10月29日 NHK海外ネットワーク
中国を上回るペースで人口増加が続くのがインド。
2021年にインドが中国を抜いて世界一になる。
中国は2025年には減少に転じることから
2050年にはその差が開く。
インドは24歳以下の若い世代が6億人、全体の半分を占めている。
インド西部のマハラシュトラ州の児童養護施設には女の子ばかり28人が身を寄せている。
その多くが親から子育てを放棄された子供たちである。
わずか3歳であずけられた子もいる。
なぜ女の子の子育てを放棄するのか。
インド社会に深く根ざす慣習が背景にあると見られている。
インドの結婚式では新郎側が新婦の実家に持参金を要求する場合がある。
その額は新婦側の年収の数年分にのぼることもあり、
これを重荷に感じる親が多い。
相続の際に男性が優先される慣習も根強く残っている。
実際に、子供は男のこの方が良いと答える母親は少なくない。
こうした意識が辛い現実をもたらすことがある。
北部の村のある女性の家は農業で生計をたてていて年収は日本円で9万円余。
長女を産んだ後二人目を妊娠し、性別を調べたところ女の子であることが判明した。
「どうするんだと家族に言われた。
女の子だと結婚の持参金として150万円もする車を要求されることもある。」
女性は産むのを諦め中絶した。
インドでは今、子どもの男女の比率に大きな偏りが生じている。
6歳以下の子どもで男の子1000人に対する女の子の数は、
減り続けて現在は914人。
過去50年間で最低になっていることがわかった。
インド政府の担当者は、
女の子を望まず中絶する母親が多くいることが偏りの原因となっていると指摘する。
女性や生まれてくる女の子を差別する因習をなくそうと、
インド政府は古くから対策をとってきた。
結婚の際の持参金は、実は1961年に法律で禁止されている。
胎児の健康状態を調べる超音波検査で性別を判定することも法律で禁じている。
インド保健・家族福祉省 担当局長
「政府として法律や政策を通じ、
女の子に対する不当な扱いをなくすよう最大限の取り組みを続けている。」
法律で規制しても古くからの因習をなくすことは難しいのが実情である。
そこで人々の意識を変えるための取り組みも始まっている。
政府が派遣した劇団員たちによる劇を通じて人々に考えてもらおうという取り組みである。
劇団員の女性は自らの経験からこの取り組みへの参加を決めた。
「私の育った村では女の子だというだけで
病気になっても病院に連れて行ってもらえないこともあった。
女性に対する差別を絶対になくしたいと思っている。
この思いを広げていきたい。」
女性が安心して子どもを産み、
男女ともに健やかに育つ社会を実現できるのか。
人口大国インドが向き合う課題である。