7月22日 NHKBS1「国際報道2020」
「コロナの時代の僕ら」。
日本を含め世界34か国で合わせて約200万部が出版されている。
著者はイタリア人の作家 パオロ・ジョルダーノさん。
今年2月から3月にかけて
新型コロナウィルスについて感じたことを27の短いエッセイにまとめたもので
まさに今起きている世界の惨状を予見するような示唆に富んだ内容となっている。
都内 池袋の大型書店。
「コロナの時代の僕ら」は話題の本が置かれた本棚に並んでいた。
日本では翻訳本は1万部で成功とされているが
すでに5万部以上が出版され
異例のヒットとなっている。
パオロ・ジョルダーノさんは
素粒子の研究で理論物理学の博士号を持つ異色の作家である。
2008年
デビュー作の恋愛小説で“イタリアの芥川賞”といわれる賞を史上最年少で受賞した。
新型コロナウィルスの出現で
何が起き
どう生きていくべきなのか。
科学者の視点で分析する一方
小説家ならではの豊かな表現力で描写し
不安な日々を過ごす人々の共感を呼んでいる。
(ジュンク堂 池袋本店)
「今こうした長期戦の中で
どういうふうに考えたらいいんだろうという1つの指針に
よりどころとして
買っていかれる方もいるんじゃないかと思います。」
(パオロ・ジョルダーノさん)
「この本はコロナがイタリアの問題ではなく
他の国々
世界全体の問題だと警告するために書きました。
本を書いたことでこの混乱を少しは整理できました。」
本が書かれたのはイタリアで感染が急拡大する前の2月末から3月初めにかけてだが
その内容は世界のその後を予見するものとなっている。
イタリアだけでなく世界中で感染が広がり甚大な被害をもたらした。
僕らは過去のどんな世代よりも頻繁に
ずっと遠くまで移動する
ミツバチと風が花粉を運ぶように
僕らは不安の種と病原体を運ぶ
空の旅はウィルスの運命を大きく変え
従来よりはるか遠い大地を
ずっと速く征服できるようにした
感染症の流行時は
人類の有能さが人類の不幸の種ともなる
(「コロナ時代の僕ら」早川書房より)
本の中では感染状況が悪化した原因について
“グローバル化がもたらした暗い影の1つだ”と指摘し
“全人類1人1人が考えるべき問題だ”と強調する。
グローバル化の周辺で生じる効果の数々
感染症のパンデミックもそんな効果のひとつなら
この新しいかたちの連帯責任はもはや誰ひとりとして逃れられない
(「コロナの時代の僕ら」早川書房より)
(パオロ・ジョルダーノさん)
「こうしたグローバルな問題に対して
私たちの行動が完全にローカルなものであっては不適切です。
私たちはグローバルな状況を反映して
それを変えなければなりません。」
さらに
行政・専門家と市民との間にある根強い不信感から
感染を防ぐのに必要な情報が共有されていない問題にも言及している。
行政は専門家を信頼するが
僕ら市民を信じようとはしない
専門家にしても市民をろくに信用していないため
いつもあまりに単純な説明しかせず
それが今度は僕らの不信を呼ぶ
結局僕らは何を信じてよいのかわからぬまま
余計にいい加減な行動をとって
またしても信頼を失うことになる
(「コロナの時代と僕ら」早川書房より)
(パオロ・ジョルダーノさん)
「私たちはスピーディーに
簡素化された情報を得ることに慣れすぎています。
メディア・政治家・行政も
難しいことは全部抜きにしています。
時には複雑な情報が必要です。」
ジョルダーノさんは
「同じよう男な感染症の発生を繰り返さないためには
新型コロナウィルスが原因で亡くなった人々の死を
記憶し続けることが重要だ」と訴える。
(パオロ・ジョルダーノさん)
「犠牲者を忘れたくありません。
死者を忘れることは私たちが考えるよりたやすいことです。
彼らの死は
私たち全員に対して
同じことが二度と起きないようにするための警告です。」