新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

大谷翔平に思うこと

2023-07-16 07:55:00 | コラム
大谷翔平にだって駄目な日はあるさ:

昨15日は何気なく合わせたNHKの地上波でエンジェルスの中継をやっていたので、正直なところ久しぶりに「二刀流」とやらを見る機会になった。そこで、昨日のような出来が悪い日の大谷を見た上での「大谷翔平論」を展開しようと思う。

先ずは彼の顔色:
テレビの画面で見えたのだから表情とする方が適当かもしれない。昨日の彼の表情はとても暗く、何時ものような自信のほどを示す顔色にはなっていなかった。私には「何か何処かに問題でもあるのか」と疑いたくなる弱さが見えていた。それでもエンジェルスのホームゲームなので、1回の表は投手・大谷は無難に切り抜けてはいたが、あのWBCで見せたような気迫はなかった。

昨日の投手・大谷翔平:
私は彼がMLBに行った時には「攻守両面(「二刀流」では意味をなしていないと思う。英語はtwo-wayだ)その類い希なる素質を活かす最善の道は「投手」なのかなと見ていた。だが、エンジェルスは彼の希望を入れたのだろう両面を選んだ。その選択は少なくとも今日までは誤っていないと言うに十分な結果を出している。凄いし、たいした物だと感心するしかない。小さな声で言うが「良い気になって彼の類い希なる才能の浪費だけはしないでくれ」なのだ。

昨日のアストロズの試合だけを論じれば、非常に出来が悪かった。アナウンサーたちは三振を取ることに夢中だが、昨日のように死球の後に四球を二つも与えたような制球難には一言も触れなかった。大谷は明らかに苦しんでいたし、まともにストライクが取れていなかった。私には「彼のように力強い投球と凄い変化球で抑えていく投手は、調子が上がらず危機に立たされた時にかわしていくような投球術はできないのでは」と思って見ていた。

私が見る投手大谷翔平は「力強い160kmに迫る速球、誰も打てないだろうと思わせるスライダー(WBCで最後にトラウトを切って取ったような凄い変化)、スプリット、遅い投球等を自分の思うままに組み立てて、相手打者を『打てるものなら打って見ろ』とばかりに全力で圧倒していく投手」であり、日本の投手のように相手打者の欠陥を突いていく投球術の持ち合わせはない」のだ。だから、昨日のように制球難で自信がない時は打たれてしまうのだと思って見ていた。

ということは「29歳にもなってしまい、MLBのような条件の下で5年もtwo-wayで成績を残してくれば、如何に彼がアメリカ式トレーニングで体を鍛え上げてあっても、あと何年やっていられるのかと考えてしまう。即ち、力投派に徹するのではなく、かわしていくような投球術(技巧)をも身につけていって欲しいと思うのだ。ダルビッシュ有は自分から「速球派の投手ではない」と認めて、投球術の投手として活路を見いだしていると思う。

打者・大谷翔平:
昨日のような万全の調子ではなくても、1回の裏のようにボール気味の高めの投球に手を出して、詰まり気味ではあってもレフトの前に落としてしまうような力強さ(スゥイング)を発揮して見せてくれた。彼のスゥイングの速さは大袈裟ではなく「前人未踏」だと評価している。あのWBCのイタリア戦で見せた「私の目には何が起こったのか見えなかった速さ」は驚異的だった。気が付けばボールはライト側のスタンドに消えていた。

だが、昨日の大谷はあのWBCの時の大谷翔平ではなかった。それでも確かベースヒット(日本で言う「シングルヒット」のこと)を2本は打っていた。私はこの彼独特のスゥイングの速さは、投球ほどに好不調の波が少ないと見ている。しかも、大谷はボール気味の投球でも、体勢を崩されても、ホームランにしてしまうほどの凄いスゥイングができるのだ。相手投手は未だ大谷をかわす術の持ち合わせがないと見ている。だから、打者大谷の方が安定していると思う。

Two-wayを何時まで続けるのか:
そんなことは、それこそ「神のみぞ知る」事だが、私は後2~3年は続けられるかと思っている。それは29歳という年齢も考慮すべきだろうが、大谷が「外食に出た覚えがない」と言ったこと、ヌートバーの食事の誘いを断ったこと等々が示すように「飽くまでもストイックにプロとしての生活態度を維持している上に、アメリカの近代的かつ合理的なトレーニングを欠かさず続けている以上、そう早い時点で崩れることなどあり得ない」点を評価したいのだ。

しかし、噂されているようにFA宣言して何処かに移籍するにしても、何時かは投手か打者のいずれかを選択してMLBを代表する大選手としての地位を維持する時が来るのではないかと思うのだ。しかし、MLBだけではなく、アメリカでの殆ど全ての競技では「スカウティング」を中心に置いた相手の研究する技術が非常に発達しているので、何時かどこかに大谷翔平を研究し尽くして、有効な対策に打って出てくる球団が現れるかも知れないのだ。

今の大谷は嘗てのイチロー君と似た点があって、決して常にWorld series出場や優勝を狙える強豪球団にいる訳ではないので、ある意味で思い切り彼の特長を活かして活躍できるのだと見ている。だが、もしも噂されているようなナショナルリーグのDodgers(ドジャースではない「ダジャース」だが)にでも移籍すれば、two-wayではなくなる気もする。私の結論を言えば「これから先数年はtwo-wayでの活躍で我々を楽しませてくれるだろう」となる。