1月13日 読売新聞編集手帳
「コント55号」が人気絶頂の頃という。
萩本欽一さんが疲れた顔で語った言葉を、
作家の小林信彦さんが著書に書き留めている。
〈一度、人気が落ちないと、本当に良い仕事はできませんよ〉
(文芸春秋『天才伝説 横山やすし』より)。
充電なしに放電が求められる。ネタを練る時間もない。
分かってはいても、
人気が上げ潮のときに電波という怒濤の“波乗り”を打ち切るのはむずかしい。
その苦衷を語ったものだろう。
波から身を引く、引き方が鮮やかである。
ニュース解説で人気のジャーナリスト池上彰さん(60)が
一切のテレビ・ラジオ出演をやめて充電し、
取材と執筆に専念するという。
新聞記者にとって池上さんは胸をチクリと刺す「針」のような存在である。
政治・経済であれ、国際情勢であれ、
新聞を読みさえすれば複雑な事象もすっきり頭に入り、
池上さんの出る幕は金輪際ない。
そう胸を張れるような、分かりやすい記事を書け――と、
針はわが身を刺す。
いい意味の痛みということでは、
「鍼(はり)」が適切かも知れない。
充電を経て、鍼はさらに研がれるのだろう。
痛がってばかりもいられない。
「コント55号」が人気絶頂の頃という。
萩本欽一さんが疲れた顔で語った言葉を、
作家の小林信彦さんが著書に書き留めている。
〈一度、人気が落ちないと、本当に良い仕事はできませんよ〉
(文芸春秋『天才伝説 横山やすし』より)。
充電なしに放電が求められる。ネタを練る時間もない。
分かってはいても、
人気が上げ潮のときに電波という怒濤の“波乗り”を打ち切るのはむずかしい。
その苦衷を語ったものだろう。
波から身を引く、引き方が鮮やかである。
ニュース解説で人気のジャーナリスト池上彰さん(60)が
一切のテレビ・ラジオ出演をやめて充電し、
取材と執筆に専念するという。
新聞記者にとって池上さんは胸をチクリと刺す「針」のような存在である。
政治・経済であれ、国際情勢であれ、
新聞を読みさえすれば複雑な事象もすっきり頭に入り、
池上さんの出る幕は金輪際ない。
そう胸を張れるような、分かりやすい記事を書け――と、
針はわが身を刺す。
いい意味の痛みということでは、
「鍼(はり)」が適切かも知れない。
充電を経て、鍼はさらに研がれるのだろう。
痛がってばかりもいられない。