12月30日 読売新聞編集手帳
電信柱の電線は眺めて美しい景観ではないが、この季節はそう目くじらを立てない。
風が弦を弾くように鳴らす木枯らしの音を耳にすると、
子供の昔にかえったようで、足をとめて聴き入ることがある。
『赤い靴』や『七つの子』で知られる作曲家、本居長世(もとおりながよ)は語ったという。
「道を歩いていると、電線が五線紙に見える」と。
冬に限れば、音楽の門外漢である身にもその気持ちは分かる。
年末年始、テレビには歌番組が多い。
〈こりゃ誰だこの歌なんだ大みそか〉(サラリーマン川柳)
とボヤくのも、正月休みならではだろう。
ある忘年会の席で思い出の曲が話題になった。
中学生のころに聴いたうろ覚えの歌を挙げたところ、
いまは廃盤らしいその曲を収めたテープを友人が届けてくれた。
北原早苗さんの歌う『少年』(詞・万里村ゆき子、曲・加藤和彦、1970年)という。
ともだちの生きかた おんなのひとのにおい だれかのうわさや ふしぎな胸さわぎ…
思春期の扉に立つ少年の、心の波立ちが静かに歌われている。
胸のなかにも電線があるのか、懐かしい風に思い出のあれこれが鳴りやまずにいる。
電信柱の電線は眺めて美しい景観ではないが、この季節はそう目くじらを立てない。
風が弦を弾くように鳴らす木枯らしの音を耳にすると、
子供の昔にかえったようで、足をとめて聴き入ることがある。
『赤い靴』や『七つの子』で知られる作曲家、本居長世(もとおりながよ)は語ったという。
「道を歩いていると、電線が五線紙に見える」と。
冬に限れば、音楽の門外漢である身にもその気持ちは分かる。
年末年始、テレビには歌番組が多い。
〈こりゃ誰だこの歌なんだ大みそか〉(サラリーマン川柳)
とボヤくのも、正月休みならではだろう。
ある忘年会の席で思い出の曲が話題になった。
中学生のころに聴いたうろ覚えの歌を挙げたところ、
いまは廃盤らしいその曲を収めたテープを友人が届けてくれた。
北原早苗さんの歌う『少年』(詞・万里村ゆき子、曲・加藤和彦、1970年)という。
ともだちの生きかた おんなのひとのにおい だれかのうわさや ふしぎな胸さわぎ…
思春期の扉に立つ少年の、心の波立ちが静かに歌われている。
胸のなかにも電線があるのか、懐かしい風に思い出のあれこれが鳴りやまずにいる。