新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

大谷翔平と山本由伸の働きぶりの考察

2024-04-07 07:40:12 | コラム
大谷と山本の心配をしたらどうか:

今朝程は6時のNHKのニュースを見ていたら、突如としChicago Cubs対LA Dodgersの野球になってしまった。そう言えば山本由伸が先発だったと思っていたら、いきなり2塁打を打たれた後では鈴木誠也を歩かせた挙げ句に無死満塁と大ピンチ。結果的にはカーブ球を活かして三振で切り抜けたが、解説の岡島も言っていたように、あのインサイドに入って行くボール気味の投球を審判がストライクにとってくれたので助かったようだと見た。

大谷は中継開始前にヒットを打っていたそうだが、2打席目は未だしゃくり上げとしか見えないスゥイングで外野フライだった。私の目にはナショナル・リーグに早くから在籍している鈴木誠也の方が伸び伸びと野球をやっているが、大谷は何かに悩んでいるのか、異なるリーグの雰囲気に慣れておらず、何処となく固くなっているかのように見えて仕方ない。

本稿は大谷と山本の出来不出来を論じるのが狙いではない。言いたい事は新聞もテレビも彼らに気を遣った報道の仕方をするのではなく、M LB史上でも希なる高額な契約をDodgersと結んだ選手である点と、その契約から生じる異文化の国アメリカならではの「契約と期待に見合うような仕事が出来なかった場合に何が起きるのか」という心理的な負担と、ファンの掌を返すような罵声と叱責の厳しさを報じても良くはないかと言いたいのだ。

我が国では何かと言えば「アメリカは契約社会で云々」と聞いた風な事を言い募る方々がおられる。だが、その「契約社会の苛酷さ」の実態というか内容が詳細に報じられていた例を殆ど知らない。これには色々な表現方法があるが、先ず言える事は「高額であろうと少額であろうと、契約に見合わない働きしか出来なかった場合には、遠慮会釈無い厳格なペナルティー(と敢えてカタカナ語にする)が待っている世界なのだ。

しかも、彼等の思考体系は二進法であるから、ビジネスの世界では「年俸据え置きか減俸か、あるいは厳罰である契約通りの馘首」に進んでしまうのだ。MLBならばレギュラーメンバーから外されるか、マイナーリーグ行きになるのだろうし、契約条項に「破棄」でも入っていれば、アッサリと適用されかねないと思う。

いきなり馘首とか契約破棄とは厳し過ぎるのではないのか、温情はないのかと言われそうだ。だが、決して厳しいのではない。それが契約であり、決めた事を実施する事を二進法の思考体系の世界では躊躇わないのだ。そのように契約した事、即ち期待され、そこまで出来ると自ら申し出て成約したのであるから、約束した通りの成績を上げられなかったらペナルティーがあるのが社会通念の世界なのだ。それを承知せずに迂闊に踏み込んでいってはならない世界なのだ。

我が国には「板子一枚下は地獄」という古き言い習わしがある。我が社のアメリカの企業社会に精通していた北アメリカ駐在10年の経験者だったジャパンの副社長のN氏は常に「この俺がクビになる事は99%無いと確信している。だが、何か一寸した問題でも生じた時には、残る1%が急に99%に膨れ上がってきて、大袈裟に言えば夜もろくに寝ていられなくなる」と言っておられた。まさしくその通りだと思う。

私が1985年10月に仕事で当時の上司が運転していた車が貰い事故に遭い、私だけが頸椎損傷、肋骨2本骨折、部分的記憶喪失という重傷を負い、回復から仕事復帰まで6ヶ月を要した。その事故の3ヶ月後に私を「股肱の臣」(英語にこのような表現はないが)と呼んで重用していた副社長は「直ぐに復帰できないのならば辞めされる事も視野に・・・」と言い出したそうだ。こういう考え方を取るのがアメリカなのだ。

言いたかった事は「もしも、大谷翔平がMLBの事務方が予想した打率0.266でホームラン18本に終わったら何が起きるのか」なのである。山本由伸にした所で、先ほどの2回までのような不安定な投球では「大丈夫かいな」と勝手に心配してやっているのだ。テレビも新聞も大谷が僅かホームランを2本打ったくらいで、我が事のように喜んでいても良いのではないと強調したいのだ。彼等は目に見えない大きな重荷を背負っているのだ。

共に喜びましょうと伝える前に「文化欄」ででも「アメリカと我が国との契約の観念(=文化)の違い」をキチンと解説しておいて貰いたいのだ。「大谷も山本も良くやった」と諸手を挙げて喜ぶのは、シーズンが終わって50本で3割打てて、15勝でもしていたときのことにしら如何か。今朝の山本の緊張しまくった表情が何を物語っているかを読んで、確りと報道して欲しいもの。

結局は「文化比較論だった」と理解して頂ければ、幸甚に存じる次第。