箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

おとなも迷う時代の中で

2015年10月17日 19時33分09秒 | 教育・子育てあれこれ
時代の変化は、子どもだけでなく、おとなにも影響を与えます。かつての日本社会には、さまざまな「・・・すべき」「・・・すべきでない」という決まりごとがありました。

「子どもは親のいうことをきくべき」
「目上の人にはさからうべきではない」「子どもは親の後を継ぐべき」・・・
などがそれにあたります。

その決まりごとの基盤となる価値観は窮屈なこともありましたが、その一方で人の生き方を安全で安定させてくれていました。

決まりごとどおりにすることで、何に向かえばいいかがはっきりしていて、周囲が期待する人生を生きることで、それ相当の意味を見いだすことができたのでした。

しかし、いま、私たちは自由に選べる時代に生きています。自由選択の荒波に放り出されています。伝統的な「家」制度という縛りから解放され、自由な生き方ができるようになっています。

こうなってくると、生きることそのものに意味を見つけるのではなく、「どう生きるか」が問われてくるようになります。

それは同時に、どう生きたいかがはっきりしない人、とくに若い人は、自分はだめなのでないかという自己嫌悪を抱くとか、あせりに駆りたてられることにもなりかねません。

さらに選ぶことは多種多様で、選択肢が多いのです。そのうえ、その選択は個人にまかされているのです。

「あなたのやりたいことはなに?」そのようなことを聞かれて、すぐに答えることのできる人がどれほどいるでしょうか。まして中学生が「将来は何になりたいの」、「あなたのやりたいことは?」と聞かれてはっきりと答えることができないことがあっても当然でではないでしょうか。

子育てに関しても同様なことがいえます。
本屋さんへ行けばさまざまな子育て本や雑誌が並んでいます。世の中には子育てや教育に関する情報が氾濫しています。何を信じて、どのようなやり方をしても自由です。

たとえば幼児の早期教育を選択することもできますし、音楽やスポーツに子どもを打ち込ませることもできます。また情報は更新され、どんどん新しいものが出てきます。その一つひとつが魅力的な響きをもって私たちにアピールしてきます。

しかし大切なことは、私たちがそれらの情報をよく見きわめ、本当に役立つのかどうかを確かめようとすることです。情報を鵜呑みにするほど子どもにとって迷惑なことはありません。子どもにとって本当に何がいいのかを考えなければなりません。

たとえば「ほめられた子どもは伸びる」ということで、ほめられて、ほめられて、ほとんど叱られずに育った子は、万能感をもち、自己中心的な考えをするようになるかもしれません。

情報を一つとってみても、その言葉の意味を親が自分の中に取り込んで、自分なりの解釈を加えていくことが求められるのです。

いまの時代、親が深く考え、自分自身を見つめ、子どもとふれあうことで、子どもの豊かな成長を支えることができます。

このことは子どもの成長にかかわる教職員も同様です。いまこそ、おとなたちは立ち止まり、親として、教師として、一人の人としてみずからを成長させるときなのです。