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一週間ー井上ひさし

2021年05月01日 | 読書

評価5

再読(前回2018年3月1日)。
結末をすっかり忘れていて「くぅーやられた!650頁も読ませやがって(笑)」でも傑作!シベリア抑留の身になった男がレーニンの生手紙を武器にソ連邦官憲に1人で立ち向かう痛快ストーリー!終戦当時の日本、ソ連の姿と現在の日本の姿がダブって見え大いに考えさせられる。

シベリア極寒の捕虜収容所にいた共産党から転向した小松修吉は、ハバロフスクにある日本人捕虜収容所向けの紙面を手掛ける日本語新聞社に行くように命ぜられる。そこで、小松は脱走に失敗した軍医・入江一郎の手記を書くように指示され、入江への面談中にレーニンの裏切りと堕落を明かすレーニン直筆の手紙を託される。この手紙を武器に日本帰還を画策する小松とそれを陥れようとするソ連側との駆け引きが続くのだが、ソ連側の脅しや色仕掛け戦術がかなりハマる(笑)。

洒脱な著者の語り口に(再読にもかかわらず)先を急いでしまったが、シベリア抑留者60万人を見捨てた日本政府、捕虜収容所での旧関東軍将校による下級兵士への虐待や食糧の搾取などのあまりのひどさに怒りを覚えた。もちろん協定破りのソ連にも。シベリア抑留、もう少し掘り下げてみようかと思う。