新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2019年の世界の紙・板紙の需給は

2021-04-04 11:20:05 | コラム
不況下でも新興国はプラス成長を維持した:

毎年アメリカの調査機関であるRISIによる世界の紙・板紙の2019年の統計が、やや遅れ気味に発表された。その統計によれば、消費量は対前年比△1.8%の4億1,507万トン、生産量は同じく△1.8%の4億1,246万トンとなっていた。近年としては比較的大きなマイナスで、この結果で2年連続で前年割れとなってしまった。

以下にRISIが発表した統計に基づいて、世界の主要国の生産量を採り上げて見よう。第1位は相変わらず中国で1億866万6千トンで、対前年比△1.2%、第2位がアメリカで6千912万5千トンで△4.2%、第3位が我が国で2千539万トンで△2.6%、第4位はドイツで2千207万トンで△2.7%、第5位は新興国と言えるインドで1千544万8千トンで、+1.5%となっていた。第6位は矢張り新興国のインドネシアが1千296万7千トンで成長率が+3.4%を記録していた。韓国は7位に入っていたが△1.6%、ブラジルが8位だったが+1.0%と新興国の勢いを見せていた。

これらの他に高い成長率を見せていたのが、トルコの461万2千トンで+4.4%、ベトナムの411万5千トンで+12.9%があった。また、マレーシアは184万3千トンと小規模ながらその成長率は6.6%となっていた。一昨年の生産量であっても、先進国では紙・板紙の生産量が減少していたことは、矢張り不況と印刷媒体の衰退の傾向が明らかに見えていると思わせられた。

私が毎年このRISIの統計の中で個人的に楽しみにしているものがある。それは上位30ヶ国の1人当たりの名目消費量である。これには世界最大の経済大国であり製紙国でもある中国は未だに登場しないのである。中国は19年でも78.0 kgで△2.0%だった。そこで先ず上位10ヶ国を採り上げておくが、30位のコスタリカでも99.6 kgであり、中国を28%も上回っていた。従来は紙・板紙の消費量が一国の文化・文明の発展の度合いを示すと言われていたが、ICT化が進んだ現代では先進国は軒並みマイナス成長を続けている。

第1位は前年同様にベルギーで268.0 kgで△8.6%、第2位はスロベニアが順位を一つ上げてきて264.6 kgで+7.9%、第3位は第2位から陥落したドイツで235.3 kgで△4.3%、第4位はオーストリアで227.0 kgで△4.0%、第5位がアメリカで205.5 kgで△4.2%、第6位は我が国で202.7 kgで△0.4%、第7位に韓国が入って189.9 kgで△2.4%、第8位はフィンランドで172.0 kgで△8.0%、9位には11位から上がってきたイタリアが入って169.4 kgで△1.7%、第10位は12位から上がってきた台湾の168.9 kgで△1.2%だった。

以下、オランダ、ニュージーランド、ポーランド、チェコ、UAE、デンマーク、カナダ、スウェーデン、エストニア、スペインと続くが、この中で成長を見せていたのがUAEの15.4%とスペインの1.0%だけだった。30位までとなると、リトアニアが133.0 kgで+9.0%、クロアチアが128.2 kgで+6.0%だったのが印象的だった。私には英国が123.4 kgで25位であり△3.6%だったのは、先進国の中での遅れに見えて仕方がなかった。

参考資料:紙業タイムス社刊 Future誌 21年4月12日号