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自由主義と社会主義の間で揺れる日本(1)

2013-01-30 | ラジオ
なるほど尖閣諸島をめぐる中国との領土紛争は深刻だ。現状、いつ軍事衝突に発展してもおかしくはない。
しかしこの問題が、日本社会の抱えるもっと深刻な一つの課題から目を背けさせるということも、また問題だ。
日本の指導部が、この課題を解決する能力をもたないために、日本は中国に世界第2の経済大国たる地位を明け渡してしまった。すなわち課題とは、経済、社会の正しい発展モデルの選択という問題だ。
近年の財政危機の推移が、既存の経済、社会モデルの長所と短所をめぐる議論を呼んだ。このテーマは現在の日本にとってもアクチュアルなものだ。

日本では長らく極めて安定した経済、社会モデルが行われていた。1955年の自由民主党政権発足に始まる55年体制と呼ばれるシステムのことだ。
社会主義者や共産主義者に対抗するべく、自民党と民主党が合同し、日本自由民主党を結成した。与党となると自由民主党は政権を維持するべく左陣営の綱領を借用し、社会的な公平という思想の実現に着手した。日本で三十数年間行われた、スウェーデンあるいはフィンランド流の社会経済政策は、実りをもたらした。日本に遍く安定と安全が浸透し、多くの人がサラリーマンになることを願うようになった。大企業のもとで落ち着いて働き、完全に見通し可能な人生をたどっていく、というものだ。
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1990年代初頭、安定した経済社会システムは調子を乱し始めた。不動産への投機を基礎とするバブル経済は、果たして日本を停滞させた。
停滞から抜け出るために、型破りな決断と創造的なリーダーシップの発揮が求められた。当初その難しい舵取りを担ったのは官僚たちだったが、目に見えた成果は得られなかった。
2001年、小泉純一郎氏は、社会基盤のラディカルな改造を、また起業精神を広く鼓舞するべく、アメリカの自由主義的モデルにならって経済を立て直すことを試みた。この試みはついに完成を見ることはなかった。
経済活性化の試みは社会階層の分化を進め、国民の不満を買った。そのため小泉氏の後に続いた諸政権は、自由主義的モデルへの移行にブレーキをかけることになった。結果、日本は今日に至るまで、長引く停滞から抜け出すことが出来ずにいる。

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自由主義と社会主義の間で揺れる日本(2)へ続く

1月16日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル