老害と呼ばれるかも知れないが時代遅れの儘で良いかと:
週刊新潮の最新号で石原慎太郎じゃなかった石原壮一郎という人が「老害」を論じておられた。当年とって89歳の自分もそのような問題の標的になるのかと思って読めば、話はどうやら現職の勤め人の方々の事のようだったので、一安心というか少しだけ虚しさも感じていた。と言うのは「現代の出来事に中には簡単に理解というか認識できないし、カタカナ語式にすれば『フォロー出来ない』点が多くなってきて、今更付いていこうと努力するのは無駄な抵抗ではないのかと感じるようになってきたから」なのである。
田口翔という24歳の人が4,630万円を使い切った事が、ここ2~3日大きな話題となっている。この世には色々と理解不能な事件が起きるものだと感心している。その報道の中で、今朝の新聞に「オンライン決済サービスで決済代行業者の口座に振り替えて不当な利益を得た」のが犯罪であるような記事があった。確か、その行為をスマートフォンでやったのだそうだ。その行為が違法かどうかは兎も角「オンライン決済サービス」も「決済代行業者」も何のことかサッパリ解らなかった。
当方は昨年の10月に清水寺の舞台からではないまでも、駅のプラットフォーム程度の高さから線路に飛び降りるくらいの決意で、スマートフォンに切り替えたのだった。この「スマホ」なるものの機能は携帯式のPCに匹敵するくらいのことは聞き及んでいた。だが、現実には未だ電話とあのPCのワープロ機能と比べれば不便極まりない方式で入力して検索する程度のことにしか使っていない。PCの方に馴れているし、使いやすいのだ。勿論、らくらくスマートフォンでも多種多様な機能があるとは承知しているが。
ところがである。馴染みの薬局のポイントカードが“dポイントカード”に切り替わったので、何にも考えずに従った。しかし、それがドコモのカードであり、ドコモから色々なショートメールが送られてきて「あれやこれや」と手続きをしろと命令してくるようになった。そこで、全てをPCと同様に息子に助けて貰うようにした。そのやり方を見ていると、兎に角細かくて面倒で自分では何ともならないと解る。そういう時代に生まれた人たちには何でもないことだろうが、算盤しか計算機がなかった時代に育った者には、何ともならないのだ。
現在人は生まれてからデイジタル化の時代にあるが、デイジタル・デバイド世代の当方にとっては「面倒な時代になったものだ」との感想しかない。いや、息子たちの世代にとって「老害だな」と受け止められっているだろうなと自覚している。先日語り合った商社マンには「らくらくスマートフォンに切り替えるのは得策ではない。それは現在の進歩したアップルその他の器機に馴れた年齢層には『助けてくれ』と依頼されても、古すぎて操作法が不明だから」と言われてしまった。
先ほども触れたことだが、2年ほど前になったことで菅首相が「カーボンニュートラル」と言われたときには「???」だった。「格好付けて英語で言わないでチャンと超後期高齢者にも解るような言葉にして下さい」とお願いしたくなった。これなどは未だ察しがつくが、他にも解り難いカタカナ語や略語っぽい言葉が乱舞しているので弱っている。例えばビッグデータだのMMTだのSDGsだのCSRだのDXだの何のと、他にも未だ多数あるだろうが連日連夜攻め立ててくるのだ。
1~2年前までは何とか付いて行かねばばかりに、我に鞭打って努力してみたが、今では「無駄な抵抗はしない方が良いのでは」と悟りを開いている。それは、「何も付いていかなくても、日常生活には何ら支障を来すものではない」と解ったからだ。だが、マスコミは「マイナンバーカードを取得された方にはマイナポイントが付与されるので、スマートフォンを使って云々」と言っている。このポイントが何処で何の役に立つのかも知らないのに、何処に行けばポイントとやらが貰えるのかは言わないのだ。
このカードが健康保険証にもなると言うが、確かに病院に行けば「ここにカードを置けば」と掲示された器機が置かれている。区役所に行けば手続きが出来るようだが、あの交通の便が悪くて大勢の人が群がっている場所に行けば、COVID-19に狙われはしないかと不安になって、足が動かないし、やり方が解らないときには教えてくれるのかと不安になる。また、家内は4Gの二つ折りの携帯電話には変更したが、それでは何とかポイントは取得できないのかと思ってしまう。
このように、あれやこれやと考え込んでいると、もしかして世間様では「我々のように時代の変化(進歩だとは言いたくないが)についていけていない高齢者を捉えて『老害』となじるのではないのか」と、不安になってきた。今や、迂闊に外食に出掛けると「タブレット」が待ち構えている時代になった。
セブンイレブンではカウンターの中にいる係員は現金に触れないような仕組みになって「あーしろ、こーしろ」と指示するだけの役をするだけになった。これが「良い方向への変化」なのかどうかは解らないが、彼らの都合だけで導入されたとしか思えない制度だ。あるエコノミストだったかは「こういう現金払いを回避する時代になったのだから、どんな少額でもクレデイットカードで支払って、ポイントを稼いだらどうか」と述べていた。「なるほど。それなら時代に遅れた超後期高齢者でも順応できそうだ」と勇気づけられた。