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フランス 女性の政治家増で変容する社会

2021-04-25 07:20:01 | 報道/ニュース

2021年4月5日 NHKBS1「国際報道2021」


G7の中でも女性の政界への進出が進んでいるフランス。
男女の平等を実現するために明確なルールを設け
格差の解消を進めている。
その影響は地方の小学校でも見られる。
レンヌの小学校の校庭では
校庭の中心に以前はサッカー場があった。
そこで遊んでいたのは男の子が中心で
女の子は校庭の端で遊ぶことが多かったという。
これに気づいた女性のナタリー・アペレ市長は
サッカー場の場所を変え
校庭の中心にさまざまな遊びができるスペースを新たに設けるなど
男女が一緒に遊べるよう改修した。
(レンヌ市 アペレ市長)
「レンヌ市の公共政策は男女平等を促進しています。
 子どもたちが多様性の可能性を信じられるよう取り組んでいます。」
(生徒)
「今は卓球台など遊具がたくさん置かれ
 男の子と女の子が一緒に遊べます。」
「前は男の子だけ遊んでいたけど
 今は誰もが遊べます。」
女性の政界への進出はフランスの議会下院にあたる国民議会から進められてきた。
20年余前の1997年には女性の割合はわずか10,9%だった。
その後女性議員の数は大幅に増え
今では40%近くを占めるようになっている。
きっかけとなったのは1999年の憲法改正である。
「議会などで男女平等を進める」と明記し
2000年の法律では具体的なルールが設けられた。
議会下院の選挙では各政党は候補者を男女同数とすることとされ
守らなければ国から政党に交付されるお金が減らされる罰則もある。
この法律の成立を主導した政党のロシニョール議員。
当時議会では賛成の声ばかりではなかったと振り返る。
(ロシニョール議員)
「『女性だから当選できたとみられたくない』という女性議員もいました。
 法制化していなければ女性議員の割合を増やすことはできませんでした。」
法律の制定後
女性議員の数は選挙のたびに増加していく。
そして2017年
女性の候補を積極的に擁立したマクロン大統領の新しい政党が第1党となった。
国民の支持が多くの女性議員の誕生を後押ししたのである。
2017年の選挙で初当選したレティシア・サンポール議員。
“多様な政策を立案したい”と政治家を目指したという。
下院の副議長を務め多忙な毎日だが
家事や2人の子どもの育児は軍に勤務する夫と分担している。
(サンポール議員)
「子育てはハンディともとらえられるが
 逆に
 仕事が生き生きとして
 市民に近い目線で活動できます。
 女性への暴力など男性議員には理解しづらい問題もあり
 女性が重要です。」
女性の議員が増えたことで
以前とは異なった視点が政策に反映されるようになった。
その1つが家庭内暴力に関わる対策である。
(下院議員)
「パートナーからの暴力を“ふつうに起きること”だととらえてはいけません。
 そんなことが許される社会ではいけないんです。」
(下院議員)
「私たちの社会は家庭内の暴力に目をつむってきました。
 そのままにしておく方が簡単だからです。」
こうした声を受けて政府は
コロナ禍でパートナー間の暴力の問題が深刻化するなか
女性が避難する施設の受け入れ態勢を強化する方針を打ち出した。
この他
性犯罪や性別を理由にした差別の厳罰化や
SNSを含めて性的な嫌がらせに対する取り締まりを強化されている。
一方で男女同じ数の候補者を擁立できない政党もある。
伝統的に男性議員が多い中道派の共和党は
前回2017年の下院選挙でも男性候補を多く擁立し
国から交付されるお金を減額された。
共和党の議員は
“男女平等を進めるという考えを指示していても
ベテランの男性議員に代わって女性の候補を擁立するのは簡単ではない“と説明する。
(共和党 デュビームラー議員)
「共和党の下院議員200人の多くは男性です。
 男女同数実現のためにすでにいる男性議員を追いやるのは難しく
 女性候補を擁立しても
 当選が難しい選挙区に割り当てられることもありました。」

議会で女性が増えたことでフランスの政治は
パートナー間の暴力や性的な嫌がらせなど
以前はなかなか光が当てられなかった問題に踏み込んだ法律が生まれている。
また国政の場だけでなく地方の議会でも女性議員増加の動きが広がっている。
閣僚や政府の主要ポストに
幼い子どもがいる30代の女性が就くこともごく普通になってきていて
女性議員に対して“子育てとの両立はどうしているのか“などという声は
今はほとんど聴かれない。
男女平等とは言っても
子育て中のカップルなどにとっては女性の家事の負担が依然として大きいのが現状で
負担の軽減にどう取り組んでいくかが課題になっている。
またこれまで男性が多数を占めてきた政治の場で
新人の女性議員が十分に能力を発揮できるように積極的な後押しが必要だという議論もある。
このため政党の垣根を越えて予算の仕組みをを学んだり
女性議員同士のネットワークを構築するための研修を行なう団体も出てきている。
(女性議員を育成するNGO ジュリア・ムゾン代表)
「私たちの仕事は
 選出された女性議員が政界そして社会に影響力を持てるように育てることです。」
政治が変わることで
企業の経営層や社会のさまざまな場所で女性の進出が促進されている。
組織の重要なポストに女性が就いていることはごく普通のことになっている。
20年余前
まず政治が動いたからこそ
民間レベルでも男女平等の考え方がより当たり前になった。
男女平等を進めるための取り組みは各国の事情に合わせたやり方があるが
まず政治の場で制度の変更を行なうというフランスの事例は
日本にとっても参考になる。



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