ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ローカルブドウのワインー日本の「Yamasachi」がOIVに登録

2021-01-07 21:30:00 | ワイン&酒

チリ、アルゼンチンと、ローカルブドウのワインの話を続けてきましたが、

本日は日本のローカルブドウ品種のワインを紹介します。

 

日本ならではのブドウ品種といえば、「甲州」「マスカット・ベリーA」(ベーリーA)が有名です。

特に「甲州」品種で造られたワインは海外でも知られ、人気を博しています。

 

世界には、数千、数万ともいわれるほどたくさんのブドウ品種がありますが、私たちがよく知るワイン用ブドウの大半は、国際ブドウ・ワイン機構ーOIV(International Organisation of Vine and Wine)の品種リストに載っており、その数は数千種類です。

 

上述した日本の甲州は「Koshu/Kosyu」として2010年に登録され、マスカット・ベリーAは「Muscat Bailey A」として2013年にOIV品種リストに登録されています。

これらに続き、3つ目の日本のブドウ品種が2020年にOIVに認可されました。

 

それが「山幸ーYamasachi」です。

 

「ヤマサチ」の名を初めて聞く人も多いのでは?

北海道の十勝地方がルーツのブドウ品種で、1978年に池田町ブドウ・ブドウ酒研究所(1964年設立)で交配が行なわれ、2006年に国内で品種登録されています。

池田町ブドウ・ブドウ酒研究所(十勝ワイン)の設立に尽力したのが、当時の池田町の町長だった丸谷金康氏でした。

ということから、丸谷氏の娘として十勝で育ち、経緯をよく知る田辺由美氏(田辺由美WINE SCHOOL主宰)による記者説明会が2020年12月に行なわれ、オンラインで参加しました。

 

山幸/ヤマサチ/Yamasachi (Japan)

 

現在、北海道には47のワイナリーがありますが、1962年に設立した池田町農産物加工研究所(のちの池田町ブドウ・ブドウ酒研究所。1966年に「十勝ワイン」ブランドを発売)が1963年に果実酒類試験製造免許を取得(自治体初)した当時は、他には、ふらのワインやはこだてワインくらいしかない状況でした。

2000年までに7ワイナリーに増えましたが、2020年までの20年で40軒も増え、今や47軒になった北海道は、日本ワインの中でひとつの大きなワイン産地を形成しています。。

それらのワイナリーの大半は、北海道の真ん中を南北に走る日高山脈の西側にあります。

かたや、日高山脈の東側にあるワイナリーは3軒のみ。

少ない理由は、十勝地方は雪は少ないものの、極寒地のため、ブドウ栽培が困難だからです。

 

冬の気温が氷点下20度に下がる十勝では、ブドウが冬を越すためには、ブドウの枝を寝かせて土をかぶせる(盛土)必要があります。

極寒の外気にさらされたブドウ樹は凍ってしまいますが、土の中に埋めたブドウ樹は、雪に閉じ込められても生きていられます。

盛土は手作業で行なうため、また、春になったら土の中から掘り起こす作業(排土)が必要で、栽培農家は大変な苦労を強いられていました。

 

そこで急務となったのが、耐寒性ブドウ品種の開発です。

「土をかけなくても冬を越せる品種」として開発された品種こそが「山幸」です。

 

父親に選ばれたのは、ロシア極東アムール川流域のアムレンシス系ヤマブドウで、

母親に選ばれたのは、セイベルの一種で、冬を乗り越えたクローン選別した「清見(きよみ)」です。

 

地道な交配作業を経て誕生した「山幸」は、マイナス31℃の低温でも越冬し、糖度は23度まで成熟し、10月上旬に収穫を迎える品種となりました。

 

 

1978年の交配から30余年を経て、2019年6月にOIVに申請し、それが受理され、

2020年11月9日にOIVの認定書が出されました。

 

OIVは世界47の国が参加する機関です。

OIVに登録されたブドウ品種は、参加国でラベルに品種名を表記して販売することができます。

「Yamasachi」と表記された日本のワインが海外のショップに並ぶ日も近いかもしれませんね。

 

 

 

ヤマサチは十勝川からの暖かい空気を受ける斜面に植えられています。

十勝ワインが15ha、契約農家が10ha、合計25haが栽培されています。

年間収穫量は110トン。これから増えてくるでしょうか。

 

 

 

山幸のワインは、「十勝ワイン」からいくつかのアイテムが発売されています。

今回はオンライン参加でしたので、試飲はできませんでしたが、紹介された4ワインの情報を載せておきます。

 

十勝ワイン「山幸」2017

 

ベリー系の香りは少なく、ややスパイシーな香りや青っぽい香りがあります。

ヤマブドウ系ならではの強い酸があり、いいタンニンがあり、口の中でスパイシーさが広がります。

フィニッシュは長い、というのが田辺さんのコメント。

長熟の可能性があるワインだそうなので、収穫年からしばらく楽しめそうですね。

720mlサイズで2,611円(税抜)

 

 

十勝ワイン「ジュエル オブ トカチ」2018

750ml  6,600円(税抜)

 

 

Etudié-XYZ 2014

*参考出品:田辺由美氏が 2016 年にプロデュースしたスペシャルキュヴェ

 

 

十勝ワイン「山幸アイスワイン」2018

 

近年の温暖化で、世界のワイン産地でアイスワインの生産が難しくなっていますが、マイナス20~30℃に下がる十勝では、しっかりとブドウが凍結します。

 

200ml 4,580円(税抜)

ブドウの濃厚なエキスで造られた山幸アイスワインはパッケージも豪華なので、贈り物にすると喜ばれそうでは?

 

 

田辺由美氏

 

「清見」はよく店でも見ますが、「山幸」には出合ったことがありません。

説明を聞き、ぜひとも飲んでみたくなりました。

まずは手頃な価格で入手できるベーシックな十勝ワイン「山幸」を探して飲んでみようと思っています。

 


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2 コメント

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Unknown (platsake)
2021-01-08 00:02:01
おはようございます。いつもブログを参考にしております倉庫番です(@^▽^@)。
今日の日本の葡萄品種「山幸」に、田辺由美さんが登場するとは、びっくりしました。会社で使っているワインの参考本の監修した方が画像付きで出て来るとは、ワインのささやきさんも凄い人物だったんですねぇ‼️ すごい・スゴイε=ε=(ノ≧∇≦)ノキャーッ
返信する
いつもありがとうございます (まゆ@管理人)
2021-01-12 17:51:22
倉庫番さん、いつもお立ちよりいただき、ありがとうございます。
田辺由美さんは凄い方ですが、私はしがないフリーのワインジャーナリストです(笑)
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