新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

我が国、それとも産業界の劣化か

2023-12-24 07:49:30 | コラム
ダイハツ工業の問題を深刻に捉えている:

このダイハツ工業の問題が大々的に報道され始めて思った事は「国交省、自動車産業界、及び我が国の他の製造業界の経営陣にも奮起を促したい。世界市場における「我が国の信用を毀損しないように」という点だった。

明26日には工場を停止させられると報じられているダイハツ工業が「新車の安全のテストで不正を行っていた」との事件(なのだろう)の報道に接して、我が国の経営の手法乃至は経営者(または中間の管理職)たちがここまで劣化していたのかと、暗澹たる気分にさせられていた。

私は20年以上も「世界に冠たるはず」だったアメリカの製造業が何故没落したのかを、その内部にいて十分すぎるほど見てきたし、その原因も突き止めていた。主たる原因は繰り返し指摘したことで「労働力の質の低さ」であり、折角「世界最高の研究開発能力が新製品を創造しても、それを商業化する技術が劣悪で活かし切れず、我が国だけではなく新興勢力にも追い抜かれてしまった」点なのである。

この「アメリカの『職能別同労働組合』に所属する現場の労働者たちの質が製品の質の劣化を招き、世界市場におけるアメリカの力を弱めてきた」と私は主張し続けてきた。その辺りの問題を1994年に当時のUSTR代表者、カーラ・ヒルズ大使はいみじくも「識字率の向上と初等教育の充実なくしては日本に追いつけない」と、質の問題を指摘されていた。

非常に尤も告発であったが、我が国では素直に「そうか」と信じた方は少なかったと思う。こうだと理解し認識できるようになるためには、じっさいにアメリカの生産現場に入り(とは言うが、一般的には外部の方の見学を受け入れない)、その製品を販売してみない事には分からない事態なのである。

一方、「我が国では労働力の教育水準は高く、その質も均一であり、アメリカと比較する必要もないほど優れているのである。故に品質の点だけを取っても世界市場での競争力が高くなったのだ」と私は確信していた。これは、我が国とアメリカの紙パルプ産業界の現場を見てきた経験と、アメリカの製品を世界で最も受け入れ規格が厳格で、品質に対して過剰なまでに細かい要求をする我が国への輸出を担当してきたから言える事だ。

だが、今回のダイハツ工業や、22年3月に発生していた日野自動車の「エンジン排出ガスの燃費不良問題」や三菱電機等々を見れば、何れも現場の労働力の問題ではなく、その原因は管理職か会社側にあるようにしか見えない。即ち、私が今日まで考えたことがなかった経営陣か、製造現場を管理する役職者たちが関与した案件のようなのである。労働力の質が高いか低いかの問題とは思えない点が、極めて深刻なのではないかと思うのだ。

見方を変えれば、「出来上がってきた製品を規定した通りの検査をせずに、市場に送り出してきた」という事は、市場どころか需要者を欺いてきたという悪質なやり方だという事。これでは、当方が何かと言えば指弾してきた「経営者の劣化」だけではなく、中堅の管理職の質まで危うくなってきたという問題かと思ってしまう。自分たちで作った製品に自信があるから検査を手抜きしたのか、コスト節約か知らぬが、由々しき事態だ。

しかも、ダイハツ工業も日野自動車もトヨタの傘下にある企業である。「世界に冠たるトヨタの管理能力とはこの程度だったか」と、大いに気落ちさせられた。そんな事ならば、労働力の質が低かった方が未だましだ。我がW社では組合員たちの意欲と士気を鼓舞して、世界の何処に行っても負けない製品が出来るように仕上げたのだから。中間の管理職や経営者に、事ここに至れば「そんな事をしてはいけない」と説き聞かせるのか。

私が気になっていたことは、事が発覚してから豊田章男会長がテレビ(だけだったのかどうは不詳)に登場されて謝罪されるまでに間が開きすぎたという点。まさか、事態を確認して会長にまで報告するのに手間取っていたのならば、「何をか言わんや」である。佐藤新社長以下が傘下の企業での実態を把握できていなかったのならば、これはまた別の問題ではないか。

斎藤国交大臣は「実態を速やかに把握して、当該車両はリコールにしたら」と発言しておられた。だが、手抜き検査の車両をどうやって処理するのだろうか。繰り返して言う「国交省、自動車産業界、及び我が国の製造業界の経営陣にも奮起を促したい。世界市場における『我が国の信用を毀損しないように』して欲しい」と。



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