7月14日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
「シティー」と呼ばれるロンドンの中心部にある金融街には
日本を含む外国の約250の金融機関が拠点を置いている。
また金融を柱とするイギリス経済を支える存在でもある。
新型コロナウィルスの感染拡大以降
金融街で働く多くの人が在宅勤務になったことで
シティーの姿が変わろうとしている。
イギリスの首都ロンドン。
新型コロナウィルスの影響で泊まっていた経済活動はほとんど再開できるようになった。
小売店やレストランは通常の営業を始め
人の賑わいも少しずつ戻り始めている。
一方で世界の金融センター「シティー」の人通りはまばらである。
ここで働く多くの人が今も在宅勤務を続けているからである。
政府は可能な限り在宅で働くことを求めていて
いつここに人が帰ってくるのか
見通しは立っていない。
企業の中には“金融街にオフィスを置く“というスタイルを見直すところも現れた。
シティーにあるビルに入っていた企業の1つは
5月いっぱいで退去することを決めた。
(従業員)
「出ていく準備はできています。」
この会社は
ここを拠点に金融機関向けにコンサルタント業務を行なってきたが
全員が在宅勤務に移行した。
従業員の多くは会社の決定を前向きに受け止めている。
(従業員)
「毎日2時間の通勤から解放されてゆとりができました。」
「家族との時間が増えて
エクササイズができることで
仕事の効率は上がっています。」
この会社のトップ ハンプソンCEO。
感染拡大をきっかけに
全ての顧客が在宅勤務に移行。
それでも大きな支障がなくビジネスを続けられたことで
オフィスの閉鎖という思い切った判断ができたという。
(金融コンサルタント会社 ハンプソンCEO)
「世界が同時に働き方を変えたことで
オンラインが基準となりました。
我々は産業革命などを経験してきましたが
今回はオフィスの進化に向けた始まりです。」
長年シティーを支えてきた大手金融機関も
すでにEU離脱に備えて従業員をドイツなど大陸側に移しており
ウィルスの感染拡大で“シティー離れ”がさらに進む可能性も出ている。
それでもシティーの行政トップは
“人が集まるオフィスの重要性は変わらない”と主張している。
(シティー・オブ・ロンドン ラッセル市長)
「オフィスは死んでいません。
変化が起こることは認識しています。
新旧が入り交じる形です。
多くの企業が今後
週3日は出社で2日は在宅勤務にすると聞いています。
ロンドンの金融街は
東京やニューヨーク シンガポールとともに
世界の最前線であり続けるでしょう。」
オフィスの閉鎖まで決めたところは今の時点ではまだ少数派である。
取材した金融コンサルタントの企業は
オフィスにいる従業員が18人と身軽で
事前に顧客に説明して“問題ない”と了解が得られたことで素早い動きができたということである。
ただ多くの企業にとってオフィスをなくすことは簡単にできることではない。
オフィスからしか接続できないシステムや
顧客と顔を合わせないと進められない仕事があれば
従業員に出勤してもらう必要がある。
また
ロンドンは東京などと同様に非常に家賃が高く
若い人を中心に何人かで1つの家を借りてシェアして暮らす人が多い。
こうした人たちにとっては
在宅だと十分なスペースが取れずに仕事の環境が整わないという問題もある。
シティーでオフィスの閉鎖は進むのか。
(大手不動産会社 幹部)
「ワクチンの早期開発や
公共交通機関の安全な利用
そしてオフィスが快適な仕事場所かどうかなどに左右されます。
今後1年でどこに向かうのか
より理解できるでしょう。」
イギリスでは経営が苦しくなった企業から従業員を減らす発表が相次いでる。
少し前までは航空業界が多かったが
このところは小売や飲食の分野でも人員削減の計画を打ち出す動きが加速している。
雇用への影響が大きくなれば家計が苦しくなり
回り回って
金融が不安定になることにもつながりかねない。
さらにEU離脱の課題が大きい。
移行期間が終わる今年末までにEUとの自由貿易協定を締結しなければ
これまでのような自由な経済活動はできなくなってしまうのである。
しかし交渉は難航しており
残された時間に合意にこぎつけるのは容易ではない。
イギリス経済が再び成長できるのか
不安定な要素が多く残されているのが現状である。