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将棋界の華やぎ

2020-08-12 07:17:10 | 編集手帳

7月17日 読売新聞「編集手帳」


なぜ頬が緩むのだろう。
CMプランナーの高崎卓馬さんいわく、
<人は笑う前に必ず驚いている>
(『表現の技術』中公文庫)。
感情の動きを鮮やかに言い当てていよう。

たくさんの人を笑顔にできるのは、
表情にもまだ幼さを宿す高校生への驚きが先に立つからかもしれない。
藤井聡太七段(17)が渡辺明三冠(36)を破り、
新棋聖となった。待望の初戴冠である。

このところ驚かされることといえば、
異常な降雨であったり、
集団感染の発生であったり…
なかなか明るい感情を持ちづらいときに、
得がたい朗らかなニュースだろう。

戴冠最年少記録を塗り替えたのはもちろん、
どこまで強くなるかと快進撃への話題は尽きない。
今回は涙をのみ、
二冠(棋王・王将)となった渡辺さんにもファンは多い。
妻の伊奈めぐみさんが漫画誌に連載する『将棋の渡辺くん』には、
ぬいぐるみ集めなど夫の風変わりな日常がつづられている。

新棋聖が王位戦で挑戦中の木村一基王位(47)にしても、
中年の星などと呼ばれて人気を広げている。
勝負のかくも厳しい譜をきざむ盤の周りに、
多彩な風がそよぐ。
将棋界が華やいできた。

 

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