新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月21日の「報道1930」より

2023-09-22 07:33:46 | コラム
TBSも捨てたもんじゃないかと:

話題が「神宮外苑の再開発計画」と承知していたので、このICOMOSから横槍を入れられた案件を、松原耕二がどのように裁くかに大いなる関心があった。正直に言えば「この問題の実態がどのようなものかを全く知らなかったので、寧ろ勉強になるか」とすら考えていた。実際には大いに勉強できた次第だった。

大袈裟に言えば「知らないことばかり」だったのには、恥じ入るべきかとすら考えさせられた。同時に、この件については余りに実態を伝える報道が少なかったのではとも認識できた。非常に微妙な問題だと知らされた点は「政教分離」で明治神宮(内苑)と外苑を管理・運営せざるを得ない立場になった明治神宮がその費用を捻出せねばならなくなったので、再開発に乗り出したという事だった。

1994年1月末までは青山一丁目の交差点にあった事務所に19年も通っていたし、その後には伊藤忠商事とも縁があったので、あの銀杏並木の美しさと、そこに並ぶ洒落たレストランも利用していたのだった。再開発計画の一部でその並木をいくらかでも伐採するかのような報道があった時には「由々しき問題だ」と受け止めていた。だが、不勉強にしてあの慣れ親しんでいた広大な外苑を管理運営しているのは「お国」なのだろうと思い込んでいた。

だが、昨夜この番組に出演された専門家の方々のご意見と解説に加えてTBS側の調査結果などを聞けば、宗教法人(なのだろう)明治神宮が内苑と外苑にある膨大な数の樹木を維持管理するのに100億円の年収の10%を要するので、その経費を賄う増収が必要になったという事のようだった。その為に100年も経過し古物化した神宮球場を作り直し、広い軟式野球場をテニスコートにする等々の再開発案になったのだそうだ。

初詣なることはしない主義の当方は、明治神宮には2~3度踏み込んだだけであるが、あの鬱蒼と茂った広葉樹の森を誰がどうやって管理しているのかなという程度の関心を持つようにはなった。それは明治天皇が祀られている以上「お国」の仕事だろうと勝手に決めていた。とは言っても、長年都民というか国民というのか知らないが、慣れ親しんできた景観を変えて高層建築まで導入することが適切かどうかと訊かれれば「疑問では」と言いたくなってしまう。

昨夜の「報道1930」には、都心に存在するあれほどの面積の維持・管理・運営を、宗教法人に任せて(丸投げか?)いた政府というか国家には再開発案についても「関知せず」で良いものなのかなと考えさせられた。個人的には、変えられてしまうのには賛成できないが、あの時代遅れとしか言いようがない神宮球場の建て直しには賛成したい。だが、あの外苑に高層建築という案も景観の破壊という前に突飛すぎて何と言って反対すべきか迷ってしまう。

ICOMOSが意見を寄せてきたのも、昨夜の専門家の解説を聞けば故無しとも思えない。明治神宮と三井不動産等に全権委任ではなくて、政府からも「政教分離」は一時封印でもして、環境と景観についての何らかの建設的な見解を差し挟んでも良くはないかと考えるに至った。我が東京事務所に駐在していたアメリカ人は遠来の客を案内した先は、あの絵画館と外苑と明治神宮だった。彼は言った「浅草や銀座だけが東京で見るべき場所ではない」と。

「松原耕二も偶にはやるじゃないか」という辺りが、昨夜「報道1930」を見ての偽らざる感想なのだ。