新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

IOCのジョン・コーツ調整委員長

2019-11-03 14:45:06 | コラム
「ライス・ウオーキング」って何のこと:

方にオーストラリア人独得の訛りというかアクセントを論う気はないが、IOCのコーツ調整委員長のこの発言を聞いて「アレッ」と感じた。正直に言えば、あの複雑なようで単純な使命を担って来日されたコーツ氏の表情が私にはかなり傲慢に見えたので、矢張りヨーロッパ人で固めた(とばかり思っていた)IOCには、こういう人物がいるものかと思って眺めていた。ところが、それまでは字幕だけで音声が流されなかった同氏の発言を聞くと「マラソンとライス・ウオーキングを札幌に移す」と言っていたのだった。明らかにヨーロッパ人の英語ではないのだ。中には“rice walking”などという競技があるのかと訝った人もいたようだ。

そこで早速Wikipediaに訊いてみた。すると「John D. CoatesはChairman, Coordination Commissionとあり、オーストラリアのオリンピック委員会(AOC)の会長にして弁護士」とあった。嘗てはボートをやっておられ、矢張り選手のご出身だったようだ。敢えて解説すれば、コーツ氏は“race walking”をオーストラリアやニュージーランド及びイングランドのロンドンの一部にある訛り(London cockney)で、“a”を「アイ」と発音する為に race が「ライス」になっていたのだった。

発音よりも何よりも意外だったのは、ヨーロッパの一定の階層以上の人たちで固められているとばかり思っていたIOCの委員に、大洋州の人物がいたという事実だった。そういうことが認められているというか許されるのであれば、我が国からも何も選手上がりでなくとも良いから、外国語が堪能でスポーツ界の事情に精通した有能な人材を送り込んで、IOCの内部や会合で思い切り発言させて、我が国の意向や立場を明言できてIOCの決定に反映できるようにしたらどうかと考えた次第だ。

今回の札幌移転の件でJOCの会長が何らかの意見を表明したとも聞いていない。これでは立場は弱くないか。小池都知事が冒頭で英語で語っておられたのは聞こえたが、私はもっと突っ込んでも良かったのではないかとすら感じていた。森組織委員会長も最初から「逆らえない」というようなことを言っておられたようだが、「受けざるを得ないとは思うが、斯く斯く然々の点で極めて遺憾である」くらいを述べても、「決定事項」だったのであれば、何も失うものはなかったと思う。だがしかし、もしかして報道されていなかった場では意見は述べておられたのかも知れないが。

私は在職中でも余りオーストラリアの方とは交流がなかったが、明らかなことは全てのオーストラリア人がこういう発音をする訳ではないと承知していた。だが、以前にオーストラリアの首相がごく当たり前のように“nation”を「ナイション」と言われるのも聞いたし、オーストラリア独得の挨拶“Good day, mate.”が「グッド・ダイ・マイト」となるのも実際に聞いている。これはオーストラリアという国がUKからの移民で構成されていたからだと認識している

だが、我が事業部で国内と日本以外の海外市場担当の“sales and marketing”担当のマネージャーのニュージーランド人はそういう発音をしていなかったし、彼のオーストラリア人の奥方は聞いているだけでウットリとなるような美しいクイーンズ・イングリッシュの発音をしていた。同じ国内でも地域によっては訛りも放言があるということだと思う。

ここから先は私の勘ぐりだが、コーツ委員長はバッハ会長の意を帯して我が国の抑え込む為に来られてのであって、IOCを代表しても我が国の意見をIOCの反映できる立場にはおられない「お使い」だったのだろうということ。だからこそ、取り付く島もないとしか聞こえない「上から目線」的な高圧的なものの言い方だったのだと思えば、妙に納得できるのだ。

今や方々で専門家も野次馬も言い出しているように「札幌に今からどうやって選手村を作るか、ホテルでも借り切るのか」等々の実務的に処理すべき案件が山積している。中には「札幌の8月は今や東京よりも涼しくはない。IOCは何処まで精密に調査したのか」という現地の人も出てきた。全体の費用だって大変なことだ。であるから、上記の指摘に戻るが、IOCの委員になって堂々と我が国のというか自説を展開する人物を送り込んでおけば事情も変わっていただろうし、あそこまで居丈高に「これは決定」などと言わせずに済んだのではないかという気がするのは誤りか。

参考資料:Wikipedia