新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

大谷翔平の活躍ぶりを考える

2023-07-05 08:42:43 | コラム
凄いとか素晴らしいなどという形容の仕方ではとても及ばない:

彼がMLBに移ったときに「類い希なる素材である」と形容した。だが、「どれ程、類い希なのか」は解らなかった。その素材が投手として伸びるのか、打者として成長するのかは見通せなかった。彼が“two-way”であそこまで行くとは予測しきれなかった。

だが、今日の彼の凄まじいばかりのtwo-wayでの成績を見ていると、恐らくあの類い希なる素材をアメリカ式の合理的且つ科学的なトレーニングで鍛えれば、日本人(あるいは東洋人?)もあそこまでの高いところまで行けるものだと考えるようにしている。もしかして「別次元に入った選手かも知れない」とすら思う。

即ち、もしも(と言うか、仮に)あのまま日本ハムに止まっていたとすれば、今日のような大谷翔平にまでは成長していなかっただろうという事。尤も、大谷君は睡眠時間を充分に取り、食事に気を配り、飲酒をせずに、他人の目が届かない場所で充分に合理的且つ近代的な体力強化のトレーニングを怠りなくやっているのだろうと推察している。

私は「このようにトレーニングと練習をやっています」と、他人に見せるものではないと思っている。また、アメリカ式に考えれば、彼はそうやって年俸に見合うだけの成績が残せるように「普通」の努力をしているのだろう。

彼は恐らく「今日の試合では良い働きができてティームが勝った。今夜は美味い酒が飲める」というような考え方は1mmもしていないのだと思う。これを以て「大谷君は偉い」と思うのは大間違いで、高額の年俸を取ってティームの大黒柱であれば、当然の事なのだと、私は信じている。

私は今日これまで多くの競技で、色々な優れた選手を国の内外で見てきた。自分でサッカーをやってきてコーチの真似事をした経験もあるので「その選手に未だ伸びる余地が残っているか、いないか」くらいは読める自信がある。

だが、大谷君は「現在の絶好調を何時まで維持できるのか」であるとか「現在は偶々状態が良いだけで、何時かは落ちるのか」であるとか「未だ大きく成長を続けるのか、限界があるのか」は読み切れない、というよりも予想しようがない。

希望する事は「このまま負傷する事も何らかの事情で故障する事もなく、あと数年はtwo-wayを続け、何時の日か何れか一方だけを選択してMLBの歴史の中で存在した事がなかった大選手に成り遂げてから引退して欲しいのだ。

私が最も心配している事は「この世では『何時まで良い状態は続くものではない』という原則のような事がある点」なのだ。これは「今、好調な会社が永遠に好調な訳はない」という例が数多くあった事を考えれば解ると思う。

それにつけてもマスコミ報道は「良く分かっていないな」と何時も苛立っている。彼らは何かといえば「エンゼルス(奇怪なカタカナ語の表記だ)の大谷翔平選手がMLBで日本人初のタイトルを取った」とか「日本人初の連続で月間MVPに選出された」などといって囃し立てるのは、理解というか認識不足だと思う。彼は今や「日本人初」などという括りで表現すべき存在ではないと見るべきだ。

MLB随一の選手が偶々日本人だったというだけの事だと解っていないようなのだ。MLBの30球団の選手の半分が日本から移ってきた者で占められていれば、「日本人選手として最初の記録」といって囃し立てても良いだろう。だが、現在何名が在籍しているのか。もう好い加減に「海外で褒められた」とか「受賞した」と言って喜ぶのを止めろ、我々にも「喜びなさい」と言って押しつけるのは止めろと宣告してやりたい。

連日、NHKが放映するエンジェルスの試合を熱心に見ている訳ではないが、気になる事もあるので、幾つか取り上げてみよう。それは「なおエ」が示すように大谷いくら働こうと努力しようと、エンジェルスは負けるのだ。その負け方を見ていると「相手の投手は塁上に走者がいて大量失点になりそうか、勝敗を分けそうな局面では、殆ど打てそうな投球をしないというか、勝負は避けている」のだ。実質的な申告敬遠にして打たせないのだ。

まともに勝負を挑んでくる場面はといえば(間違っていたらご免なさいだが)「走者無し」か「その場で打たれても勝敗に影響しない」か「大量にリードしているか、されている場合」なのである。最早、一頃のようにインサイドを見せた後でアウトサイドに流れるスライダーで空振りを取る配球は通用しないと解ったようだ。だからと言うべきか、大谷がホームランを打って帰ってくるときは概ね1人である。だから、ホームランが多い割には打点が少ない気がする。

大谷翔平が偉いと感心しているのは「このような攻め方をされていても打率も維持できているし、どんな配球をされてもホームランにしてしまう凄さ」である。但し、アメリカと言うべきか南アメリカとすべきか知らないが、MLBの投手たちはNPBの投手のように相手打者の欠陥を突く投球ができないので、屡々「そんなところに投げれば大谷は打つさ」のような失投ではなく、それしか投げられない、打って下さいという投球が来れば、大谷は逃さないのが凄い」と思う。

西日本では、とても梅雨とは言えない大雨が降り続き、大きな被害が出ている事を始めとして、好ましくないニュースが多い今日この頃である。そういう時に、大谷君の働きぶりは、好みの表現ではないが「癒やし」であり、陳腐な言い方をすれば「一服の清涼剤」であろう。

そうであるのならば「もっと正確に深く掘った大谷の凄さと、ひたむきに大谷式野球に精進している様を伝えたらどうか」と思う。「日本人選手初」などと、戦後の荒廃の時期に通用したような外国進出を「凄い」とか「偉い」と言って喜ぶ姿勢から脱却して欲しいというのは、私だけか。