円安の影響他:
時が経つのは早いもので、私がこれまでに何度も取り上げて語って来た商社マン(輸出入の専門家)は定年延長も終わって、先頃引退していた。彼と親しく付き合うようになったのが1997年だったのだから、あれから25年も経っていたのだった。
だが、彼の感覚は現職時代の儘なので、色々と尋ねてみた。何といっても私の最大の関心事は「極端な円安の下にあって、輸出入はどうなっているのか」だった。彼は「在職中ではマスコミ報道にもあったことで輸出は全般的に動いていた。だが、事が輸入となれば話は別だ。特に紙パルプ産業界では絶望的だったし、パルプの相場が高騰しているので、メーカーは苦しめられている。
国内市場ではコスト上昇分(原材料とエネルギー価格の高騰)を製品の価格に転嫁もままならず、無理に生産するよりも売れる分だけを作っている状態。印刷用紙の需要が衰退している状況は、近頃頻繁にテレビCMを流すようになったTOPPAN(印刷)が一言も「印刷」に触れていないことが物語っている」と聞かせてくれた。
「印刷(紙)媒体の衰退は何も今に始まったことではないが、現在のようにパルプ価格が紙の価格よりも高いのでは」と思わせられる事態では、製紙産業の苦境は察するに余りある。「円安」問題はこれ以上余り深く語り合わずに終わった。
次に私の興味を惹いた話題は、UKでのインフレーションだった。話は本筋から外れるが、後輩の一人がロンドンの系列会社に転勤になったのだが、そこの社長はその人物よりも数年後の入社だったこと。その後輩がロンドンで暮らすようになって驚かされたことがあったそうだ。それは強烈なインフレーションで、手近な例ではラーメン一杯が円換算では¥3,500にもなっているので、日本からインスタント麺でも送って貰いたい思いだとメールが来ていたそうだ。
彼が強調したことは「マスコミ報道では余り取り上げられていないが、インフレは何もアメリカだけのことではないのだと認識すべきだとのこと」だった。彼ともある程度考えが一致したことは「ロシアのウクライナ侵攻で欧米の諸国がロシアに制裁を科した結果が、エネルギーコストの上昇等の原因となった上に、アメリカではFRBが繰り返して利上げしたためでもあるだろう」だった。某元大使が「返り血を浴びる制裁を科すのは得策ではないのでは」と指摘されたのを思い出した。
次は彼が失業保険の手続きにハローワークに行ったときの話だった。これは、私が嘆く「スマートフォンの包囲網」にも似た事だった。そこでは、窓口の係員と話し合う前に、指定されたQRコードをスマートフォンに読み込んで、指示されたように登録しなければならぬようになっていたそうだ。当然のことながら、私が1994年2月に恐る恐る訪れたときとは大違いだ。
そこから話がマイナポイントに飛んで行って「モバイルSuica」になり、私が持っているらくらくスマートフォン(アンドロイド)を早く止めて、息子さんたちも言われるiPhoneのか型落ちにでも切り替えないと不便だと忠告された。そこで、先ほど取り上げた「モバイルSuica」を自宅であらためて検索してみたが、どうも私の手には余る気がしたのだった。この他にもdポイントというかdカードのこともあるのだが、ドコモショップに行かねばと考えただけで、億劫になる。
元商社マンは「マイナポイントの手続きに区役所に行かれるのは良いが、良く準備して置くこと。即ち、そうでないと『また、面倒くさい高齢者が来た』と窓口の係員に思われないように」と警告されてしまった。何の事はない、彼にもスマートフォンで包囲されてしまうことになったのだった。因みに、新宿区役所の係員には「記名式スイカでJREポイントを受けられるようにして来て下さい」と教えられたが、これからして良く解っていないのだ。「高齢者は辛いぜ」の時代だ。