11月19日 NHK海外ネットワーク
ヨーロッパの信用不安の発端となったギリシャには、
危機的な経済状況の中でも多くの観光客が訪れている。
しかし、観光の中心地から少し離れた商店街では、
閉店に追い込まれた店が軒を連ねている。
ギリシャは2002年に通貨ドラクマをやめてユーロを導入。
政府も民間も実際の経済力以上の借金が可能になり、
人々の生活レベルも格段に良くなった。
しかし加熱していた景気がおととし以降急速に冷え込み、
政府が抱える巨額の借金が大きな問題となった。
さらにこの借金を減らそうと行なっている財政緊縮策が景気をますます悪化させている。
アテネで行なわれた大規模なデモには公務員の姿が多く見られた。
ギリシャでは労働人口の4人に1人にあたる100万人が公務員とされている。
財政緊縮策の柱となっている公務員の削減に強く反対している。
アテネ近郊の人口7万人の市役所では、
公務員600人中60人が定年などで退職したが、
人員補充はほとんどされず仕事の負担が増えた。
来月から給料も30%ほどカットされる。
政府に抗議するスローガンを職場に掲げて、
公務員が財政危機を招いた象徴的な存在とされていることへの不満をあらわにしている。
公務員の削減と並んでギリシャ政府が本腰をあげて取り組んでいるのが
徹底した税制の見直し。
ギリシャでは長い間、脱税が横行してきたといわれている。
このため政府は脱税の徹底した取り締まりに乗り出した。
悪質な脱税をした企業や個人の名前を公表する措置に踏み切ることに決めた。
新たな税の導入や税率の引き上げも相次いでいる。
ギリシャでは去年春以降、増税が人々の暮らしに影響を与えてきた。
飲食店での付加価値税は13%→23%にひきあげられ、
所得税の増税も行なわれ、
国民全員で負担を分かち合う連帯税という新たな税も導入された。
収入を何に使ったかレシートなどで税務当局に証明できなければ、
所得税の額が高くなる制度が導入されたため、
買い物をするたびにレシートをすべて保管する。
脱税や課税漏れを防ぐ目的のためである=+。
日本の固定資産税にあたる税金はこれまでなかったが
新たに持ち家にも税金がかかるようになった。
税金は電気代の上乗せされて徴収される。
支払いを拒むと電気を止められるしくみである。
ギリシャの財政危機の背景には
公務員の正確な数を政府が把握していなかったり、
数百億ユーロもの徴収すべき税金を徴収してこなかったり、
といったずさんさ、効率の悪さがあった。
債務の不履行を免れるためにはユーロ圏諸国からの追加支援に頼るしかないが、
そのための増税と緊縮財政がさらなる失業や企業の資金不足を招き、
国民に身を切るような痛みを与えている。