11月30日 おはよう日本
日本国内の工場の中に従業員を減らさず
むしろ新たに雇用を増やしているところもある。
そこには雇用をつなぎとめるヒントがある。
東京昭島市にある大手コンピューターメーカーの工場は
顧客の細かい注文にこたえてつくる“オーダーメイド”方式で
この1年で従業員を約50%増やした。
外回りの多いビジネスマン向けに容量やメモリーを大きく
テレビ会議用のカメラも注文次第。
従業員が顧客のリクエストに応じてハードディスクやメモリーを組み合わせて
1台ずつ造る。
細かい注文に数日で対応するサービスが好評で生産台数は去年の1,5倍に増加。
これに伴い工場の従業員も増やす必要があった。
(日本ヒューレット・パッカード昭島事業所 清水直行所長)
「客のニーズに応えられる生産体制でサービスを加えてさらにビジネスを伸ばす。
そのまま雇用の拡大にもつながるので
引き続き国内生産にこだわってやっていきたい。」
従業員のアイデアを生かした効率化で雇用を維持しようという工場もある。
山形県米沢市のパソコン工場は約1,100人の従業員が働いている。
この大手メーカーのパソコン事業は海外メーカーとのし烈な価格競争で収益が悪化。
約40%あった国内シェアは半分に落ち込み
かつて国内に3か所あった工場は今は米沢だけである。
去年7月には中国の大手メーカーの傘下に入った。
人件費の安い中国に工場が移されるのではないかと従業員の間に不安が広がった。
どうしたら雇用を守れるのか。
工場は徹底した効率化で生産力を高めようと従業員にアイデアを募った。
キーボードが正しい文字列になっているか確かめるためにつくられたシートは
これまで40秒かかっていた作業をわずか5秒に短縮した。
冷却ファンが正常に動いているか確認する風車は
手をかざして確認していたのに比べ作業が正確になった。
この1年に導入された効率化のアイデアは100項目以上。
取り組みは大きな効果をあげ
1人が1日に生産する台数は去年5月は29台だったが
先月は40台にまで増加した。
米沢工場の生産性の高さに目を見張ったのは中国の親会社。
中国から一部のパソコンの生産を米沢工場に委託することを決めた。
今後 委託する機種や台数をさらに増やすことを検討している。
(NECパーソナルコンピュータ 竹下泰平総括マネージャー)
「“ここで工場を残していく”
“この場所を残していく”
という思いは我々もそうだが実際に働いている方は非常に高い。
皆さんの努力とか改善がベースにあってこの工場が運営できている。」
(野村総合研究所 コンサルタント 青嶋稔さん)
「“コスト低減”をしっかり見極めてやり続けていくこともあるし
市場のニーズをいかに早く組み上げて物づくりに戻すかというところは
日本の雇用を守るうえで日本の中でそういうビジネスモデルを
どうやってしっかり突き詰めていくか大事なポイントだと思う。」
専門家は企業によるこうした独自の努力を高く評価する一方で
円高対策や景気対策など国の取り組みを欠かせないと指摘している。
さらに製造業からサービス業へ雇用を後押ししたり
新たな産業をおこしたりといった産業政策が
これからますます重要になると話している。