7月16日 NHKBS1[キャッチ!世界のトップニュース」
北京の下町はかつて
フートン(胡同)と呼ばれるレンガ造りの独特の街並みで知られていたが
その多くが取り壊され
残されたフートンも以前の活気が失われている。
しかし最近フートンの中には
若い芸術家たちの取り組みで活気を取り戻したところも出てきている。
この20年余
北京では都市開発が一気に進んだ。
昔ながらのフートンは次々と姿を消した。
その後 北京市民の間では
人情豊かな風情があるフートンを残そうという機運が高まり
政府も保存を重視する姿勢に変わってきた。
しかし
古くて狭い・駐車場が無いなど生活は不便なため
若い世代は移転。
住民の多くは中高年や低所得者層になり
活性化はなかなかうまくいかない。
そうしたなか
近年 活性化に一役買うようになったのが若い芸術家たちである。
北京中心部のフートン 五道営。
10年前から
おしゃれなカフェやレストラン
手作りの民芸品を置いた雑貨店などが建ち並ぶようになった。
北京市も“新しい文化と歴史が交わる町”として指定し
今では洗練された伝統文化を発信する場所にもなっている。
ブティックを経営する服飾デザイナーの曲さん。
少数民族のミャオ族の染め物などを現代風にデザインし
ワンピースやスカーフなどに加工して販売している。
ターゲットは服装にお金を使うようになった中国の高所得者層。
外国ブランドのまねではない独自の服飾文化を発信しようとしている。
(服飾デザイナー 曲さん)
「ろうけつ染めの図柄は下書きなしです。
描けるようになるには40年かかります。」
内陸の山間部に住むミャオ族は
優れた染め物や刺繍の文化を持っているが
経済発展にともなって若い人が都市部に出稼ぎに行くようになり
伝統を受け継ぐのが難しくなっている。
「文化を残すには人々の生活に生かされる必要がある」と曲さんは言う。
(服飾デザイナー 曲さん)
「伝統的な服飾文化は
人々が着ないと保存できません。
民族衣装の伝統を生かした服を多くの人に着てほしいと思います。
伝統的で現代的なものを作り続けます。」
内務部街と呼ばれるフートンでは
若い芸術家たちが人々の交流をテーマに活性化に取り組んでいる。
于さんが代表を務める芸術家グループ。
于さんらは多くの若者がフートンを訪れるように展示会やイベントを頻繁に開いている。
常設展のテーマは
フートンの生活に今も息づく“レトロ文化“。
展示された着物などを手に取って
忘れがちな暮らしの魅力を再発見してもらうのが狙いである。
たとえばフートンの年配の女性が被っている毛糸の帽子。
展示してみるとそのほのぼのとしたデザインが若者の興味をかきたてる。
さらに集会場を訪れた若者や住民がおしゃれな写真を撮影するコーナー。
写真を通じて交流の場が広がればと企画された。
(住民)
「私たち住民同士も仲良く交流するようになりました。」
「おかげで若返ったような気がします。」
外観だけの保存や商店の誘致だけでは
本当の意味での活性化ではなく
そこにいる人が交流し生活を楽しんでこそ魅力的な町並みが残せると
于さんは考えている。
(グループ代表 于さん)
「ここで人生を過ごしてきた住民あってこそのフートンです。
この取り組みが成功したら
他のフートンにも広げたいと思います。」
物の豊かさよりも
心の豊かさや生活の中の文化を大切にしたい。
芸術家や若者の思いが
古くからのフートンに新しい魅力を注ぎ込んでいる。