新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

菅・バイデン会談を何故「上手く行った」としたか

2021-04-19 11:10:54 | コラム
私はあの会談は“success”だったと思っている:

奇異な事を言うと思われた方は多いかと危惧するが、私はあの菅首相の初の海外の首脳とのトップ会談は恙なく進行したと報じられていた以上「予定された議題通りに進行して、何らの齟齬を来さなかったし、揉め事も起きなかったのは『上手く行った』と表現して良いと思ったいたまで」なのだ。敢えて英語の“success”を使ったのは、普通に通用している訳語の「成功」よりも、実感では「予定通り上手く行った」という風に捉えれば良いと思っているから。

ご存じの方は多いと思うが、事一国の首脳が出会って会談するともなれば、事前にシェルパ(Sherpa)と言うか事務方が先方に出向いて、詳細に議事と討論の内容(agenda)を打ち合わせをして会談の準備を整えておくのだと承知している。実際の会談もそれに従って進むのであり、余程の事がない限り予定外の議題をどちらかの首脳が持ち出す事はないのもだと理解している。その限りにおいては、事務方の設定通りに進行したのだと解釈している。通訳担当官にした所で、事前に首脳から何を語られるかを聞かされてる場合もあるかと勝手に想像している。

我々ビジネスの世界の事にも触れておこう。我が事業部の場合では副社長兼事業部長が出張してきて大手の取引先の担当常務か役員が参加されると事前に話がついている会談の場合には、日本駐在マネージャーである私は、事前に担当者から課長か部長とお目にかかって、極力「何を言われたいか」を聞きだして、その報告書を本部には連絡してお句のが重要な仕事だった。同時に、我が方からも来訪の目的その他をある程度以上に予告するようにしていた。彼がやってくれば限られた時間の中で、多くのお客様の首脳と懇談するのであるから、そこまでやっておいて会談を効率的に進めるよう準備をするのは当然だ。それが出来ないようでは日本駐在マネージャーがいる意義がない。ましてや、菅首相の場合は一国の総理大臣である。議題の不備や時間の浪費が許される訳がない。

重ねて言うが「上手くいった」と表現したのは、このように事前に先乗り部隊が先方と打ち合わせした議題通りに進行し、何の問題も起きなかったのだと考えた上での事だった。

但し、悲観論者の私には気懸かりな事柄が残っている気がするのだ。この会談で我が国とアメリカの同盟が強化されたとは申せ、何時まで経っても憲法第九条にすがっている反日勢力がいる為に尖閣諸島一つ自力で守れる態勢が整っておらず、アメリカ側が尖閣に安保条約が適用されると宣言されて喜んでいるばかりでは頼りないと看做されるのではと思ってしまう。また、新疆ウイグル問題で中国制裁に加われず、集団的自衛権の行使も不安定な我が国を、バイデン大統領が何時まで本気で「重要な同盟国」として重要視するかなと考え込んでしまう。北朝鮮との拉致被害者の件も、アメリカ側の協力を求めるのも結構だが、自力で解決せよと突き放されはしないかとも気になる。

菅首相がファイザーのCEOブーラ氏(Dr. Albert Bourla)と電話で会談し9月までの完納を求めた事にした所で、「何で総理大臣が」と見られはしなかったかと不安にはなる。尤も、5兆5~6千億円の売上高を誇る世界第2のファイザー社だが、アメリカの会社ではCEOと雖も実務の状態を承知しているはずだから、我が国の総理大臣が交渉された相手としては妥当であると考えている。余談だが、我が社のCEOジョージ・ウエアーハウザーはリセプションで挨拶をしに来た大手取引先の系列会社の常務さんをフルネームで呼んで握手して感激させた。アメリカの経営者はこれくらいの事はしてみせるのだから、ブーラ会長が担当部門に「日本向け出荷を急げ」と指示された事を期待したい。