11月18日付 読売新聞編集手帳
ある大学教授が学生から手紙をもらった。
「見識のない先生に、突然、手紙を差し上げます」。
国語学者の見坊豪紀(けんぼうひでとし)さんが
著書『ことばの遊び学』(PHP研究所)に紹介している。
「面識のない先生」の誤りである。
学生は「見識」を「見て識(し)っている」意味と勘違いしたのだろう。
とんだ恥をかいたわけだが、
大学はともかく永田町には見識のいささか心もとないセンセイがいるのは確かである。
国賓のブータン国王夫妻を迎えての宮中晩餐会(ばんさんかい)を、
一川保夫防衛相が欠席した。
民主党参院議員の政治資金パーティーに出席したという。
「他の大臣は皆そちら(宮中晩餐会)に行きましたが、
私はこちらのほうが大事だと思って参りました」。
一川氏はパーティーでそう挨拶している。
きのうの参院予算委員会で事実を認め、
「申し訳なかった。反省している」と陳謝した。
やれやれ。
「米大統領や中国国家主席の晩餐会であっても、
すっぽかしましたか?
それとも、
すっぽかしていい国、
いけない国の区別があるのですか?」。
見識のない…いや、
面識のないセンセイにお尋ねの手紙を差し上げたい心境である。