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橋田寿賀子さんが描いた“ホームドラマ“

2021-04-29 07:19:40 | 編集手帳

2021年4月7日 読売新聞「編集手帳」


 ホームドラマは、
日本のテレビ界で独特の発展を遂げたジャンルといわれる。
そもそも成立させるのが難しい。
家族の日常を描くとなれば、
娯楽色では刑事物に勝てない。

「視聴率が稼げない」。
そんな声が満ちるなか、
脚本家の橋田寿賀子さんは考えを変えることはなかった。
売れっ子になりかけていた1970年代初め、
本紙に仮説を語っている。

「三つ要素があれば、
 視聴者の共感をつかめると思います。
 身近なテーマ、
 展開に富むストーリー、
 リアルな問題点」。
仮説が真説になったことはその後の作品群が証明している。

ホームドラマをテレビの主役にした橋田さんが95歳で亡くなった。
仲良しの山岡久乃さんはぼやいたという。
「あなたのホンにかかると、
 ろれつが回らない」。
長いセリフを書くのはむろん役者を泣かせるためではない。
隣の家でありそうなことに、
こっそり聞き耳を立てる心理に視聴者を導こうとすると、
困る役者の顔を浮かべつつ長くなるらしい。

視聴者も泣いた。
お茶の間での聞き耳に覚えのある方は多かろう。
涙、怒り、喜び…
心揺さぶる日常をセリフに詰め込んだ人が逝った。

 

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