公共料金を払い忘れたので、深夜あわてて自転車でコンビニに走った。
レジで支払っているとき、不思議な気配を感じて入り口の方を見ると、20歳前後の若者が入ってきた。
顔が赤い。
赤いと言っても、酔っ払っているわけではない。
鼻から血を流しているのである。
彼が、私の後ろを通り過ぎようとしたとき、右耳の後ろからも血が出ているのが見えた。
それも、けっこう大量に。
それを見て、「血が出てるよ」と私は言った。
男は、「知ってる」と答えて、鼻を押さえた。
表情は、目に何か異常な力が入っているような不気味なものだった。
そして、男が言う。
「痛くねえから、大丈夫だよ」
しかし、鼻と耳の後ろから流れ続けている。
レジの男と顔を見合わせた。
コンビニのマニュアルでは、こんなとき、どうしろと書いてあるのだろうか。
「警察に連絡」とでも書いてあるのか。
しかし、レジの男は立ち尽くすだけで、何の行動も取ろうとしなかった。
血だらけの若い男は、目を血走らせて、コンビニ内をうろついている。
ただ、「痛い」とか、騒ぐことはない。
静かに歩いている。
大丈夫かい? ともう一度声をかけた。
「大丈夫だよ」と男。
大丈夫なら、いいか。
あとは、コンビニの店員に任せよう。
私が口を出すことではない。
支払いを済ませた私は、コンビニを出ようとした。
そのとき、男が「あんた」と言った。
俺のことか?
振り向くと、相変わらず血走ったアドレナリン全開の顔で、男が私を見つめていた。
心臓の鼓動が早くなったが、それを気取られないように、「なんだい?」と答えた。
「三人組だよ」と男が言う。
は?
「外人だったと思う」
ああ・・・・・。
「もし、何かあったら、俺を呼んでくれ。助けてやるから」
もし、何かあったら?
背筋に悪寒が走った。
しかし、血を流しながら、私を心配してくれる彼に、感謝だけは伝えなければならない。
わかった、ありがとう。
男は小さくうなずいて、また店内をうろつき始めた。
私は、「外人三人組」と呪文を唱えるように、早足でペダルを漕ぎ、風のように家に帰った。
外人三人組の姿は、見かけなかったと思う。
血まみれの彼は、あの後どうなっただろうか。
それが、心配だ。
レジで支払っているとき、不思議な気配を感じて入り口の方を見ると、20歳前後の若者が入ってきた。
顔が赤い。
赤いと言っても、酔っ払っているわけではない。
鼻から血を流しているのである。
彼が、私の後ろを通り過ぎようとしたとき、右耳の後ろからも血が出ているのが見えた。
それも、けっこう大量に。
それを見て、「血が出てるよ」と私は言った。
男は、「知ってる」と答えて、鼻を押さえた。
表情は、目に何か異常な力が入っているような不気味なものだった。
そして、男が言う。
「痛くねえから、大丈夫だよ」
しかし、鼻と耳の後ろから流れ続けている。
レジの男と顔を見合わせた。
コンビニのマニュアルでは、こんなとき、どうしろと書いてあるのだろうか。
「警察に連絡」とでも書いてあるのか。
しかし、レジの男は立ち尽くすだけで、何の行動も取ろうとしなかった。
血だらけの若い男は、目を血走らせて、コンビニ内をうろついている。
ただ、「痛い」とか、騒ぐことはない。
静かに歩いている。
大丈夫かい? ともう一度声をかけた。
「大丈夫だよ」と男。
大丈夫なら、いいか。
あとは、コンビニの店員に任せよう。
私が口を出すことではない。
支払いを済ませた私は、コンビニを出ようとした。
そのとき、男が「あんた」と言った。
俺のことか?
振り向くと、相変わらず血走ったアドレナリン全開の顔で、男が私を見つめていた。
心臓の鼓動が早くなったが、それを気取られないように、「なんだい?」と答えた。
「三人組だよ」と男が言う。
は?
「外人だったと思う」
ああ・・・・・。
「もし、何かあったら、俺を呼んでくれ。助けてやるから」
もし、何かあったら?
背筋に悪寒が走った。
しかし、血を流しながら、私を心配してくれる彼に、感謝だけは伝えなければならない。
わかった、ありがとう。
男は小さくうなずいて、また店内をうろつき始めた。
私は、「外人三人組」と呪文を唱えるように、早足でペダルを漕ぎ、風のように家に帰った。
外人三人組の姿は、見かけなかったと思う。
血まみれの彼は、あの後どうなっただろうか。
それが、心配だ。