日本でもアメリカでも重大な選挙がある:
先ほど何気なくNHKにチャンネルを合わせてみたら、アメリカ大統領選挙について、私にとってはジョセフ・クラフト氏以外は知名度が高い権威者が意見を述べておられるところに出くわした。そこで「あーそうだった。オリンピック以外にも我が国には重大な話題があったのだ」と気が付いた次第。この件とメダル獲得を心配するよりも、国内には他にもっともっと重大なことがあると思えてならない。
何処かで先頃回顧した気もするが、昭和30年(1955年)7月以来1994年1月にリタイアするまでの間に営業職以外に経験がなかったので、「営業というか取引の場では如何なる事があろうとも、政治に関する話題を持ち出してはならないのが鉄則である」と教えられたことを金科玉条として守り通してきた。この姿勢はアメリカの会社においても変えることはなかったし、アメリカ人たちとそういう事を論じあった記憶もない。
だが、リタイア後の20年も経ってしまった頃に、ドナルド・トランプ氏と言う私にとってはトランプタワーに住んでおられるとかいうこと以外には何らの予備知識もなかった人物が「泡沫候補」と誹られながらも出てきたのだった。私は選挙期間中から現実に大統領に就任されてからも、その経済・貿易等々の内外の政治についての不勉強というか基本的知識の欠如振りには呆れる前に「この人に大統領が務まるのか」と疑問に感じていた。
それよりも何よりも、20年以上もの間アメリカの企業社会を支配していたのだと思わせられていた経営者たちに接する機会があったので、トランプ大統領のswearwordまで使ってしまう言葉遣いの下品なことには、それこそ「あり得ないことだ」と驚愕させられていた。あれやこれやで、私はトランプ大統領の非常識なこと、実務について無知なことを、感じたままに批判した。
だが、トランプ大統領に在任中に、その粗野で品位を欠いている言葉遣いは、彼の岩盤の支持層である所謂プーアホワイトと彼自身がworking classと言われた労働組合員やそれに準ずる労働者たちに向けたものであると解ってからは、本来は民主党の支持基盤であった者たちを自陣に取り込む為の言うなれば斬新な手法だったと解った。
即ち、嘗てUSTRのカーラ・ヒルズ大使が認められた「初等教育を満足に受けていないか、識字率も低い」階層の者たちにも解りやすく語りかけていたのである。彼等支持者たちはトランプ氏を信じ、トランプ氏に示唆されれば(当人はしていないと否定されたが)バイデン氏の当選を認めさせないように国会議事堂にも乱入したのだと、私は見ていた。
そのトランプ氏は再選を目指して準備おさおさ怠りなく、一時は言葉遣いも穏やかにしたとすら見えた。そこにあの銃撃事件が起きて「不死身のトランプ」を印象づけて指名も獲得した。ところが罵倒してきたバイデン大統領の撤退という予想の範囲内だった事態が生じて、カマラ・ハリス副大統領が後継候補者に指名されるや、悪口雑言で暴言を吐くトランプ氏に戻ってしまった。
「下品な人と事」を嫌う私がもしアメリカの有権者だったならば、一も二もなくハリス副大統領を選択したかも知れない。だが、事はアメリカの大統領選挙であるから、私は何度か取り上げた表現の“It remains to be seen.”という「結果が出るまで待ちます」としか言いようがない。アメリカの有権者たちの中でもインテリ階級にトランプ支持者は少ないのだが、その数はトランプ支持者よりは遙かに少数派である。
先ほど、チラと見た討論会の中で何方かが「アメリカ大統領という地位に女性を選んだらどうなるのか」という意味のことを言っておられた。これをアメリカの女性たちが聞いたら何と言って怒るだろうか。この発言は確か「女性の支持がハリス副大統領に傾きつつある」というのを受けてからのことだったが、外国人である私がこれ以上に云々する必要はない話題だと思っている。
それよりも言いたい事は、我が国は11月のアメリカ大統領選挙よりも前の9月に自民党総裁選が予定されているので、こっちこそが焦眉の急の問題ではないのか。第一に、評判が悪くなる一方と言いたい岸田総理総裁は未だ撤退は表明されていないし、振付師の感が濃厚な木原誠二は「引くことはない」と明言したではないか。
罪なき一般人に聞けば、石破茂氏が常に次期総理(なって欲しい人)の第1位で、次が小泉進次郎氏である。その他には麻生副総裁と菅前総理が推される有力者も目白押し状態だ。現在の我が国が直面する国内外の重要な案件を思う時に、私は4ヶ月も先のアメリカ大統領選挙などどうでも良いとは言わないが、メデイアも我々国民も自民党総裁選に対してより重大な関心を持つべきだろう。「何とか色」のメダル獲得よりもこっちが大事ではないか。