新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

野球の鑑賞の仕方教えます

2022-05-06 09:28:06 | コラム
野球って意外なほど奥が深いのだった:

最早、年齢の他にウイルス感染の危険を考えて野球を野球場まで出掛けて見ることがなくなったが、テレビで見ているだけでも十分に楽しんでいる。先日もフットボール出身者と語り合った際に、彼は「見ているだけでも、野球は最も面白い競技である、但し、フットボールを除けばということだが」と言っていたが、私も同感だった。

解説者:
彼らは「当たり障り」がないようなことしか言わないと思っている。その鑑賞法だが、彼らが言う事には限界があると、予め承知して聞いている方が良いと思うのだ。その理由だが、以前にも取り上げた事で、私と同年齢層にあり往年の東京六大学の野球部の一軍におられた方の解説で、日本シリーズを見ていたことがあった。すると、テレビの解説者が言っていることと非常に違うのだが「現実はそうなっているのか」と感心したし、大いに納得できる内容だったのだ。

そこで「何故専門家のはずの解説者は、貴方のように解説しないのですか」と尋ねてみた。答えは「私のように本当の事を言って視聴者に知らせてしまえば、そのうちに解説者が要らなくなってしまうではないか。彼らが私のような事を言うはずがないのだ」だった。説得力があった。また、甲子園の野球の解説者がその最たる者だが、彼らはほぼ絶対に選手たちを貶さないのだ。その理由は簡単明瞭で「同じ業界の仲間の悪口など言ってしまえば、仲間内の評判が悪くなって居場所を失うからだ」そうだった。だからと言うべきか、堂々と批判していたのは早稲田出身で巨人から西武やヤクルト投で監督を務められた広岡達朗氏と故野村克也氏等の権威者だけだった。

私の好みの解説者が元阪神の抑え投手だった藤川球児だ。彼は過剰ではないかと思うほど、投手の心理状態と打者との駆け引きと打者の心理を詳細に一球ごとに語ってくれる。投手とはそこまで深く考えて、読みに読んでいる人種だったのかと、非常に勉強になるのだ。それに過去の例というか経験を非常に良く覚えているのも凄いと思った。その点では捕手も同様な仕事だと解る。藤川球児は「どういう場合にどのように対応するかの小引き出しを増やせ」と言っているのは尤もだと思う。我田引水になるが、私は「如何なる時にどのように言えば良いか」という表現の小引き出しを沢山持つように」と主張してきた。

投球の種類:
先週だったか、NHKのBSに「球辞苑」という野球を色々な面から独特な手法で掘り下げていく番組を見た。その日は「ツーシーム」の分析だった。かえって解りにくくなるようなことを言えば、これは日本の選手たちがMLBに進出して苦しめられたという「ボールが動くこと」を解明したのだった。即ち、ボールの縫い目に2本の指をかけて投球した場合の変化の解説だった。常連の里崎智也もハッキリとは言わなかったが、我が球界で言われている「シュート」を意図的に投げる技だった。それも、リリースする時の指のかけ方次第では横に動くだけではなく、縦方向に落とすことも可能だとも言っていた。

この他にも「フォーシーム」もあると教えてくれていた。上記の解説者のところで触れたことだが、解説者もアナウンサーも投球の際に一々「今の球はツーシームだった」とか「フォークだった」とかは言うが、どのような投げ方をしたら右打者の内角に食い込んだのかまでは言わない。だが、球辞苑ではこの投球法を得意とするNPBのOBまで登場させて、詳細に解説してしまった。思わず魅入らせられて、その投球への対処法も含めて「野球とは奥が深いものだった」と感服させられた。

その次の日だったか、ヤクルト対阪神の試合に登板した阪神の西勇輝は、このツーシームを得意とする投手だった。いや、それまでの言い方では「シュートボール」投手だった。私はオリックスからFAで阪神に来たこの投手は昨年の不出来を見て「もう終わった投手」だと辛い評価をしていた。だが、この日はツーシームの威力十分で、3点を取られた2回までとは違って、3回以後はパーフェクトに抑えて見せたのだった。

テレビ画面では正確には捉えられなかったが、確かに微妙にシュートの方向に変化したので、ヤクルトの打者はその術中にはめられていた。「何だ。西は未だ使えるじゃないか」と認識させられた「ツーシーム」の威力だった。これは解説者たちが批判する「抑えが効いていない為のシュート回転」とは別のものだと言うことも良く解った。

因みに、アメリカには直球、即ち“fast ball”と、あらゆる変化球を一括りにした“breaking ball”しかないと思っている。この「ツーシーム」は“two seam fast ball”と表記されているので、直球の範疇に入っているようだ。

興味ある現象:
解説者は屡々「交代して守備についた選手のところに打球が行く確率が高い」という。私もその通りの現象が起きるのを何度も見てきた。それは勿論偶然なのだろうが、何故か魅入られたようにそこに打球が飛んでいくのだった。そこに何か科学的な根拠でもあるのかと思ってしまう。守備についているのは投手を入れて8名だが、不思議とピッチャーゴロを見た記憶はない。

私がこれ以外に興味がある現象がある。それは高校野球でもNPBでも起きる事なのだ。具体的に言えば「前日の試合に10点以上か10本以上のヒットを記録したテイームは、翌日の試合では打撃不振となって負けてしまう現象」なのだ。今週では広島が読売相手に12点も取って快勝した翌日には、打線が沈黙して敗戦となった。阪神はその前の週に読売相手に大勝した翌日にはサッパリ打てずに負けていたという具合だ。

NPBはリーグ戦だからまだしも、甲子園では何故か先日の打ち過ぎで草臥れてしまったのか、打ちまくった高校が次の試合でも打った例は少ないと記憶している。この現象は「過労」が原因なのか「前日の好調で自己過信」にでも陥った為なのかと考えている。それとも単なる偶然なのだろうか。

私はバイオリズムなどを余り良く承知していないが、そういう影響もあるのかなとも考えている。また、団体競技でありながら、個人の能力と出来が大きく勝ちと負けを左右する性質があるのが、野球の面白さと奥の深さかなと考えながら見ている。本日は佐々木朗希対千賀滉大の投げ合いがあるようだが、この試合の結果を左右するのは何だろうかという興味がある。二人とも150km超の速球(fast ball)と変化球(スプリット/フォークボール)を得意としている。