10月30日付 読売新聞編集手帳
<ゴルフでパットの構えに入ったら、急に風が吹いてきて球が動いた>。
この場合、
「風だから仕方ない」とやり過ごすのは誤り。
規則上はプレーヤーが動かしたと見なされ、
1打罰が科される。
プロの選手の間では「ゴルフで最も理不尽な規則」と言われてきた。
今年5月にも米国男子ツアーで、
優勝目前の選手がこの1打で2位選手に並ばれ、
プレーオフの末敗れた。
「バッド・ルール!」
とコメントしたそうだ。
その声が届いたか、
ゴルフ規則を決める英国のR&Aと米国ゴルフ協会は先週、
この1打罰を来年から撤廃すると発表した。
かの選手の手に優勝杯は戻らないが、
ゴルフ界にとっては長年の懸案解決の出来事らしい。
「球聖」と呼ばれた米国の名選手ボビー・ジョーンズが言う。
<ゴルフという不思議なゲームの中で、
最も不思議なゲームはパッティングである>
(摂津茂和著『不滅のゴルフ名言集』)。
最後の1打まで、
何が起こるかわからない。
パットは奥の深い世界なのだろう。
都合の悪い規則には知らんぷり、
グリーン上では「オッケー?」のおねだり。
下手の横好きを恥じるばかりである。