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“海の貴婦人” 木造帆船 シナーラ

2020-08-14 06:56:33 | 報道/ニュース

7月20日 NHK「おはよう日本」


帆を広げた美しさから“海の貴婦人”とも呼ばれるシナーラ号。
建造から90年以上たったビンテージヨットである。
すべて木で作られた世界的にも貴重なものである。
この船はかつては老朽化が進み
元の姿を取り戻すことは難しいと言われてきた。
修復が始まったのは3年前。
所有する日本の企業が
東京オリンピックのセーリング競技が行われる会場でお披露目を目指し
作業を進めてきた。
かつての融資を取り戻すことで
復興五輪の一翼を担いたいと始まった修復プロジェクトである。


神奈川県三浦市にあるヨットハーバー。
今年3月
陸上での修復作業を終えた「シナーラ」が3年ぶりに海の上に戻された。
全長30m
総重量73t。
舵にロープの滑車 デッキにいたるまですべて木で作られている。
国内に現存する数少ないビンテージヨットの1つである。
(日本セーリング連盟 河野会長)
「帆船が世界中から減っていくなかで
 シナーラの修復は非常に貴重なこと。
 大変美しい姿でよみがえっていることは
 日本のセーラーにとって大変な励みになる。」
シナーラが作られたのは1927年。
イギリス王室のヨット建造を請け負っていた造船所が
“世界で最高のヨットを作る”という信念のもと
10年以上かけて完成させた。
1970年代には日本の企業が購入。
世界を周遊する様子が26回にわたって放送され話題となった。
19年前にシナーラを引き継いだリゾート運営会社の代表 渡邉さん。
世界的にも貴重なこの船を次の世代に残したいと
大規模な修復を決断した。
(リビエラホールディングス 渡邉代表)
「歴史そのものを背負った船。
 価値がある。
 動くミュージアムだと思っている。
 多様な文化 歴史を学ぶ1つの材料になればいい。」
2017年
修復作業は船の解体から始まった。
建造当時の木材を生かして船を再生させるためである。
作業を進めるのはヨーロッパなどから来た職人たち。
総勢50人が10か国から集まった。
リーダーはイギリス出身のハーヴィーさんである。
造船に携わって30年のベテランである。
(ハーヴィーさん)
「これは内装に使われていた板です。
 バラバラに分解しパーツごとに修復します。」
船に多く使われていたのは手に入れるのが難しいミャンマー産の高級木材である。
傷んだ部分だけを取り除き同じ種類の木材で埋めなおす。
どれだけ多くオリジナルの木材を残せるか
その見極めに多くの時間を費やしたとハーヴィーさんは言う。
(ハーヴィーさん)
「この船はヨットの黄金期 造船技術の絶頂期に生まれました。
 私たちが心血を注いだのは
 元のデザインを尊重することです。」
建造当時の姿を忠実に再現したいと考えたハーヴィーさん。
その前に立ちはだかったのは90年の月日だった。
度重なる航海を経て
船の部材は変形。
腐食によって原形をとどめていない部分もあったからである。
修復作業を大きく前進させたのは図面の発見がきっかけだった。
(ハーヴィーさん)
「これはロンドンの国立海洋博物館から入手した。」
博物館の所蔵品の中から
無いと思われていた建造当時の設計図が見つかったのである。
(ハーヴィーさん)
「この図面から船の形状や配置が分かります。
 細かい部分を知るのに本当に役立っています。
 頻繁に図面を見直していますが
 そのたびに新たな発見があります。」
修復作業には多くの日本人も参加している。
ヨット製造の先進地ヨーロッパの技術を吸収するためである。
内装を担当するのは家具職人の橋本さん(25)。
箪笥作りで名高い広島県府中市から参加した。
この日は船体に取り付ける板の調整を繰り返していた。
(橋本さん)
「普通の家具だとほとんどが直角ですが
 船の場合は角度がついている。
 なかなか簡単にはいかない。」
「今までやったことがないところ おもしろい。
 毎日楽しみながら作業している。」
3年ぶりにテントから出されたシナーラ。
5月にはテスト帆走が行われた。
舞台は東京オリンピックセーリング競技の会場となる相模湾である。
“海の貴婦人”がよみがえった。
(ハーヴィーさん)
「イギリスで生まれたこのヨットが日本に渡り
 今では日本の文化の1つになろうとしている。
 これから100年 航海してほしい。
 すばらしい船出になりました。」

この修復作業は新型コロナウィルスの影響で
外国から来た職人が帰国したり資材の輸入が止まったりするトラブルがあった。
そんななか日本に残った職人たちが
国内で新たな資材を探したり方法を工夫して修復にこぎつけた。
シナーラは今後もテスト帆走を続け
来年のオリンピックに向けて準備を進めていくということである。
 

 

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