12月8日 NHK海外ネットワーク
ある意外な素材を使った自転車が日本の自転車愛好家を魅了している。
人気の秘密はおしゃれな見た目と乗り心地の良さ。
「びっくりするほど軽い。」
「すてきですごいファッショナブル。」
自転車好きのイベントでお披露目された自転車は
フレームが竹。
普通の自転車では飽き足らない人たちの間で話題となっている。
「竹のフレームが力を吸収してくれるので乗りやすい。
乗っててとても楽。」
この竹自転車を作ったのはアフリカ南部ザンビアの自転車メーカー。
開発から3年。
日本での販売にたどり着くまでにはいくつもの苦労があった。
竹自転車の製造を手掛けるムウェワ・チカンバさん(44)。
この回会社を設立したのは4年前。
長年中古車ディーラーをしていたが完成品を輸入するだけではなく
自分たちでものづくりをしたい
と考えた。
ザンビアは2003年以降 5%を超える経済成長を続けている。
しかしその実態は銅やコバルトなど地下資源頼みで産業の育成は進んでいない。
(自転車メーカー社長 ムウェワ・チカンバさん)
「私たちの国は長年 原材料を輸出し完成品は輸入してきた。
これからは自分たちd完成品を作り世界に輸出すべきだと思った。
この竹自転車こそ手作りの国産品。」
仕事にあぶれた若者10人を集めてチカンバさんの挑戦が始まった。
最初は普通の自転車を組み立てることから始まった。
屋外での作業。
倉庫代わりの狭いコンテナからの出発。
みんなで知恵を絞って作った乗り物がヒット商品になった。
ホロをかぶせたカートを自転車でけん引する救急車である。
資金不足で本物の救急車を買えない病院が多いザンビアで急速に広まった。
(病院のスタッフ)
「患者を病院まで運ぶ手段は他にないのでよく使っている。
地域の人たちも喜んでいる。」
海外への輸出を目指していたチカンバさんが次に目をつけたのは地元の竹。
竹のフレームで作った自転車がアメリカで商品化され高値で売られていると聞いた。
(チカンバさん)
「見た目が美しくアフリカには竹が豊富にある。
これで自転車をつくることは斬新で面白いと感じた。」
ザンビアの竹は肉厚なのに軽くしかも丈夫で自転車のフレームにうってつけだった。
独特の竹の模様もデザインに生かせることもわかった。
(竹自転車の製造責任者)
「これもこれも自転車に最適です。
この美しいラインがいい。」
竹は十分に乾燥させ切り分ける。
つなぎ目には切れ込みを入れ樹脂に浸した麻のひもを何重にも巻きつける。
(竹自転車の製造責任者)
「きつく巻いて隙間をなくすと乾いたとき丈夫になる。
ただ上手く巻かないと自転車が壊れてしまう。」
樹脂が固まったら6種類の紙やすりで丁寧に拭く。
仕上げに防水加工。
竹を切りだしてから完成まで3か月の工程である。
念願の輸出に乗り出し
アメリカ ドイツ オランダと輸出先を拡大していった。
しかしなかなか輸出に至らない国がひとつだけあった。
日本。
日本の販売店はどの国よりも高い品質を要求し
わずかなゆがみや汚れでも容赦なく返品してきたのである。
(竹自転車の製造責任者)
「日本人が何を求めているのか分からなかった。
それを理解するのはとても難しいことだった。」
日本がっわが求める品質を知るため日本から自転車の専門家を呼び寄せた。
アドバイスされたのは
“仕上げを精密に行うこと”。
仕上がりを確認する項目を増やし新たにチェックシートを作成。
フレームとギアとの距離はミリ単位で計測することにした。
ペダルの回転の微妙なブレも可能な限りなくすようにした。
基準を満たすまで細かい調整を繰り返した。
それまでは塗り残しなど多少のばらつきは見過ごしていたふきつけも
完璧を期すようになった。
(竹自転車の製造責任者)
「あきらめなかった。
日本人の求める水準にたどり着きたかった。
彼らが求める仕事ができるまで努力を続けた。」
努力が実り今では日本各地の12店舗で販売されるようになった。
会社の看板に書かれた言葉
“自転車をつくだけではない 人生をも変える”。
自らの手で作り上げる“メイド・イン・ザンビア”への誇りを込めた言葉である。
(自転車メーカー社長 ムウェワ・チカンバさん)
「従業員たちがここで十分なお金を稼ぎ
自立していく姿を見ることが私の喜び。
竹自転車をもっと世界中に広めていきたい。」