新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

個人的に関心と興味がある統計資料

2022-05-18 16:01:30 | コラム
2020年の世界の紙パルプメーカー上位75社:

今頃になって2020年の統計かと言われそうだが、アメリカの専門の調査機関RISIが発行するPulp & Paper Industry誌に20年度のランキングを発表された。自分自身が永年身を置いてきた産業界なので、世界の上位にある紙パルプメーカーがどのような実績を挙げていたかには大いに興味も関心もあるのだ。

しかしながら、残念ながらこの統計には、永年上位10社以内にあったウエアーハウザーは数年前までに完全に紙パルプ業界から撤退していたので、その社名は現れないのだ。何故そうなったのかと言えば、先日グラフィック用紙の項で取り上げたように、アメリカ市場では大手メーカーはICT化とデイジタル化に圧された印刷用紙と情報用紙の将来を、早い時点で見切りを付けていたことを示しているのだ。

このRISIによる統計では各社の売上高を当該年の為替レートでアメリカドルに換算して表示されている。従って、当時の$1は¥109.81だったので、現在のように¥130台にまで円安に振れてしまえば、我が国のメーカーの売上高によるランキングは、大きく下がってしまっただろうと思ってしまうのだ。

「紙パルプ・加工品、商事部門の売上高」による世界の上位75社:
先ずはこの製品の売上高による順位を見ていこう。なお、各社のこの売上高と連結の売上高とは別個に表示されているが、ここには連結は取り上げない。単位は100万ドルで表示されている。

第1位はアメリカのインターナショナル・ペーパーで20,580、対前年比△0.8%となっていて順位には変動がなかった。2位には「専門の紙パルプねーカーではないのでは」と批判する向きもあるアメリカのプロクター&ギャンブルが来ている。売上高は18,364で対前年比+3.1%で前年の順位は3位だった。3位はアメリカのウエストロックで売上高は17,578で△3.8%となっていて、順位は2位から下降。4位には我が国の王子ホールディングスで売上高は12,727の△9.9%となっていて、4位は変わらず。5位にはスマーフィット。カッパホールディングスだが、国籍はアイルランド。売上高は9,742で△5.7%となっていて順位は6位から上昇。

以下、6位にはアメリカのキンバリークラークで売上高は9737の+4%。7位はフィンランドのUPMで9,594の△17.9%。8位は日本製紙で8,299の△3.4%。9位はスウェーデンのイーシッテイで8,211の△6.2%。10位はフィンランドのストラエンソで7,859の△15.4%だった。寧ろ意外だったことは、ここまでに世界第1位の製紙国である中国のメーカーが登場してこない点だった。しかし、玖龍紙業は13位に顔を出してくるのだ。

11位には英国のDSスミス。12位には南アフリカのモンデイ。13位には玖龍紙業、14位にはアメリカのパッケージグ・コーポレーション・オブ・アメリカ。15位にはアメリカのグラフィック・パッケージング。16位に我が国のレンゴー。17位にブラジルのスザノ・パペル・エ・セルロース。18位にフィンランドのメッツア・グループ。19位にアメリカのソノコ・プロダクツ。20位にチリのエンブレサスとなっていた。

75社中の我が国と中国のメーカー:
我が国のメーカーで以下に登場したのは32位に大王製紙。36位に些か疑問がある商社の丸紅。38位に北越コーポレーション。64位に三菱製紙だった。中国では22位に山東晨鳴紙業。25位に中国製紙コーポレーション。26位に山鷹国際。27位に理文造紙。29位に山東太陽紙業。37位にヴィンダ製紙集団。47位に山東華泰紙業。70位に世紀陽光紙業ホールディングスが来ていた。

地域別の分布:
最後に、この75社の地域別の分布を見ると、売上高ではヨーロッパが30.4%、アジアが26.2%、北アメリカが35.9%、中南米が5.9%、アフリカが1.6%をそれぞれ占めていた。

また、紙・板紙の生産量で見れば、ヨーロッパが29.2%、アジアが39.4%、北アメリカが25.6%、中南米が3.6%、アフリカが2.0%となっていて、中国があるアジアが生産量では世界を睥睨する地位にあったようだ。だが、売上高ではアメリカに大きく離された2位であることは、単価が低い紙を主力にしていることが見えてくるのだ。

参考資料;紙業タイムス社刊 FUTURE誌 2022年5月23日号