現象をどう解釈するかと言えば、既にアメリカでは凋落の傾向著しい新聞用紙と同様で、この大手二社は印刷媒体(紙媒体)がICT化の急速な普及に脅かされているので、印刷用紙の将来性は危うしと見て、早めに手を打ってきたのだった。更に言えば、大手スポンサーは印刷媒体ではなくインターネット広告に移行していくと見切ったということ。即ち、経済の先行きが製紙産業の近未来を暗示していると読んだのだった。

ウエアーハウザーはその時に、矢張り全米最大級の段ボール原紙と箱の事業は維持するとの声明を出していた。その理由は「段ボール箱はおよそ全ての産業界から包材としての箱の需要があるし、箱の需要の動向からアメリカの景気の消長を判断する貴重な資料となるので、手放す意思はない」ということだった。即ち、大坪社長の見解と同じであると解るだろう。

この辺りをより卑近な例を挙げて説明すれば、家電業界を例にとって新型の4Kテレビとやらが爆発的に売れれば、それに伴って段ボール箱の需要も増大するというようなことである。また、夏場に缶入りのビールが良く売れれば、段ボール箱の需要も伸びるのである。ここを称して「景気の鏡」と言われたのであろう。

但し、段ボール業界が抱えているだろう今後の課題は「段ボール箱を置き換えるような新たな包装材料が現れた場合に如何にして防ぐのか」であろう。段ボール箱の難しさは一度需要家や最終消費者にまで商品が届けられれば、そこで御用済みとなって後は古紙業者による回収を待つのみなのである。製造業界から見れば、何としてもかかる包装材料のコストを引き下げたいと思うのは当然であろう。この辺りのコスト問題に段ボール業界が抱える難しい問題がある。だが、本稿はそういうことを論じる場ではないと思う。

話を印刷用紙に戻せば、確かに景気が回復してくれば、毎朝配達される新聞の折り込み広告も増えるので、小売業界もやっとそこまで競争が出来るところかで復調したかと解るのだ。だが、新聞の月極め購読者は減る一方のようだし、出版物の伸びは芳しくなく、需要の動向の変化が明らかで、紙の本も伸び悩んでいると聞く。これは景気の問題ではなく、世の中の変化をイヤと言うほど見せつけてくれているのだと 解釈している。何れにせよ、紙の需要は減少傾向にあり、景気ではなく「時代の変化の鏡」となっているのだ。

嘗ては3,000万トンを超えていた我が国の紙・板紙の生産量はここ数年間2,600トン台に低位安定している。だが、それでも中国とアメリカに次ぐ世界第3位の製紙国の座は守られている。と言うことは、一般経済の成長率は鈍化しても、それなりに紙の需要が復調してきたと見ても良いのかと、密かに楽観しているのだ。だが、先行きが明るいとは未だ考えていない。


Jアラートに思う

2017-08-29 11:30:26 | コラム
初めてJアラートを見た:

8月29日の朝6時2分過ぎに突如としてテレビの画面が変わって「北朝鮮がミサイルを発射しました」とJアラートが出た。一寸意外なというか予期せざる時期の発射だったので、危険範囲に挙げられたいくつかの県名を見ても緊迫感はなかった。だが、5時58分に平壌から発射されたのであれば、最早我が国の上空を通過の時刻かと思っていた。換言すれば、発射後の4分では遅いのかと危うさを感じたが、早期の警告であるとは認識していた。

あのように我が国の北部を通過するのでは、既にDPRKが警告したグアム島の周辺を狙っていないのは世界地図を見ても明らかなので、金正恩の意図が那辺にあるのかは想像も出来なかったが、単なる新たなmissile の試射かと思えば納得がいくのかとも考えていた。

私はこの何時果てるとも見えないDPRK の一連の発射とトランプ大統領の Twitter を駆使した口撃による「チキンレース」を見ていて思うことは、トランプ大統領の強硬姿勢はそれなりに評価すべきだとは思う。だが、あの金正恩委員長を(嫌な表現だが)所謂上から目線で攻めるのは、金正恩に要らざる刺激を与えているのではないかと密かに危惧している。

それは、金正恩委員長はかの中国の暴走の帝王・習近平よりも、国家主席に就任した時期が早いので、「俺の方が格が上だ」と自認しているのであり、トランプ様の上から目線は彼の自尊心とプライドを傷つけているのだとの説を見た記憶がある。これがその通りであれば、あのTwitter口撃は火に油を注ぐような行為ではないのか。尤も、トランプ様も世界最大且つ最強の国の大統領という誇りを思い切りお持ちだろうが。

話を元に戻そう。私は戦時中に疎開先で自宅を空襲で失い、中学1年の頃には平塚の空襲の際に焼夷弾が雨あられの如くに降っていく様子を見ていた。また、B29が神奈川県の上空を飛んでいくのを何回も見たし、相模湾に炎を上げて墜落するのも見に行った覚えがある。だが、子供心に「俺の周辺には爆弾は落ちない」と確信していたのだった。その妙な信念が21世紀の今になっても残っており、missileの被害は受けないだろうと思い込んでいる。

だが、アメリカ対DPRKの対立の様子を見れば、今やそのような楽観を許す事態では無いと思っている。それに、アメリカは核の傘で我が国を守ってくれるが如きの思い込みがある。しかし、DPRKの missile がアメリカ領に落下せずに我が国の何処かかを狙ってきた際に、アメリカはその報復としてDPRKを爆撃に行くのだろうか。このように我が国が被害者となった場合の取り決めがどうなっているのかと、一瞬不安に感じた。また、この場合我が国は自衛の為にDPRKを攻めに行っても良いものだろうかとも思い悩んでいた。

私は、Jアラートの画面を見て、我が国の危機感は何時具体的になるかは、予断を許さない事態であると感じていた。また、トランプ様の今後の出方次第では、決して安穏に過ごしていられない時が来ているのかと思った。そこに、菅官房長官の記者会見があったし、総理も囲み取材を受けておられたので、一時的な安堵感は得られた。安倍総理、小野寺防衛大臣、宜しくお願いしますよ。