土曜日の午後2時過ぎ。
四谷の得意先での打ち合わせを終え、中央線に乗った。
車内は比較的空いていたので、座ることができた。
車両の真ん中あたりに席を取って、文庫本(万城目学の「鴨川ほるもー」)を読み始めた。
しかし、車両の端の方から、突然の大声が。
「処女時代がさあ~」という品のないだみ声。
そして、「足しかないじゃん! 他に何かあるのか、処女時代!」と叫ぶ。
声の方を向くと、20代後半と30代半ばと思われる男二人が、まるで哀川翔のように足を180度に開脚して、居酒屋の延長のようなノリで、がなりたてていた。
土曜の昼間、2時である。
迷惑という言葉は、彼らの頭にはないようだ。
つまり、完全な酔っ払い。
「ジージージージー」と手拍子を取りながら、座りながら足を開脚したり、閉じたり。
その合間に、癇に障る笑い声が入るから、両手に力が入って、絞め殺したくなる衝動に駆られる。
そして、「処女時代がよー!」とまた下品なひとこと。
「そうだよ、処女時代ぃー! 足しか見せない処女時代ぃー!」
「少女時代」を「処女時代」と言う程度の低さに、あきれ返る。
幼稚園児のほうがまだウィットを知っている。
こいつらは、最悪だ。
そして、醜悪だ。
その場にい合わせた誰もが、殺意を感じたのではないかと思う。
それくらい邪魔で、下品で、うるせえやつらだった。
そう思っていたとき、小学校高学年と思われる女の子3人組が、酔っ払いの前に立ちはだかった。
その中の、真ん中の背の高い大柄な体型の子が、酔っ払いを指さして、言い放ったのである。
「おじさんたち、『ショジョジダイ』じゃないよ『ショウジョジダイ』だよ。『ソニョシデ』だよ。わかってんの! 批判するのは勝手だけどさ、グループ名を正確に言わないと、伝わらないよ」
そして、大きく息を吸って、さらに声を張り上げた。
「日本人として、恥ずかしいよ!」
酔っ払いが、黙った。
静かになった。
私は、小さく拍手をした。
その小さな拍手が、私の人間としての小ささを表していたが、とりあえず胸がスカッとした。
いいぞ! 小学生!
情けない大人を救ってくれて、感謝します。
小学生に負けた日だった。
四谷の得意先での打ち合わせを終え、中央線に乗った。
車内は比較的空いていたので、座ることができた。
車両の真ん中あたりに席を取って、文庫本(万城目学の「鴨川ほるもー」)を読み始めた。
しかし、車両の端の方から、突然の大声が。
「処女時代がさあ~」という品のないだみ声。
そして、「足しかないじゃん! 他に何かあるのか、処女時代!」と叫ぶ。
声の方を向くと、20代後半と30代半ばと思われる男二人が、まるで哀川翔のように足を180度に開脚して、居酒屋の延長のようなノリで、がなりたてていた。
土曜の昼間、2時である。
迷惑という言葉は、彼らの頭にはないようだ。
つまり、完全な酔っ払い。
「ジージージージー」と手拍子を取りながら、座りながら足を開脚したり、閉じたり。
その合間に、癇に障る笑い声が入るから、両手に力が入って、絞め殺したくなる衝動に駆られる。
そして、「処女時代がよー!」とまた下品なひとこと。
「そうだよ、処女時代ぃー! 足しか見せない処女時代ぃー!」
「少女時代」を「処女時代」と言う程度の低さに、あきれ返る。
幼稚園児のほうがまだウィットを知っている。
こいつらは、最悪だ。
そして、醜悪だ。
その場にい合わせた誰もが、殺意を感じたのではないかと思う。
それくらい邪魔で、下品で、うるせえやつらだった。
そう思っていたとき、小学校高学年と思われる女の子3人組が、酔っ払いの前に立ちはだかった。
その中の、真ん中の背の高い大柄な体型の子が、酔っ払いを指さして、言い放ったのである。
「おじさんたち、『ショジョジダイ』じゃないよ『ショウジョジダイ』だよ。『ソニョシデ』だよ。わかってんの! 批判するのは勝手だけどさ、グループ名を正確に言わないと、伝わらないよ」
そして、大きく息を吸って、さらに声を張り上げた。
「日本人として、恥ずかしいよ!」
酔っ払いが、黙った。
静かになった。
私は、小さく拍手をした。
その小さな拍手が、私の人間としての小ささを表していたが、とりあえず胸がスカッとした。
いいぞ! 小学生!
情けない大人を救ってくれて、感謝します。
小学生に負けた日だった。