新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

マイナンバーカードと健康保険証の合体

2023-07-09 08:01:56 | コラム
あれは現場を知らない政治家と官僚が考えたことでしょう:

かかりつけの歯科の受付に、あのマイナンバーカードを読み取る機器が置かれていた。先生に「矢張り、これを置かれたのですか。国立国際医療研究センター病院では未だですが」と無意識に振ってしまった。先生は穏やかな口調で「ここまでは、無料でくれるのです。だが、メーカーが10社ほどあるので、医院やクリニックで異なるでしょう」と言われた。さらに「実は、ここから先が大変です」と詳しく語って下さった。

それは「この歯科では未だカルテは手書きであり、コンピュータは導入されていないので、何れは配線をしてコンピュータにカルテを入力せねばならない。それだけでも大変な負担になるが、ここは歯科だけだから凄く複雑な作業にはなるまいが、時間的にも経済的にも負担になる。これが国立のような大病院になれば診療科が多いので複雑になるよりも、人の手と設備が大変だろうと見ている」ということだった。

即ち、「全診療科のカルテを患者ごとに(過去に遡って親コンピュータに入力管理して)マイナンバーカードに反映できるようにせねばなるまい。その作業を各科ごとにするのか、病院全体で纏めるのかという作業になるのだろうから、外来の患者が健康保険証確認のカウンターで照合して貰えるように、全患者のデータを整備しなければならなくなる。どのようにして、そういう態勢を整えるかなど想像できないのだ」と言われた。

そう言われて考えてみれば、私は国立国際医療研究センター病院(NCGM)には2006年の循環器内科を始めとして皮膚科、消化器内科、泌尿器科、外科(現在は大腸肛門科)、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科に罹っている。これだけ全部のカルテの内容をカードに移管するのだろうか。他にも現在の東京山手メディカルセンターにも大腸肛門科と内科にかかっている。市中では眼科と耳鼻咽喉科と外科クリニックにも通院している。

それだけの情報量を各病院と医院とクリニックで、別個にデータ化して置くのだろうか。だが、政府が唱えているように全部がカードに落としてあれば、新規の所に行っても病歴も投与された薬の内容も解るだろうが、各個バラバラに訪問して入力して全部入れるように歩けというのかと思うに至った。

歯科の先生は、この点を捉えられて「こういう現場で如何なる作業をして、態勢を整えればマイナンバーカードが、政府が唱えるような健康保険証の機能を備えるようになるのか、現場の実務の負担を考えたことがあるのかと疑う。総理が言われるような形に来年秋までになるのは無理で、延期せざるを得ないと思う」と結ばれた。私は尤もなことだと承った。

NCGMなどでは電話で何か紹介しようとすれば、先ず交換台に診察券の番号を告げないと、音声ガイドに繋がらないようになっている。即ち、交換台で診察券の番号で患者本人だと確認できるようになっている。もしかして、そのデータに各患者の診療の履歴が含まれていれば良いのだが、保険証確認の窓口マイナンバーカードを受け付けないのは、そこまでには至っていないことかと見ている。

毎日1,000人の以上もの外来患者がやってくる病院だ。マイナンバーカードの保険証に対応できるだけをデータの整備するのは、容易ならざる時間と人の手を要するのではないだろうか。外来患者4,000人超と聞いたことがある順天堂大学病院などでは、もっと大変なのかも知れないなどとも考えた。

岸田総理も河野大臣も「大変なことに踏み込んでいった」と認識できているのだろうか。厚生労働省は何処まで現場の実情を掌握して認識できているのだろうか。