新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月23日 その2 アメリカのビジネスマンの「契約」の考え方

2023-09-23 14:24:05 | コラム
イチローの年俸の契約には「ホームラン王を取った場合に」との条項が入っている:

1990年代に入っていたと記憶するが、日本の市場で最も後発ながら大いなる成長の可能性を秘めた取引先があった。そこで、副社長と「数量値引き(=volume discountという)」というインセンティブになる条件を提示して、速やかな成長を促進させようと企画した。この計画には輸入窓口になっている商社も賛成していた。

この取引先は急成長を遂げてきたが、年間の原紙の輸入量は1万トンに満たず、日本全体の6%程度の市場占有率だった。そこで、私は伸びしろの限度一杯だと思う15,000トンを上限にしたらと副社長に提案した。ところが「それでは駄目」と一蹴したのだった。彼は「上限を30,000トンに設定せよ」と言うのだった。「それは余りに非現実的では」と反論した。

しかし、副社長は全く聞く耳を持たずに、「仮に来年度中に何らかの条件が整って、3万トンに達することがあるかも知れない。その場合に、その時の割引率を設定してなかったのでデイスカウント無しであるとでも言うのか」と決めつけた。その場で「成る程。アメリカ人は契約条件の設定をこのように考えているのか」との教訓を得た。3万トンが非現実的であるかないかよりも、そうなった場合のことに配慮して条件を設定すべきなのだ。

後刻、この経験を同僚たちに語ってみた。殆ど全員が「そんな話の何処か珍しいのか。ごくありきたりの話だ」と笑ったのだった。中の1人が言うには「あのイチローの毎年の年俸の契約には『もし、ホームラン王のタイトルを取ったら何%増額するか』との条項が入っている。それは、彼がホームラン王のタイトルを取る可能性がないとは言えないからだ」と教えてくれた。アメリカのビジネスマンたちは「契約をこのように考えている」という貴重なレッスンだった。


NPBのクライマックスシリーズに一言

2023-09-23 07:18:25 | コラム
「今年は省略しても良いのでは」という意見が:

何事にも精通して一家言がある元商社マンは「今年はクライマックスシリーズ(CS)を実行したら、タイガースとバッファローズが可哀想では」と指摘していた。その意味は「これらの2球団だけで日本シリーズを開催せよ」なのだ。極めて尤もな意見であると受け止めた。言うまでもない事だが、両リーグを制覇した両者は共に2位を10ゲーム以上も引き離した圧倒的な優勝だった。

一方では、セントラルリーグで3位のベイスターズを懸命に追っているジャイアンツがタイガースに何ゲーム離されているかを見れば、もしかしてジャイアンツがファイナルシリーズでタイガースと対戦することにでもなれば、「それって矛盾していない」と言いたくなる人は大勢出てくるのではないだろうか。パシフィック・リーグでも3位ホークスをイーグルスが急追している。

私とても、NPBが最終的なシリーズを盛り上げて興行的にも成功させて、NPBの人気の高めようと企画したシリーズであることくらいは認識している。だが、シリーズに出場する条件をもっと細部にまで取り決めておけば、今シーズンのような事態が発生した時に解りやすい姿勢で対応できたのではないかと言いたいのだ。設定された条件の詳細まで明らかにされていないが、「このような事態が発生した時には」という設定がされていたのかという疑問である。

例えば、「優勝ティームが2位を10ゲーム以上引き離した場合」を想定して、優勝ティームのみが日本シリーズを戦うと定めておく、あるいは「優勝ティーム以外の2か3位のティームの勝率が5割に達していなかった場合」を想定して、その時は出場資格を与えないと規定しておいたら如何かという事。選手たちは常に「野球では次に何が起きるか解らないのだ」と言っているではないか。何事でも「もしも、こうなったら」を想定しておく必要があるのだ。

という次第で、元商社マン氏の意見に話を戻せば、今季はタイガースとバッファローズの関西のティーム同士の日本シリーズにすれば、それ相応の人気が想像以上に高まるので、興業の面でも大成功になるのではないのか。どちらが優勝しても関西地方での優勝記念大売り出し等で景気振興の役に立つことは間違いないだろう。両球団とも百貨店がグループ内にあるのだから。