1月18日 読売新聞編集手帳
愚痴は必要です。
ひとの愚痴はお聴きなさい。
神様が誰かにそれを言わせたのだから――
漫画家の手塚治虫さんが立川談志さんに語ったという。
談志さんが『談志絶唱 昭和の歌謡曲』(大和書房)に書いている。
悩みは解決しなくても、
愚痴には、こぼすだけで胸の中が心なしか晴れるようなところがある。
神様云々はともかくも、
医学博士でもあった手塚さんはその効用をご存じだったのだろう。
「怖いよ」「不安で、いやだな」という試験前の泣き言も一種の愚痴に違いない。
しっかり言葉にするのがいいようである。
米シカゴ大学の研究チームによる実験の記事を読んだ。
大学生87人を2グループに分けて2回の数学試験を実施したところ、
2回目の試験に先だって受験する心境を作文に書かせたグループで成績が上がり、
とくに不安な気持ちを綴った人の向上が目立ったという。
研究チームによれば
「過去のつらい体験を文章にして心の傷を癒やす心理療法と似た効果が、
試験直前の作文にはある」のだとか。
受験の季節、とりあえずはご参考まで。
試験と無縁の身は盃にひとり、さて今夜は何を愚痴ろう。