2021年3月19日 NHKBS1「国際報道2021」
ヨーロッパで珍重される高級食材の白トリュフ。
イタリアなど限られた地域でわずかしかとれない。
白トリュフはトリュフの中でも最高峰で
黒トリュフとは全く違う香り・風味は生で味わうのが一番だとされている。
白トリュフのオークションでの落札価格は最高で1キログラムあたり1,000万円以上と
その価値は金と同じといわれるほどである。
なかなか手が届きそうにない白トリュフだが気軽に味わえる日もそう遠くないかもしれない。
フランスで世界で初めての人工栽培が成功である。
パリのトリュフ料理専門店。
シェフが腕を振るうのは店の看板メニュー。
ごはんの上にトリュフを薄くスライスすれば
高級感漂うトリュフリゾットの出来上がり。
フランス国内で白トリュフの人工栽培が成功したというニュースに
シェフも
「いいニュースだ。
国産白トリュフが手に入るとはね。
もっと安く提供できるようになるかも。」
白トリュフの人工栽培に挑戦したのは社員35人の苗木業者。
成功するまでにかかった年月は20年以上。
たどり着くまで思考錯誤の連続だったという。
(苗木会社 技術責任者 カマレッティーさん)
「簡単ではありませんでした。
土壌学や生理学など
さまざまな専門領域の科学者との共同作業でした。」
繊細な白トリュフを栽培するには多くの条件を満たさなければならない。
まず取り組んだのは
栽培に適した菌をいかにして育て増やすか。
温度や水の量・土の種類といった無数の条件を試してきた。
(苗木会社 技術責任者 カマレッティーさん)
「何年も何年も研究し続けました。
幾通りも試して
途中で見切りをつけたものもたくさんあります。」
さらに
苗木となる樹木に菌を安定して定着させるまでに9年もの月日がかかった。
苗木に植え付けたトリュフ菌を顕微鏡で見た画像を見ると
綿毛のような金の糸が苗木の根に入り込んでいるのが分かる。
菌は生きた樹木から養分を得てトリュフへと成長していくのである。
そうして人工栽培に成功した苗木には
ピンがささっている場所に白トリュフが菌が共生している。
(苗木会社 販売責任者 ロバンさん)
「木の根に植え付ける最適な方法を確立するのに
とても長い努力が必要でした。」
フランスやイタリアの農家からすでに2,500本もの注文が入っている。
研究に協力する国立研究所の検査にも合格し
出荷を待つばかりである。
(苗木会社 販売責任者 ロバンさん)
「我々の研究の成果が農家を支えます。
さまざまな生産方法が確立すれば
トリュフの生産で生計を立てられるのです。」
繊細なトリュフは気候変動の影響を受けやすく
あと50年もすればヨーロッパでとれなくなるという予測もある。
温暖化による収穫量の減少に悩んできた農家。
白トリュフの人工栽培が新たな収入源につながると期待している。
(トリュフ農家 ミシュレ)
「収穫量が激減した上に
とれても売り物にならないものもあります。
トリュフという文化を失いたくありません。
さらに研究が進んで
利益を生むことを期待したいですね。」